「時計じかけの摩天楼」編
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「まぁ……俺は、名探偵の事情はよく知らねーけどよ」
「ええ…そうよね」
(そういえば、最近は組織絡みの事件もないし…快斗も新一達の事情を聞いてこないから、後回しにしちゃってたけど。新一に言われてたわよね……組織の事を快斗に話すかどうか決めろって…)
名前は快斗の言葉に曖昧に相槌をうちながら、新一に言われた事を思い出した。
card.526
「名探偵……工藤新一が、あんまり人前に姿を見せない方が良いって言うなら…適当に帽子でも被ってやるからよ。……まぁ、俺の変装なんて名探偵が嫌がるだろうし…今のは最終手段だからさ。本当に困ったら言えよ」
「そうね……でも、この間も言ったけど…新一その日……と言うか、5月4日が誕生日だから。蘭はきっと……」
名前は、そこで一旦言葉を切って次の言葉を選ぶように視線をさ迷わせる。
「……………。」
(多分蘭は…今回の"デート″楽しみにして張り切ってると思うし、いくら変装中とは言っても…快斗がデートすることには変わりないのに……)
「ああ、そっか。名探偵…誕生日なんだったな」
「ええ……」
そんな名前の気持ちを尻目に、快斗は思い出した呟く。
「ま……変装相手に成り切るのは慣れてっからよ。デートっぽく手でも握れば大丈夫だろ」
(……って言っても、純粋な蘭ちゃんと名探偵の2人じゃそこまでしなくても、一緒に映画観るだけで十分なんだろうけど)
「……………………。」
「………名前ちゃん?」
快斗は冗談半分に言った自分の言葉に、いつまでも返事が返ってこない事に首を傾げながら隣の名前に視線を向ける。
「………………。」
しかし名前は視線を下に向けていて、前髪が顔を隠してしまっているため表情が見えない。
「……名前?」
そんな名前の姿に、快斗は眉を寄せる。
「………帰って」
「え、」
そして表情の見えない名前から、ポツリと低い声で呟かれた言葉に快斗は耳を疑う。
「帰ってって言ったの」
「ちょ……名前ちゃん?いきなりどうした…」
「悪いけど……今、私…快斗と話したくない。顔も見たくない」
戸惑う快斗の言葉をピシャリと遮った名前は、畳み掛けるようにキッパリと告げる。
「なっ……ちょっと、待てよ…いきなりどうしたんだよ?」
何とか名前が怒っている理由を聞きだそうと慌てる快斗だったが、そんな快斗を無視するように名前はガタンと立ち上がる。
「はい…これ荷物」
そして部屋の隅に置かれていた快斗の荷物や、デパートで購入した物を快斗に押し付けるように渡す。
「ちょ…名前ちゃん……」
---グイグイ…
何とか弁解しようとする快斗を、有無を言わさずに名前はどんどん玄関の方に押しやっていく。
---ガチャ、
「じゃ……またね」
--バタン!
そして廊下まで快斗を押し出すと、名前は快斗から視線を逸らしたまま短くそう告げて、快斗の返事も待たずに勢いよく扉を閉める。
「や…ばいだろ、これは……」
無情にも締め出された快斗は、ただ呆然と閉じられた名前の部屋の扉を見つめていた。