「時計じかけの摩天楼」編
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card.528
「…………。」
名前と青子が教室から出ていく後ろ姿を、快斗はこの世の終わりのような表情をして見送る。
「お前、何したんだよ?」
「なんかあったんなら、俺達で良ければ相談乗るぜ~?」
「っうるせェ!オメーら、言葉と顔が一致してねーんだよっ!!」
そんな快斗の肩に両サイドから手をかけながら、林と桜井が心配気に快斗に声をかける。しかし、その表情は言葉とは裏腹にニヤニヤと口元が緩んでいる。快斗は、そんな2人の手を鬱陶しそうに振り払う。
「だってよー、青春真っ只中の高校生だっていうのに…喧嘩1つもせずに安定の熟年夫婦みてーなお前らが珍しく喧嘩してるんだし……なぁ?」
「ああ。こっちとしては、気になるわけだよ!……で、結局何が原因なわけ?」
林と桜井は付き合ってすぐの頃から2人の側にいたが、珍しく喧嘩している2人を見て興味深そうに尋ねる。
「原因って……それは、」
快斗は、ガシガシと頭を掻きながら口ごもる。
--デートっぽく手でも握れば大丈夫だろ--
(原因って…アレだよな?やっぱり)
快斗は昨晩の自分の発言を思い出して、頭を抱えながら大きくため息をつく。
「「……………。」」
そんな快斗を見て、林と桜井は小さく首を傾げながら顔を見合わせる。
「何だよ、お前。そんな深刻な理由なわけ?」
「………いや、」
(半分キッドの絡みだから、こいつらに説明しにくい……)
桜井の質問に、快斗は何と説明すべきか視線をさ迷わせる。
「………ちなみに、いつ喧嘩したんだよ?お前ら、今日は朝から口きいてねーだろ?」
なかなか事情を話さない快斗に、林は少しでも話しやすいようにと快斗に尋ねる。
「………昨日の夜」
快斗は机に伏せたまま、ポツリと答える。
「……夜って」
「場所は?どこで喧嘩したんだ?」
「?どこって、普通に名前の部屋だけど」
(何でそんな事聞くんだ?こいつら…)
次々と質問を重ねる2人に、快斗は不思議そうに首を傾げながら答える。
「「……………。」」
しかしそんな快斗を尻目に、林と桜井はチラリと顔を見合わせると、快斗の肩にポンッと手を置く。
「……何だよ?」
「いやぁ、わかるよ。お前だって健全な男子高校生だもんな?」
「ああ。付き合いもそこそこ長ェし、家に行ったらそうなるだろ。お前が一概に悪いとは言えねーよ」
「オメーら、2人揃って何言ってんだ?」
うんうん…と頷きながら話す2人の言葉に、快斗は不思議そうに首を傾げる。
「何って…アレだろ?」
「そんなに喧嘩の理由を言えないって事は…お前が昨日の夜、勝手に盛り上がって押し倒すか、ソレっぽい何かして名前ちゃんに怒られたんだろ?」
「ばっ……バーロー!!俺が大事な名前ちゃん相手に、無理矢理そんな事する奴に見えるかよ!?」
「ああ」
「やりそうだよなぁ?」
「なっ…!?」
当たり前のように快斗の問いに頷く2人に、快斗は目を見開いた後にガタンと立ち上がる。
「ふざけんなっ!!俺はそんな奴じゃねーよ!オメーら、俺を何だと思ってんだ!?」
(だいたい…普段から名前ちゃんの部屋に入り浸ってる俺が、どんだけ我慢してると思ってんだ!)
快斗は心外だと言うようにそう怒鳴ると、鞄を手に持って教室の扉に向かう。
「おい…快斗?」
「どこ行くんだよ!」
---ガラッ!
「もうオメーらなんかに相談しねーよっ!」
快斗は勢いよく扉を開けながら、振り返ってそう答える。
「おいおい、そんなに怒るなよ」
「俺らの勘違いなら悪かったって。お前…他に相談する奴なんかいるのかよ?」
「うるせーっ!!相談相手ぐれぇ、お前ら以外にもいるわ!!」
快斗は、そう言い残すと林と桜井の返事を待たずに扉を閉めて教室を後にした。