「ベイカー街の亡霊」編
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「…ふん。少年の後に、たまたま私も触ったから彼の指紋が消えただけだ!」
「なっ…何ぃ!?」
未だにシラを切ろうとするシンドラーを、小五郎は睨みつける。
---ガチャ!!
「工藤先生っ、見つけました!」
そのタイミングで、千葉が大声を上げて部屋に飛び込んで来た。
card.362
「段ボールとアルミフォイルで作った偽の短剣が、地下のゴミ集積所にっ!」
千葉はビニール袋に入った偽物の短剣を翳しながらそう告げる。
「!?」
「指紋は?」
白鳥は詰め寄るように千葉に尋ねる。
「…工藤先生がおっしゃった通り、諸星少年とシンドラー社長…2人の指紋がありました!!」
「!!」
その答えに、シンドラーは小さく息をのむが、優作は畳み掛けるように言葉を続けていく。
「……偽物の短剣に少年以外の指紋があったとしたら、それは犯人以外には考えられません!!」
「で…でっちあげだ!!」
しかしシンドラーは、額に汗を浮かべながら声を荒げる。
「日本政府に抗議するぞ!!そもそも、私には樫村を殺害する動機なんか無いはずだ!」
「………。」
優作はそう叫ぶシンドラーに何も反論せずに、ジッと見つめていた。
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---ガチャ!
「ここにもいねぇ!!」
その頃ゲームの世界では、諸星達が消えた乗客を探して列車内を移動していた。
「おい、メガネ!この先はもう機関室しかねーぞっ!?」
「とにかく行ってみよう!」
コナンを先頭にして、3人は機関室に向かうが、一番後ろを歩く快斗はどこか苛々したように表情が歪んでいる。
---ガチャ、
「!?」
機関室まで辿り着いた3人は、機関室を見て目を見開く。
「う…運転士がいねぇ…」
---ゴォォォ…
機関室には誰もおらず、石炭が音を立てて燃え上がっている。
「メガネ、とにかく…列車を止めよう!!」
「いや……駄目だ!ブレーキが壊されている!!くそっ…このままじゃ、どんどん加速しちまう!」
(くそっ!どうする!?)
諸星に言われるより先に、既にブレーキを探していたコナン。
コナンは壊れたブレーキを見て、舌打ちをしながら考えを巡らせる。
「そ、そんな…どうすんだよ?」
コナンと諸星は燃え上がる石炭と、破壊されたブレーキを見つめて呆然と立ち尽くす。
--ゴォォォ!!
そんな中、無情にも列車は音を立ててどんどん加速していく。
「くそっ!!黒羽、オメーもさっきから黙ってねーで、何か知恵出しやがれっ!」
コナンは焦りからくる苛立ちもあり、黙ったまま自分達の後ろに立つ快斗を怒鳴り付ける。
「うるせーな!!ブレーキも乗客もどーでも良いんだよっ!!」
「!!」
「何だとっ!?」
しかし快斗は、コナンに負けないくらい大声で怒鳴り返す。
「このゲームは、切り裂きジャック捕まえりゃー終わりなんだろ!?名前は、あの殺人犯の所にいるんだっ!こんな事してねーで、早く名前の所に行かせろよっ!」
快斗は自分の目の前で名前を連れ去られた事や、列車内を移動しても乗客どころか、名前さえ見つからない状況に対する苛々をコナンにぶつける。
「オメーはっ!良い歳して、ガキみてーな事言ってんじゃねーよっ!!」
コナンは危機的な状況のためか、いつになく感情的に快斗に怒鳴り返す。
「何だとっ!?俺は、あいつがいねーと…」
「いい加減にしろよっ!!」
睨み合いながら、尚も言い合いを続けようとする2人に今まで黙っていた諸星が声を荒げる。
「あの姉ちゃんが、例えまだゲームオーバーになっていなくても…あの姉ちゃん、"名前"を本当の意味で助けたかったら、今名前を探して助けるだけじゃ駄目じゃねーか!」
「……諸星、」
今まで頑なに名前達の名前を呼ばなかった諸星が、名前の名前を呼びながら必死に快斗に向かって言葉を吐き出す。
「名前を本当に助けたいんなら、俺達が確実にゲームをクリアするしかねーんだぞっ!!」
「ーっ!!」
諸星の言葉を聞いて、快斗は小さく目を見開いて口をつぐむ。
「お前が…"快斗"が、名前の事を大事に思ってんのは…今まで十分伝わって来たけどよ!!あの姉ちゃんがいなくなったからって、目先の事にばかり捕われてんなよっ!!」
「!!」
「メガネも!!列車も乗客も大事だけど、切り裂きジャックに逃げられたらどーしよもねーだろっ!?こんな所で言い合いなんかしてねーで、そろそろ探さねぇと本当にヤバイんじゃねーのかよっ!?」
「も、諸星…」
「お前ら、少し冷静になれよ…」
声を荒げていた諸星は、そこまで言い切ると最後にため息とともにポツリとそう呟く。
----ガンッ!
「!?」
「お、お前…その腕…」
諸星の迫力に言葉を失っていた2人だったが、快斗はわざと自分を痛めつけるかのように、痛めているはずの左腕で突然列車の壁を力強く殴りつける。
「…悪ぃ。名前がいねーと本当に駄目なんだ……俺は、」
そして快斗は小さくそう呟くと、ガシガシと前髪を掻いて大きく息をつく。
「……名探偵も。オメーにしては、珍しく冷静じゃねーな。オメーも、あいつには過保護だから本当は心配なんだろ」
そう言いながらニヤリと笑う快斗の表情は、先ほどまでの切羽詰まったものとは違いいつもの不敵な笑みに戻っている。
「……うるせー」
コナンも図星だったのか、気まずそうに視線を逸らす。そして小さく息をついた後に、いつもの真剣な表情に戻って諸星に視線をうつす。
「悪かったな。さっさと切り裂きジャックの野郎…探しに行こうぜ」
「おお!!」
雰囲気を切り替えた3人は、機関室の外に設置された梯子を上がり列車の屋根に登る。
---カンカン…
来なかったが先頭で登っていく中、下で待つ快斗は隣に立つ諸星に視線を向ける。
「……諸星、さっきはお前のおかげで助かった」
「!!」
「さ、オメーも早く登れ」
快斗は、軽く諸星の頭を撫でると諸星の返事を待たずに梯子を登るように促した。