「大海の奇跡」編
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---ドドド…
中森と名前が一緒に博物館に向かっていた頃、博物館から少し離れた大通りを独特のエンジン音をたてながら、次郎吉のハーレー駆け抜けていた。
card.423
「フッ…」
ハーレーのハンドルを握る次郎吉は、チラリとサイドカーに置かれた"大海の奇跡″を見て、ゆるりと口元を緩ませる。
「フッフフ……ハーッハハハ!!」
そして堪えきれないように込み上げてきた小さな笑いは、徐々に大きくなっていく。
「……何がおかしいの?」
「!?」
しかしふいに次郎吉の笑いを遮るように、いるはずのない人物の声が聞こえてくる。次郎吉は、ハッと息を飲んでサイドカーに目を向ける。
「……怪盗キッドさん?」
そこには前もってサイドカーに潜り込んでいたのか、コナンがいつの間にか澄ました顔で"大海の奇跡″を抱えながら座っている。
「な……何をたわけた事を。ワシが笑ったのは、キッドからその宝石を守り通せたからで…」
「バーロー!オメーが今日、博物館にこのハーレーで乗りつけて時点で見抜いてたよ…」
驚いてコナンを見ている次郎吉を尻目に、コナンは淡々と言葉を続けていく。
「今もそうだが、オメーはゴーグルを付けていなかった。コンタクト使用者が、ゴーグル無しでバイクに乗るのは辛い。風に瞳が当たって、痛くて涙が溢れる。例え風よけがついても、とても乗っていられないらしいからな……」
「………。」
「まぁ…大金持ちのくせにボディーガードもつけずに、こんな派手なバイクで駆け回るジィさんだ。どこかで眠らせてスリ変わる機会は、いくらでもあったんだろーけどな。ちなみに、このサイドカーに乗っていたルパンって犬は、潮留公園の木陰に連れてったよ。多分、まだオメーが嗅がせた睡眠薬のせいで寝てるんじゃねーか?」
コナンは、腕を組んでニヤリと笑いながら次郎吉を見つめる。次郎吉は、そんなコナンに負けじと笑い声をあげて言葉を返す。
「ハッハッハ!!ワシがキッドなわけあるまい!!現に、ワシはさっきキッドが現れた時にボウズのそばにいたじゃないか。昨夜も、彼奴が見せた空中を歩くというあの奇跡の瞬間にな!」
しかし、コナンは次郎吉の言葉に小さく鼻で笑って口を開く。
「あんなの奇跡でも何でもねーよ。手品の助手がいれば用意に出来る、単純なトリックだ。……鈴木財閥の精鋭部隊っていったって、警察や軍隊じゃない。今回の為に臨時に雇われた操縦士の中に、手下を紛れ込ませるのはそう難しくはねぇだろーからな」
「…………。」
「確かにオメーが昨夜ビルの間の空中に突然姿を現し、ヘリが頭上に来る事によって上から何かで吊っているのではないかという疑いを消した。その後、ビルの間にワイヤーなんか渡していない事を確認させれば、本当に空中に浮いているように見えるが、あの頭上のヘリの操縦者がオメーの手下なら奇跡は、"奇術″になる…」
「………………。」
コナンがスラスラと種明かしをしていくのを、ハンドルを握る次郎吉は前を見たまま眉を寄せて聞いていた。