「時計じかけの摩天楼」編
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「お前……そんな最低な事を、よく自分の彼女の前で言えたな」
「……………。」
「あの温厚で、大人の名字を…1日中お前の視線を無視するほど怒らせるなんて、何があったのかと思ったが」
「……………。」
呆れたように呟かれる中村の言葉に、快斗は返す言葉もないように肩を落としていた。
card.531
「いや……でも、本当に冗談だったんだって!」
快斗はガシガシと頭を掻きながら訴える。
「……だいたい、どういう流れでそんな冗談が飛び出すんだ」
中村は口数も少なく物事をハッキリ言うタイプのため分かりにくいが、元来面倒見が良い性格のため、今では資料作りの手を止めて腕を組みながら目の前で困り果てている快斗の話を聞いている。
「いやー……それは、まぁ…ほら。…いろいろ?」
しかし快斗も相談には乗ってほしいものの、さすがに新一の話や変装の事を言うわけにもいかずに困ったように視線をさ迷わせる。
「……ふぅん?」
(その辺りは、俺には言えないってわけか)
中村は歯切れの悪い快斗の様子を見て、顎に手を当てながら何かを考えた後に口を開く。
「お前は、その辺りの事情を含めて相談出来る相手がいないのか?」
「…え?」
「詳細を話せない俺に中途半端に相談した所で、良い答えが出るとは思えんぞ」
「……………。」
快斗は、中村の言葉に僅かに目を見開いた後に眉を寄せる。
(詳細を話して相談出来るような相手……か。まぁ、いるにはいるけど……)
快斗は、脳裏にある人物が浮かんで来て大きくため息をつく。
「………何だ?」
そんな快斗に、中村は不思議そうに尋ねる。
「いや……いるにはいるんだけど。その子に相談した時点で、バッサリ切り捨てられそうな気が……」
「まぁ、思い浮かぶ相談相手がいるならその相手に相談するんだな」
("その子"?子供相手のような言い方だな…)
---パチン、パチン…
中村は快斗の言い方に違和感は感じたものの、再び資料作りを再開しながらそう言葉を返す。
「ま…俺から言える事は、どんな流れにせよ…そもそも、そんな冗談を言ったお前が悪いんだ。さっさと機会を見て謝るんだな」
「……分かったよ」
快斗は小さくため息をついて机に伏せながら、ポツリと答える。
--パチン、パチン…
「ところで黒羽……」
「んー?」
「お前は、何か周りに秘密にしてる事でもあるのか?」
「……え!?」
突然の思わぬ質問に、快斗は思わずピクリと肩を揺らして中村に目を向ける。
「…………。」
「中村ちゃん、何でそんな事聞くんだよ?」
黙ったまま自分を見つめる中村に、快斗は焦りを悟られないようにしながら聞き返す。
「いや……ただ、お前が思いついた相談相手が仲が良い桜井達でもなさそうだし。お前、この間変な事言ってたろ?」
中村は、手元の作業を続けながらサラリと答える。
「変な事って……俺なんか言ったか?」
「……名字と付き合い始めた時に言ってたろ。"めくるめくスリルと愛のロマンスがあった″って。あの時は、お前の馬鹿な冗談かと思ったが……名字は高校生探偵の幼なじみがいたり、名字自身も一部じゃ探偵だなんて言われているから、特殊な友人が多いみたいだしな。………お前と名字も、プライベートで何かあるのか?」
「そ、そんなの冗談に決まってるじゃねーか!!むしろ中村ちゃん、そんな前の事よく覚えてんなぁ」
快斗は一瞬口ごもるが、得意のポーカーフェイスで中村の問いを笑い飛ばして見せる。
--パチン、パチン…
「そうか……まぁ、危ない事はほどほどにしろよ」
「…………。」
(中村ちゃん……悪い奴じゃねェんだけど、意外と鋭いし…侮れねェな。さすがに、俺が怪盗キッドだって事までは夢にも思ってねェだろうけど……)
意味深な言葉を返す中村に向かって負けじと笑顔で言葉を返しながらも、快斗は内心小さくため息をついた。