「ベイカー街の亡霊」編
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「快斗、ごめんね!お待たせ……」
三船と別れてしばらくすると、快斗のもとに名前が戻って来る。
「…おお」
快斗は名前が自分の元に戻って来る姿を見て、軽く微笑んで手を上げる。
「何の用だったんだ?」
「ふふ…ほとんどゲームの話しよ。やっぱり、現実世界に私達の声が聞こえてたみたいだから……三船さんは?」
「あの人ならさっき帰ったよ」
「え、そうなの?何か話があるような言い方だったのに」
名前が目を丸くして会場を見渡すが、三船の姿はもう見当たらず、他の招待客も少しずつ帰路につきはじめたのか、会場内に残る人々は少なくなっていた。
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「快斗は?この後どうするの?」
「んー、もう帰ろうぜ?さすがに疲れたろ、オメーも」
快斗は、軽く伸びをしながら小さく欠伸をする。
「そうね。新一達も博士とおじさんの車に分かれて帰るみたい。蘭達が一緒にどう?って言ってたけど、断っちゃったわ」
「……珍しいな」
悪戯っ子のように笑う名前に、快斗は目を丸くする。
「あら、今日は1日中新一達と一緒だったから、快斗も疲れてるんじゃないかと思って。それに、私も快斗と2人でゆっくりしたいわ」
「珍しく素直じゃん」
快斗は名前の言葉に嬉そうに微笑みながら、右手で優しく名前を抱き寄せる。
「ふふ。それに、この左手もちゃんと診てもらわなくちゃ」
名前は、ポケットの中に入れられたままの左手にそっと触れながら快斗を見上げる。
「あー、俺病院って嫌いなんだよなぁ」
快斗は、小さくため息をつきながら眉を寄せる。
「快斗ったら、マジシャンなんだから腕は大切に……」
---ピピピ…
----ゴォォォ…!
そんな名前達の会話を遮るように、会場に小さな機械音が響く。
「………この音、」
「………。」
名前と快斗は言葉を切って、揃って上を見上げる。
「ノアズ・アークが、自分の命を絶とうとしてるんだわ…」
名前は、ヒロキの笑顔を思い返しながら小さく呟く。
--僕のようなコンピューターが生きていると、大人達が悪い事に利用してしまう。人工頭脳なんて、まだ生まれちゃいけなかったんだ--
「ヒロキ……安らかに眠れ」
快斗は上を見上げたまま、小さな声で呟く。
「快斗……」
名前は、その呟きに僅かに目を見開いて横に立つ快斗を見る。
「………。」
--ゲームをクリアした後で、ここでね。…もちろん、黒羽君も一緒に--
そして快斗の横顔を見つめたまま小さく微笑むと、口を開く。
「……ヒロキ君と話したんだもんね、快斗」
「え?お前どうして、それを」
快斗は突然の名前の言葉に目を丸くする。
「ふふ、ヒロキ君、快斗の事褒めてたわよ?」
「……は、お前…いつヒロキと?」
意味が分からないと言うように、首を傾げる快斗に小さく笑う。
「そういえば、蘭達と話してて分かったんだけどね…」
名前は、快斗の問いには答えず思いついたように口を開く。
「?」
「私達…ゲーム中に、新一の名前呼んじゃったり…結構際どい会話しちゃったじゃない?」
「あー、確かに。後半は、それどころじゃなかったからな…」
快斗は、ゲーム中の自分達の言動を思い返して顔をしかめる。
「そういうの、蘭達は聞こえなかったみたいだから……全部ヒロキ君が、現実世界には聞こえないようにしてくれていたんじゃないかしら?」
「ハハッ……ヒロキ様様だな」
「本当に…良い子よね、ヒロキ君」
名前は、少し視線を落としてポツリと呟く。悲し気な表情で、ヒロキの事を過去形で言わない名前の心情を察したのか、快斗は黙ったまま名前の手を握る。
「さ……病院に寄ってから帰りましょう」
名前はそんな快斗の手を握り返すと、雰囲気を変えるように微笑みながら快斗に声をかける。
「えー?湿布でも貼っておけば治るだろ……俺いつも怪我したって病院行かねーぞ」
「……快斗、いつもあんなに危ない事してるのに」
快斗のその言葉に、名前は呆れたようにため息をつく。
「とりあえず……"私が、快斗が心配だから″…ね?お願い」
「………。」
並んで歩きながら自分の事を心配気に上目遣いで見つめる名前の表情に、快斗は困ったように僅かに赤く染まった頬を掻く。
(こいつ……本当、反則)
そして、快斗は諦めたように小さくため息をつくと口を開く。
「仕方ねーな!じゃ……病院行くから、夕飯俺の好きなの作って」
「何よ、その交換条件…」
「良いじゃん!!俺の身体は、名前ちゃんの身体みたいなもんなんだから」
「…………。」
「とにかく俺…今日は、ハンバーグが食べたい!!」
「はいはい…今日は快斗、頑張ったもんね」
(ハンバーグか……家に玉葱あったかしら)
名前は快斗の言葉に苦笑しながらも、快斗のリクエストに答えるべく頭の中で材料の確認をする。
「それにしても、私の部屋に来るのは決定なのね」
「当たり前だろー?あそこは、俺の家みたいなもんなんだから。それに、俺だって"生身"の名前ちゃんに会いたかったんだぜ?」
「ふふ……仕方わね」
名前と快斗は、仲良くそんな会話をしながら波乱に満ちた1日を過ごした会場を後にしたのだった。
*ベイカー街の亡霊fin.