「大海の奇跡」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
怪盗キッドが明日の犯行を予告して消え去ってしばらくしても、まだ辺りにはキッドを見に来た野次馬達が残っている。
「…………。」
(本当にお祭り騒ぎね)
小五郎達の車を見送った名前は、そんな人混みを抜けて足早にどこかに向かって足を進めた。
card.405
「簡単に"博物館の裏″って言われても…こんな広い博物館じゃ、どこの事なのか分からないわね…」
名前は、キョロキョロと辺りを見渡しながら困ったように呟く。
「……名前ちゃん!」
そんな時ふいに名前を呼ばれて振り返ると、視線の先に笑顔でヒラヒラ手を振っている人物の姿を見つけて、小さく安堵の息をつく。
「快斗ごめんね。待たせちゃった?なかなか快斗が待ってる場所が分からなくて…」
名前は、ベンチに座っていた快斗の横に腰をかける。
「大丈夫だよ、そもそも俺が急に呼んだんだからさ。悪かったな」
「それは構わないけど」
「それに、もしかしたら来れないんじゃないかと思ってたしさ」
「?」
名前は、快斗の言葉に不思議そうに首を傾げる。
「蘭ちゃん達と別々に帰るって言って、名探偵に何か言われなかったか?」
「あぁ…」
快斗の言葉に、名前は納得したように小さく頷くと、車を見送った時のコナンの視線を思い返す。
「すっごく…不機嫌そうな視線で見られたわよ」
「はは……やっぱり。」
困ったように呟く名前の言葉に、快斗は苦笑しながら頭の後ろで腕を組む。
「怪盗キッドの姿で見かけた時も、あいつ俺にサッカーボール食らわせようとしてたもんな…。よく来れたじゃんか、名探偵に止められなかったのか?」
「……新一とは、今日ほとんど話してないのよ。特に何も言われなかったから、不機嫌そうな視線は無視して来ちゃったわ」
苦笑しながらそう話す名前に、快斗は驚いて目を丸くする。
「え、まだ喧嘩してんのかよ?」
「別に、喧嘩じゃないわ」
「………ふーん?」
(どっちかが意地はるようなタイプでもないし、こいつらの事だから会えば仲直りすると思ってたんだけど……違ったか)
快斗は、普段仲が良さそうに話していやりコナンと名前の姿を思い出す。そもそも、この2人が喧嘩というのも意外だったから、まだ2人が仲直りしていなかった事に驚いてしまう。
「それにしても、"お前らの事には口は出さない″…とは言っても、認められたわけじゃないって事か」
--ああ……もう、俺はお前らの事に口は出さねー--
「…………。」
快斗の小さな呟きに、名前は何と言うべきか分からずに曖昧に微笑む。
「ま…厳しい兄ちゃん持つ、オメーの彼氏の俺としては、いろいろ大変なわけだよ」
そんな名前の表情に気付いた快斗は、パッと空気を変えるよう冗談めかしてそう言うと、スッと名前の手を握る。
「仕方ねーよ。どんな理由があったとしても、俺がやってる事が、普通じゃない事には変わりないんだからさ」
「快斗…」
「オメーとは、これからもずっと一緒にいるんだからよ。あいつとの事は……ま、ゆっくりやろーぜ」
「……そうね」
名前は快斗の言葉に一瞬目を見開いた後に、安心したように肩の力を抜くと、そっと快斗にもたれかかる。
「…………。」
--仲良くなれるわけねぇだろーが--
--……いいえ、きっと、仲良くなれると思うわ--
名前は、コナンとの会話を思い返して無意識にギュッと快斗の手を握る。快斗の事はもちろん大切だが、幼なじみであり自分の理解者でもあった新一とは、今後も仲違いしたくないし、出来れば快斗とだって仲良くしてほしいと思ってしまう。
(やっぱり……まだ、時間がかかりそうね)
自分の手を握りながら何も話さない名前の肩を、快斗は優しく抱き寄せた。