「時計じかけの摩天楼」編
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---ピッ、ピッ
「……………。」
名前の足元では、ほとんどのコードが切断された爆弾がそれでも尚刻々と時を刻む。しかし、それには構わずに名前は捩曲がっている扉にピタリと張り付いて、扉の向こう側に神経を集中していた。
card.575
「名前、オメー怪我はしてねェか!?」
「え…ええ、大丈夫。」
名前は快斗の言葉に戸惑いながらも言葉を返すと、そのまま言葉を続ける。
「快斗は、どうしてこんな所にいるの…?」
「ハァ……何言ってんだ、オメーがこんな所に取り残されてるのに、俺が黙って待ってるわけねェだろ?」
名前の問いに、扉の向こうからは快斗のどこか呆れたような声が返ってくる。
「……ここまでは、何とか瓦礫の隙間を抜けて来られたけど…爆発の影響で扉が変形しちまって、どうしても中には入れねェんだ。だけど…救助隊が来るまで、俺もここで一緒に待っててやっから!安心しろよ!!」
「快斗……」
(救助隊…新一が私の言う通りに、救助隊や警察を中に入れないように働き掛けているなら……私がこの爆弾を解体するまでは、もう救助隊は来ない…)
名前は快斗の言葉に胸が熱くなるのを感じながらも、足元の爆弾に視線を向けてギュッと手を握る。
(快斗を…快斗だけは巻き込むわけには……)
「……名前?どうした、大丈夫か?」
呆然としたように考えを巡らせていた名前だったが、扉の向こうから快斗の心配そうな声が響いてきて、ハッと意識を上昇させる。
「…………。」
(あと4分36秒……)
名前はチラリと爆弾の残り時間を確認すると、自分を落ち着かせるように小さく息を吐いて口を開く。
「あはは、ごめんね。快斗の声を聞いたら、気が抜けちゃって」
「何だよ、珍しいな。そんなに心細かったのか?」
「……ねぇ、快斗」
「どうした?」
「………ごめんね」
「…は?何が?」
名前の突然の謝罪に、快斗は不思議そうに尋ね返す。
「喧嘩…してたじゃない。私、ずっと後悔してたの……こんな事になるなら、馬鹿みたいに意地はるんじゃなかったって」
「…………。」
「本当は分かってたの…快斗が、新一に変装するって言ってくれたのは、私が困ってたから……私の為に言ってくれたんだって。蘭と……デートするって言ったのだって、ただの冗談だって分かってた」
「名前……」
「本当にごめんなさ…」
「名前……謝んな」
「…え?」
もう1度改めて謝ろうとした名前の言葉を遮るように、快斗が口を開いたため名前は思わず言葉を飲み込む。
「そういう話はさ、俺はちゃんとオメーの顔見て話したい」
「…………。」
「それに……確かに冗談だったけど、オメーを怒らせちまうくらい傷つけたのは俺じゃねーか。謝るのは俺の方だ」
「快斗……」
「………な?だから、後でちゃんと名前ちゃんの可愛い顔見ながら、俺に謝らせてくれよ」
「………ふふ、馬鹿」
名前はいつものように軽い調子で話す快斗の言葉に、思わず小さく笑いながら言葉を続ける。
「私…快斗のそういう優しいとこ大好き」
「…………なっ、んだよ急に!?」
「急じゃないわ、本当に……快斗の全部が私は……」
(…これ以上、こんな事言ったらバレるわね)
戸惑う快斗に、更に自分の想いを伝えようとした名前だったが、ふと思い直して途中で言葉を切る。
「名前ちゃん…?」
「ううん…何でもない」
(……もう時間ね)
「ねぇ、快斗に1つお願いがあるんだけど」
不思議そうに自分の名前を呼ぶ快斗に言葉を返しながら、名前はチラリと爆弾のタイマーに表示された残り時間を確認する。そして、小さく息をついて心を落ち着かせると、努めて明るい口調で快斗に声をかけた。