card.56


｢通常、車に爆弾を仕掛けた人物が自殺以外の目的でその車に乗るのは考えにくいが…例外はある。その爆発で自分が爆死したかのようにカモフラージュするケースだ。そうだよな？｣



｢千間探偵……｣



突然背後から声をかけられて、食堂の扉を開けようとしていた人物は驚いて振り返る。
そう…監視カメラで館内の監視をしメッセージに誘き出され食堂に現れたのは、車の爆発により死亡したはずの千間降代だったのだ。





(…今の所、思いのほか順調ね)

コナンが千間に自分の推理を話しているのを、名前は自分の出番が来るまで隠れながら聞いている。
2人が話をしながら食堂に入って行ったのを確認して、名前と残りの探偵たちはそっと食堂の入口まで近付いて行くと、千間に気付かれないように二人のやりとりに耳を傾ける。



｢…だったら教えておくれよ？私がどーやって大上さんだけに青酸カリを飲ませたのかを｣

｢…貴方は前もって全員のティーカップに青酸カリを塗っていたんだ。毒を塗った場所はカップの取っ手の繋ぎ目の上、そこは大上さんがティーカップを持つ時に右手の親指が触れる位置であり、彼が思わず考え事をする時に噛んでしまう爪のそばでもある……｣





｢おー！いい調子だぞ、坊主!｣

｢あのボウヤ…千間さん相手にあの態度。良い度胸ね｣

隠れてコナン達の会話を聞いている探偵達が、スラスラと推理を疲労しているコナンの様子を見てコソコソと感心したように呟く。

(新一ったら、正体を隠したがってる割には大胆というか…相変わらず目立ちたがりなんだから)

名前は周りの勘の鋭い探偵に、あんな小学生らしからぬ姿を見せつけて大丈夫だろうか？と、心配しながら小さくため息をつく。

(……だけど、これで無事に怪盗キッドの殺人の疑いは晴れるわね)

名前はそう考えると小さく胸を撫で下ろして、再びコナン達の会話に耳を傾けた。