「時計じかけの摩天楼」編
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「………であるからして、この彼岸過迄という小説のこの一文は、主人公である敬太郎の…」
連休前のホームルーム中。中村は連休明けのテストに向けて、現国の教科書を片手に連休中の学習範囲を生徒達に伝えながら、ふと1人の生徒に目を向ける。中村の視線の先の人物は、真面目に教科書を見つめながらマーカーを引いている。
「……大学を卒業して就職活動に奔走した姿を表している。ここは、連休明けのテストに出るから各自復習するように……」
そして中村は更に言葉を続けながら、チラリと今まで視線を向けていた生徒の隣に座る生徒に視線を移す。その生徒は、今まで視線を向けていた生徒とは対象的に、教科書を一切開かずに隣に座る人物を一身に見つめている。しかし、その熱い視線は完全に無視されており、見つめられている生徒は素知らぬ顔をして平然と教科書のページをパラパラとめくる。
(何だ?あいつら…珍しく喧嘩でもしたのか……?)
その様子に内心首を傾げつつ、中村はパタリと教科書を閉じる。
「……と、いうことで連休中の注意点と学習範囲は以上だ。後は、掃除をして今日は帰ってよし!明日から休みだが、浮かれてハメを外すんじゃないぞ!」
そして、早く帰りたいとうずうずしている生徒達の姿に呆れたように視線を向けながらそう告げた。
card.527
「やーっと終わったね!!」
中村が教室から出ていくと、青子が大きく伸びをしながら声をあげる。
「連休前の簡単なお知らせのホームルーム……なんて言ってたのに、後半は授業みたいになってたから疲れちゃったね」
青子の隣で現国の教科書をしまいながら、恵子も小さく苦笑する。
「本当にねー。名前ちゃんと恵子はもう帰る?」
青子は、うんうんと恵子の言葉に賛同して頷きながら、名前に視線を向けて尋ねる。
「私は今日は帰るわ。せっかく連休前だし、早く帰りたいもの」
「私は今日部活の集まりがあるんだー。名前ちゃんと青子、先に帰ってて!」
「今日も部活あるの?」
名前は荷物を片付けながら、恵子の言葉に目を丸くする。
「そうなの。でも、終わったらみんなでご飯行くし、本当に簡単な集まりみたいだけどね」
恵子は、小さく肩を竦めて名前に言葉を返す。
「じゃあ、名前ちゃん…えっと、今日は2人で帰ろうか?」
(今日は快斗と帰る気配は微塵もなさそうだし…)
恵子の話を聞いた青子は、帰り支度をしながら恵子の話を聞いていた名前を笑顔で誘う。そして、チラリと名前を見つめている快斗に視線を向ける。
(さっきから名前ちゃん、快斗と一瞬も目を合わせようとしない。笑ってるのに怖い…)
朝から一言も会話せずに一定の距離を保つ名前と快斗。そんな2人の様子に気付いていながらも、名前の隙のない笑顔を見ると青子は何も聞けないまま下校時刻を迎えてしまった。
(笑顔なのにオーラが怖いんだもん。名前ちゃんって、怒らせちゃいけないタイプだよね…絶対。快斗ったら何したのかしら?)
青子は、自分に助けを求めるような視線を向けてくる快斗の視線を背中に感じながらも、どうする事も出来ずに名前と並んで教室を出た。