「時計じかけの摩天楼」編
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「…………。」
(とりあえず、ここに来たばかりの時の死にそうな顔じゃなくなったわね)
灰原は珈琲を飲みながら、目の前で締まりのない表情でニヤニヤとしている快斗にチラリと視線を向ける。
「それより、あなたどうして今日ここに来たの?」
そんな快斗の表情を見て小さく安堵の息をついた後に、快斗にそう尋ねた。
card.536
「えー?相談に来たんだよ?」
快斗は、名前が怒っているのが"自分に対する嫉妬″だと気付いて気が楽になったのか、すっかりリラックスしたいつもの調子で答える。
「突然来たりして…あなたの事情を知らない博士がいたら、こんなにオープンに話せないでしょ?どうするつもりだったのよ?」
「ああ…大丈夫、大丈夫!その件に関しては、今日あのジィさんがいないのはリサーチ済み」
「…………。」
(今日1日博士が学会でいないのは、私と工藤君しか知らないはずなんだけど。まぁ、今さらどういう方法でリサーチしたのかは、あえて聞く気もしないわね)
平然と答えた快斗の言葉に、灰原は小さくため息をつく。
「それにしたって、そもそも小学生相手にする相談じゃないでしょ?」
(……現実的に考えても、高校生が小学生に恋愛相談っていう時点でおかしいし)
灰原は、ため息混じりに珈琲に口をつけながら尋ねる。
「何を今さら。哀ちゃん、中身は小学生じゃないでしょ?」
「!?」
きょとんとした表情で答える快斗の言葉に、灰原はピクリとマグカップを持つ指先を震わせる。
「………………。」
「ふ、ハハハ……ポーカーフェイスの哀ちゃんも、こういう不意打ちには意外と弱ェのな」
自分に不審そうに探るような視線を向ける灰原を見て、快斗はニヤリと口角を上げて笑う。
「……まぁ、名探偵という実例を見てるわけだから。おのずと哀ちゃんにもそういう疑惑が向いてたけど。残念ながら確信はなかったからさ……悪ぃな、ちょっと試しちゃった」
「……名前から聞いたわけではないのね?」
灰原はマグカップを一旦机に置くと、腕を組んで真剣な表情を快斗に向ける。
「名前ちゃんは…名探偵関係の事は、意外と口が堅いから。本当妬けちゃうよねー、あの2人の関係見てるとさ」
快斗は、わざとらしく肩を竦めながら拗ねたような表情を見せる。
「どうして今のタイミングで私を試したの?」
「んー?別に…俺は、名前ちゃんの方から教えてくれるまで…黙って知らないふりしてても良かったんだけど……」
快斗は、そこで言葉を切って言葉を選ぶように視線をさ迷わせる。
--……今の新一は、あんまり人の多い場所に姿を現すのもよくないから--
「名前ちゃんとの会話の所々でさ……今の名探偵の状況があんまり良くないのは何となく分かるからさ」
「…………。」
灰原は、ポツポツと言葉を続ける快斗をジッと見つめる。
「名探偵が、いくら名前の大事な幼なじみだとしても……あいつの為に名前が危険な事に巻き込まれるのは、黙ってるわけにはいかねーだろ?」
「…………。」
「だから……ま、ちょっと情報収集……ってとこかな。残念ながら、哀ちゃんの実年齢とか経歴とかは、まだサッパリだよ」
「そう。相変わらず、あなたも名前には甘いのね」
灰原はどこか呆れたように呟きながら、再びマグカップに手を伸ばす。
「そりゃー……名前ちゃんの事、世界一愛しちゃってるからね」
「はいはい……ま、私は名前が了承しているなら…あなたが私達の事を知ろうが知らないままであろうが、どちらでも構わないけど」
(それでも……真実を知る人物が増えるまで、あまり時間がかからないかもしれないわね)
目の前で堂々と惚気る快斗にジト目を向けながら、灰原はぼんやりと考えを巡らせた。