「黄昏の館」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「へぇー面白いじゃないの。わたしゃ、やっとゾクゾクして来たよ…」
メイドの話によると、メイド自身も雇い主である館の主人には会った事がないようだ。この館で働く事になった経緯は、パソコンを使用した面接だけで雇い主に会うこともなく雇われたらしい。
そのためメイド自身は、雇い主の声も聞いた事がないと…そんな不可解な話を聞いて千間はニヤリと微笑みを浮かべて呟いた。
card.45
「ふんっ!俺は、その玄関の妙な柄を見た時からシビレてたぜ?」
「壁の柄……ですか?」
「ああ…それは模様の様に見えるが血痕だ。まァ、かなり年数がたって変色しちまってるけどな」
「…ええっ!?」
茂木の言葉に蘭は玄関の柄を確認しようと顔を近付けて覗き混むが、それがただの柄ではなく古い血痕だと言われて、慌てて玄関から身体を離して震え上がる。
「……扉だけじゃないわ。壁には流下血痕、床には滴下血痕…この館のいたるところに血痕がついてるわよ」
そんな時、ふいに廊下の奥から別の声が響く。声がした方に目を向けると、壁にスプレーのようなものを吹き付けながら館の至るところに付着した血痕の痕跡を観察している女性の姿。
「………。」
(あれは…ルミノール?さすが"元検視官"の探偵……変わった物を持ち歩いてるわね)
名前は、半ば呆れたように館内にルミノールを吹き付ける槍田に目を向けたあと、グルリと館内に目を向ける。
---バサッ!
名前は廊下の階段の前に立っていたが、突然背後にある階段の手すりに羽音が聞こえて驚いて振り返る。
「えっ……鷹!?」
「あ、驚かしてすみません…英国で僕と行動を共にしたせいか、血を好むようになってしまって」
それと同時に階段上から聞こえた声に、名前は視線をあげる。
「…でも、わざわざ帰国した甲斐がありましたよ。長年隠蔽され続け、噂でしか耳にしなかった惨劇の場に降り立つことが出来たのですから……僕の知的興奮を呼び覚ますには十分過ぎますよ。」
先程の羽音の原因である鷹を左手に携えて階段を降りて来る独特な佇まいの男。鷹を連れた男に名前は驚いて目を瞬かせる。
鷹を引き連れた"白馬探"と名乗る男は新一と同じ高校生探偵らしく、
名前や蘭と同級生だった。
(探偵って変わり者が多いのかしら?)
「あなた…名字名前さんですよね?」
鷹を連れている事が珍しく、つい白馬の事をぼんやりと見ていた名前は、突然その本人から声をかけられてドキリとする。
「ええ、そうだけど…どうして私の名前を?」
「ふっ、探偵とは名乗らなくても、いくつかの事件を解決に導いてきたあなたの噂は私の耳にも届いていますよ。それに、あなたのような美しい女性の噂なら…尚更ね」
白馬はそう言いながら、スルリと名前の頬に触れる。英国帰りとあって、同年代の男子はとても出来そうにない気障な仕草も様になっている。
「………それは…ありがとう?」
名前は何と言えばいいのか分からずに、少し困ったように言葉を返すが白馬は構わずに次の言葉を続ける。
「それに…あなたは最近、江古田に転入したと聞きました。僕は、英国在住期間の方が長いですが、日本滞在中の所属高校はあなたと同じ江古田高校でして…同級生としても末永くよろしく」
「そうなんだ…よろしくね」
名前は挨拶と共に自然と腰に廻された腕にむず痒さを感じながらも、悪気の無さそうな白馬によろしくと返す。
--バシッ!
突然腰に廻された手を誰かがたたき落とす。驚いた名前が振り向くと、そこには珍しく怖い顔をした小五郎が立っている。
「…おじさん?」
名前は不思議そうに首を傾げるが、小五郎は名前を自分の背中に隠し白馬を睨む。
「……英国育ちのお坊ちゃんだか知らねーが、名前は俺の娘の大事な友人なんだ。あまり目にあまる行動は控えてもらいたいね」
「おや……これは失敬」
白馬は特に反論もせずに、わざとらしく両手を上げるとニッコリと微笑んだ。