「時計じかけの摩天楼」編
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---ブロロロロ!
「博士…そこ、右に曲がった方が早いわ」
「あ、ああ!分かった!!」
灰原は後部座席で話すコナン達の会話を聞きながらも、最短時間で米花シティビルにたどり着く道順を冷静に阿笠に告げる。
「……工藤君、あと5分もかからずに着くわよ」
自分の言葉に従いハンドルを切る阿笠を横目で見ながら、灰原はくるりと振り返って後部座席に座るコナンに声をかける。
「よしっ…わかった!」
その言葉にコナンは小さく頷くと、再び電話越しに聞こえる名前の声に耳を傾けた。
card.573
新一の名前を呼んだ名前は、自分を落ち着かせるように小さく息をついてから言葉を続ける。
「新一。あなたが米花シティビルに着いたら、爆弾処理班を含む警察関係者や救助隊をビルに入れないように指示して」
『なっ…?何言ってるんだよ、オメー!?』
『!?』
名前の言葉に、コナンと灰原は息をのんで思わず問い詰めるように聞き返す。
「……1度目の爆発から30分以上経ってる。私のいるシネマロビーは、入口が塞がってるけど……それ以外の場所にいた人達は、もう救助されてるはずでしょ?」
『オメー…』
コナンは、名前がこれから言わんとする事が分かったのか歯痒そうに眉を寄せる。
「安心して……爆弾は、私がちゃんと設計図通り解体するわ。……後は、新一と電話が繋がっている間にトラップの2本のコードの意味が分かれば良いんだけど。もし分からなかったら、その時は爆発の寸前に、私がどちらかのコードを切るから」
『…………。』
黙りこむコナンを尻目に、名前は言葉を続ける。
「自分の運を信じたいけど…保証は出来ないし?………犠牲は、少ない方が良いでしょ」
(本当は…ここにいる人達も助けたいけど……)
名前は、チラリとシネマロビーに取り残された人々に視線を向けながら、小声でコナンに告げる。
『馬鹿野郎!滅多な事言うんじゃねーよ。オメーを死なせるわけねーだろ』
(何とか2本のコードの意味を考えねェと……クソッ!頭にずっと何かが引っ掛かってるのに……)
コナンはあえて軽い口調で名前に言葉を返しながら、先ほど何か思いつきかけた事を必死に搾り出そうと考えを巡らせる。
---パチン、パチン
「ふふ……あ、あと新一にもう1つお願い」
そんなコナンとは対照的に、名前はどこか吹っ切れたように状況に見合わぬ緊迫感のない口調でコナンに声をかけながら、手元の作業を再開する。
『何だ…?』
「…快斗」
『え?』
「今回の事件…快斗が一緒だったんでしょ?そばにいるなら、絶対に快斗をビルには入れないでね」
『…オメーは、それで良いのかよ?』
(俺より前に飛び出して行ったあいつだったら、もう米花シティビルに着いてるだろうし……あいつの事だから、名前の為に構わずにビルに飛び込みそうだが)
名前は、コナンの問いに小さく目を見開いた後に、チラリと携帯の画面を確認する。
「…………。」
(縁起でもないけど…これが最後かもしれないし、正直になっておこうかしら)
「……当たり前でしょ?私が何よりも大切なのは快斗だもの」
『…………そーかよ』
「本当は、ここで映画を見る約束してたんだ…。こんな状況になるなら、仲直りしておくんだったわ」
『!!』
パチンと順調にコードを切りながら、一人言のように呟いた名前の言葉に、コナンはハッとしたように息をのむ。
(映画を見る約束?そういえば、確か蘭の奴……森谷教授のパーティーに呼ばれた時に、森谷教授との会話で…)
--本当ですか?実は、今月は私達2人とも赤がラッキーカラーで、プレゼントも赤い洋服に……--
『そ…そうか!!教授の奴、このトラップは俺と約束していた蘭が爆弾を解体する事を想定して!!お…い、ザザザ……名前…分かっ…た……』
森谷教授の蘭との会話を思い出して、ようやく赤と青のコードのトラップの意味に気づいたコナン。しかし、それを嘲笑うかのように2人の会話のタイムリミットを表すノイズがコナンの言葉を遮る。
「新一?何?聞こえないわ」
『お……罠だ……ザザザ…を切れっ…!』
「…え?……何?どっちを切るの?」
『!?』
(くそッ!こんな大事なタイミングで電池が……!)
必死に切るべきコードを叫んでも、電話の向こうにいる名前には伝わず、コナンはグッと拳を握る。
『赤は罠だっ…!!青を切るんだ!名前!!』
「…し、いち……聞こえ……い…ブッ,ツーツーツー…」
『名前?おいッ!?名前!!くそッ!』
---ツーツーツー…
それでも必死に叫んでいたコナンだったが、その言葉は名前に伝わる事もなく、突然耳元で名前の声が途切れて通話音だけが虚しく響いた。