「時計じかけの摩天楼」編
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「………っ、」
名前は、両手で涙をゴシゴシと拭うとブンブンと首を振って小さく息をつく。
「あー………さすがに、声を聞くと余計に会いたくなっちゃうからきついな」
(こんな状況だから、会えない可能性がある事くらい覚悟してたつもりだったのに)
そしてポツリと困ったように呟くと、ハサミを持つ右手に力を込めて目の前に置かれた爆弾を見つめる。
---ピッ、ピッ
爆弾のタイマーは無情にも正確に時を刻み続けていて、残された時間は既に残り3分となっている。
「……………。」
(3分あれば、快斗の足なら確実にビルから抜け出せるはず。後は、残り時間が僅かになったら…私がどちらかのコードを切るだけね)
残された時間をただ待つだけとなった名前は、フッと肩の力を抜いて天井を見上げた。
card.577
「あー………さすがに、声を聞くと余計会いたくなっちゃうからきついな」
「……ったく」
爆弾で捩曲がった扉に背を預けて寄り掛かっている快斗は、扉の中から聞こえてきた名前の言葉を聞いて小さくため息をつく。そして、ふっと瓦礫に埋もれた自分の周りを見渡してからゆっくりと口を開く。
「………名前ちゃん」
「え!?」
優しく愛しいその名を呼ぶと、扉の向こうからは信じられないというような声色で名前の反応が返ってくる。
「え?快斗…?どうして…戻ったんじゃ……」
「名前ちゃんさー、悪いけど俺を見くびらないでくれる?」
「え…?」
快斗は戸惑う名前を尻目に、あえて明るい口調で言葉を続ける。
「オメーが、涙堪えて無理して笑いながら喋ってんのも……あんな薄っぺらい"大丈夫″って言葉も、俺が見破れないと思ってんの?」
「!」
「名前が、いくらポーカーフェイスだって言われようが、いくら他の奴らから見たら完璧に見破る事が出来ないような嘘をつこうが。……俺には分かる」
「なんっ…」
「何でって……言わなきゃ分からねーの?」
快斗は戸惑う名前の言葉を遮ると、穏やかな口調ながらも真剣にそう尋ねる。
「……オメーを愛してるからだよ、名前」
「!!」
「俺は……自分の好きな女が涙堪えて強がってんのを、気付かねーような男じゃねェし。どんな理由があったとしても、名前だけをこんな所に残していなくなるような事はしねーよ」
快斗は自分と名前を隔てる扉に触れて、扉の向こうの名前の姿を見つめているかのように扉を真っ直ぐ見つめながら優しく告げた。