「ベイカー街の亡霊」編
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「…どうやら、お前らの勝ちのようだな…」
「お前らの……」
諸星のその言葉に、コナンのは何かを確信したように口元に笑みを浮かべる。しかし、諸星はそれに気がつかずに、コナンに握手を求めながら言葉を続ける。
「お前らを信じて良かったぜ…ありがとう…」
「どういたしまして…"ノアズ・アーク″」
諸星の手に自分の手を差し出しながら、コナンは小さな笑みを浮かべてそう返した。
card.372
「!?」
「名探偵…?」
コナンの言葉に、諸星はピクリと眉を上げて反応し、快斗は不思議そうに首を傾げる。
「……それとも、ヒロキ君って呼んだ方が良い?諸星君のデータを借りて、君もこのゲームに参加していたんだろ?」
「………ふ、」
---ジジジジ…
コナンの言葉に小さく微笑んだ諸星は、ゆるりと目を閉じると身体がゆらゆらとノイズに包まれる。
「!?」
そしてノイズが消えると、諸星が立っていた場所には、優しそうな少年。……ノアズ・アークの産みの親である、サワダ・ヒロキが立っている。ヒロキは、目を見開く快斗を尻目にコナンに向かって口を開く。
「いつからそれに…?」
「………。」
ヒロキの質問に、コナンは一瞬戸惑ったようにチラリと視線を上に向ける。
「君も…もちろん黒羽君も。ここでの会話は、何も気にしなくて良いよ…今は現実の世界との交信を切ってあるから…」
「「……え?」」
意味深なヒロキの言葉に、快斗とコナンは目を見合わせるが、その姿を見たヒロキは小さく微笑みを浮かべる。
「僕は、コクーンを通して君達…いや、コクーンに入った子供達全員の脳内データを読み取る事が出来るからね」
「なるほど……」
「……全てお見通しってわけか」
快斗とコナンは、苦笑したように肩を竦める。そしてコナンは、ヒロキに視線を戻すと、先程の質問に答え始める。
「……最初におかしいと思ったのは、ビック・ベンさ。君は針が動く前に気付いた。あれは俺達に、ビック・ベンの示す時間の意味を知らせようとしたんだろ?」
「……………。」
(…なるほど)
快斗は黙ったまま、コナンの話に耳を傾けている。
「その次は、サッカーボールだ。あの時、君は汚いボールと言って後方へ放った。サッカー少年なら、興味を持たないはずのない…100年前のサッカーボールをね!」
「………。」
ヒロキは黙ったままコナンの説明を聞いている。
「君は俺達を危険な目に遭わせながら…本当は、一致団結して危険を乗り越える事を信じていたんじゃないか?」
「……!!」
「日本のリセットとは、二世三世を抹殺することじゃない。俺達が、親の力を頼りにすることなく…壁を乗り越え、ゲームを通じて成長する事を君は期待していたんだろ?君は非情になれなかった…最後に現れたホームズがその証拠さ。ちゃんと、お助けキャラをクライマックスで登場させてくれた…」
「…………。」
コナンの言葉を最後まで聞いたヒロキの目には、じわりと涙が浮かぶ。
「…ヒロキ?」
快斗が心配気にヒロキに声をかけると、ヒロキは小さく微笑みながら口を開く。
「僕が、諸星君の身体を借りてゲームに潜り込んだのは…一度くらい友達と遊びたかったからなんだ。いつもいつも、仕事ばかりしていたから……」
「「………。」」
「ごめんよ?怖い目に遭わせて。でも僕すっごく楽しかったよ!」
そう言って晴れやかに笑うヒロキに、快斗は少し安心したように息をつく。
「……それに、羨ましかった。離れていても心が通じ合っている君とお父さんが……」
「ヒロキ君……」
「君のお父さんが、僕のお父さんの仇を取ってくれたんだ…ありがとう!」
「…………。」
(どうやら現実世界の方も、片が付いたみてーだな)
ヒロキの言葉に、快斗はチラリと視線を上に向ける。
「さぁ……そろそろお別れだ」
ヒロキが、スッとコナンの後ろを指差すと光り輝く門が現れる。
「……ヒロキの心は、いつまでも…ノアズ・アークの中で生き続けるのか?」
快斗の問いに、ヒロキは小さく首を横に振る。
「……僕のようなコンピューターが生きていると、大人達が悪い事に利用してしまう。人工頭脳なんて、まだ生まれちゃいけなかったんだ」
「…………。」
悲しそうなヒロキの言葉に、快斗は何とも言えないように眉を寄せるが、ヒロキはそれでも気丈に言葉を続けていく。
「……さあ、君達は君達の世界に戻ると良い!ただ、目が覚めても…みんなにこれだけは知っていて欲しい…」
「何だい?」
ヒロキの言葉に、コナンは首を傾げる。ヒロキは小さく息をつくと、何かが吹っ切れたような笑顔を見せながら口を開く。
「……現実の人生は、ゲームのように簡単じゃないとね!」
「!」
ヒロキの言葉に、コナンは力強く頷いてヒロキに向かって微笑む。そして、くるりと踵を返して光り輝く門に向かっていく。
「……楽しかったぜ、ヒロキ。お父さんに会えると良いな」
快斗は優しくヒロキに微笑みかけると、ヒラヒラと手を振りながらコナンに続いて光の中に消えていく。
「さようなら……工藤新一、黒羽快斗」
ヒロキは輝く光の中に消えていく2人の背中を見つめながら、小さく呟いた。