「時計じかけの摩天楼」編
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----バラバラバラ!!
「わああああッ!!」
米花シティビルの回りには、多くの警察車両や消防隊が到着し、空には無数のヘリが飛び交っている。
「はやくしろッ!負傷者の救助と消火を!!」
米花シティビルを利用していた客は、悲鳴をあげながらビルの中から飛び出して来る。
「名前ッ!!どこだっ!!名前!!」
ようやく米花シティビルに到着した快斗は、避難する人の流れに逆らって大声で名前の名前を呼びながら、大勢の人の中から名前の姿を探していた。
card.569
「名前ーッ!!……くそっ!やっぱり、まだこの中にいるのか!?」
(あいつの供述通り…シネマロビーの出入口はやっぱり塞がれちまってるのか?)
快斗は一向に名前の姿が見つからない事に肩を落としながら、未だ爆発音と黒煙に包まれている米花シティビルを見上げる。
「黒羽君っ……」
そんな快斗の背中から、自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、快斗はハッと息をのんで振り返る。
「ら…蘭ちゃん?」
そこには、衣服が僅かに乱れ身体のあちこちに小さな傷や煤がついた蘭の姿があり、快斗は一瞬目を丸くするが慌てて蘭に駆け寄る。
「蘭ちゃん……良かった、無事だったのか…怪我は?大丈夫だったか!?」
(見たところ、大きな怪我はなさそうだな。それに蘭ちゃんがここにいるなら、名前ちゃんも……)
快斗は蘭の怪我の状況を確認しながら、そう声をかける。
「私は…大丈夫…」
「そうか!!それなら良かっ…」
「名前がっ…!!」
蘭の言葉に僅かに安堵したような表情を浮かべる快斗だったが、蘭は切羽詰まった表情で快斗の言葉を遮る。
「………え?」
「名前がっ!!名前が…まだ中にいるのっ!」
蘭は目に涙を浮かべながら、快斗に必死に訴える。
「え?名前は…蘭ちゃんと一緒にいたんじゃなかったのか?」
快斗は蘭の言葉を聞いて震える手にグッと力を込めながら、なるべく冷静に尋ねる。しかし、自分でもダラダラと全身から冷や汗が吹き出してくるのを感じる。
「私…爆発が起こる少し前に……名前をシネマロビーに残してお手洗いに。その後、すぐ爆発が起こって……外に出てみたら、シネマロビーにいた人達はまだ中に取り残されてるって聞いてっ……!」
そんな快斗に、蘭はボロボロと涙を流しながら状況を説明する。
「………っ!!」
(やっぱり…まだ中にいるのかっ!)
快斗は蘭の説明を聞いて、ギュッと拳を握る。しかし目の前で青ざめた表情で涙を流す蘭の姿を見て、小さく息をつくと一旦気持ちを落ち着かせる。そして、いつもの笑顔を浮かべて蘭の名前を呼ぶ。
「蘭ちゃん」
「……え?」
蘭は、こんな状況でありながらも笑顔を浮かべている快斗に不思議そうに眉を寄せる。
「……名前ちゃんは大丈夫だ。あいつは、そんなに弱い奴じゃねーから」
「!!」
「蘭ちゃんの親父さんや警部さん達も、もうすぐここに来るから!蘭ちゃんは、ここで待ってて!!」
「く…黒羽君は?」
「……俺は、名前ちゃんを……名前を迎えに行くから」
快斗は不安そうに自分を見つめる蘭に、穏やかな笑みを浮かべて答える。
「……え!?」
「あ!あと今の話…あの眼鏡の坊主にも伝えておいてくれる?」
---ダッ!!
驚く蘭を尻目に、快斗はそれだけ言い残すとくるりと踵を返して、未だ黒煙と炎に包まれる米花シティビルに向かって駆け出していく。
「くっ…黒羽君っ!?」
蘭は、真っ直ぐビルに向かって走って行く快斗の背中を呆然と見送った。