「大海の奇跡」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
card.388
スタスタと近付いて来る足元とともに、ひょっこり貯水タンクから顔を覗かせた青子。貯水タンクの影に座る名前と快斗の姿を見つると、眉を寄せる。
「あーっ!!名前ちゃん達、こんな所にいた!」
「青子…」
「どうしたんだよ、オメー。まだ2限目の途中だろ?」
青子は快斗の言葉に、ますます顔をしかめる。
「もぉー!!どうしたんだ?じゃないわよ!!快斗が名前ちゃんが登校した途端に、名前ちゃんを連れて出て行っちゃって…終いには中村先生の授業までサボるからいけないのよっ!」
「げっ……1限目、中村ちゃんだったっけ?」
「そういえば…確か今日の1限目、現国だったわね」
青子の言葉に、名前と快斗はため息をつきながら顔を見合わせる。
「そうよ!!それで怒った中村先生に、快斗達を探して来いって言われてから……青子ずーっと探してたんだよ?」
青子は学校中を探し回って疲れたのか大きくため息をつくと、ドサリと名前の横に座り込む。
「本当ごめんね、青子」
名前は、申し訳なさそうに青子にペコリと頭を下げる。
「……ううん。悪いのは全部バ快斗なんだもん。名前ちゃんは悪くないよ」
「おい…アホ子。何で、俺だけが悪ぃんだよ!?」
「だって、朝っぱらから有無を言わさず名前ちゃんを連れ出したの快斗じゃない!」
「バーロー!相変わらず、アホ子は分かってねーな。名前ちゃんだって、大好きなこの俺と一緒にいられて嬉しいから教室に戻らなかったんだよ!!」
「…………。」
「名前ちゃん……本当に、無理して快斗に付き合わなくても良いんだからね?」
快斗の言葉に心底呆れたようにため息をつくと、青子は名前に憐れむような視線を向けて声をかける。
「あはは、ま…結局は私も一緒になってサボったちゃったからね。お互い様だよ」
名前はそんな青子に曖昧に微笑みながら、言葉を返す。
「ほれ、見ろ!名前ちゃんだって、俺といたかったんだっつーの!オメーは、もう教室に戻れよ」
「もう2限目も終わりかけてるのに、今更戻れるわけないでしょ!?いいもん!青子も名前ちゃんとお話していくから」
「はあ?邪魔すんなよ!!」
「うるさいわね!だいたい、いつもいつも名前ちゃんを独占しすぎなのよ!!しつこい男は嫌われるんだからね!」
「な、縁起でもねー事言うんじゃねーっ!!」
「…………。」
(本当、仲良いわね。この2人)
呆れる名前を尻目に、繰り広げられる快斗の青子の口喧嘩。青子の登場で一気に賑やかになった屋上。
この二人のやり取りは、止めようとしたところで止まらない事が分かっている名前は、小さく苦笑しながら快斗の隣で2人の会話を聞いていた。
「おい、中森はどうした?」
「黒羽君と名前さんを探しに行ったきり戻ってきませーん」
2限目が終わりに、書類を取りに自分のクラスの教室に戻った中村。クラスの中心人物でもある騒がしい生徒達の姿が見当たらず、入口のそばにいた生徒に声をかける。
「………はあ、中森もか」
中村は、教室の真ん中の3つの空席を見て小さくため息をつく。
「……林、桜井!」
「何ですかー?」
「黒羽達が戻ったら、俺のとこに呼べ」
「先生ー、青子も呼び出しですか?」
快斗達を探しに行った青子に同情した恵子が中村に尋ねる。
「あー、中森はいい。あいつが巻き込まれたのは、俺のせいだからな」
快斗達の捜索を青子に命じた中村は、そう言いながらため息をつくと教室を出て行った。