「ベイカー街の亡霊」編
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「私、新一の家族と一緒に住んでたのよ」
名前の思いがけない言葉とともに、快斗の身体には突然冷たい突風が吹き付けた。
card.348
「………え?」
名前からの思いもよらぬ告白に、快斗の頭の中は混乱してしまって何と言えば良いのか言葉が出て来ない。
「…ふふ、やっぱり驚くわよね」
しかし名前はと言うと、今まで黙っていた事を打ち明けた開放感からか、どこかスッキリしたような表情を見せている。
「えーと……名前さ、前に"両親″の転勤で引っ越したとか言ってなかった?」
快斗は転校してきたばかりの頃の名前との会話を思い出して、控えめにそう尋ねる。
「ええ…転勤が中学の時だったって言ったでしょ?だから正確に言うと、小学校に上がる少し前から転勤するまでの間だから…6年間と少し…かな?新一の家にお世話になってたのは」
「それは…何で?って、聞いてもいい?」
名前の手を握る力を込めながら、快斗は優しく尋ねる。
(小学生前の子供が、親元を離れるなんて…それなりの理由があるんだよな…きっと)
快斗は名前の言葉の1つ1つを頭の中で整理しながら、名前を傷つけないように気遣いつつ会話している。そんな快斗の気遣いに気付いたのか、名前は快斗に優しく微笑んで口を開く。
「私…快斗に言えない事なんてないわ…快斗にも…いつか話さなきゃなって思ってたの」
名前は、快斗から目をそらさずに穏やかに語りはじめる。
「………。」
「それに、別に隠すような壮大な事情があるわけじゃないしね?…ただ、あんまり昔の話とか家族の話をするのは得意じゃないから…何となく言えないままになっていただけ」
名前はそう言いながら、風に揺れて顔にかかる髪を耳にかける。
「…名前」
「何…?」
「俺はさ…お前と、名前と…これからもずっと一緒にいるつもりだから」
「?」
突然の快斗の言葉に、名前は戸惑いながら首を傾げる。
「……だからさ、今すぐに急いでお前の全てを知ろうとは思ってないから。ゆっくりで良いんだぜ?お前が…俺に話したいと思った時とか……心の整理がついた時とか……いつだって、俺はお前のそばにいるんだからよ」
「!!」
名前は、その言葉に小さく目を見開く。
「本当…快斗って、私には勿体ないくらい優しいわね」
名前は、快斗の言葉に照れたように口元を覆いながら苦笑する。そして、小さく息をついたあとにゆっくりと口を開く。
「私が新一の家にお世話になる事が決まったのは……」
----ガラッ、
「…っと、悪い。何か邪魔したか?」
名前が快斗を見つめて話し始めるのを遮るように、突然扉が開く音がして、名前と快斗はくるりと扉に視線を向ける。すると、そこにはコナンの姿があり、会話を中断させたことに気付いたのか気まずそうな顔をしている。
「………邪魔なんてもんじゃねーよ」
コナンの言葉に何となく黙りこんでしまった3人の中で、快斗が一番に口を開く。
「俺と名前ちゃんの、ラブラブな時間を邪魔すんじゃねーよ!」
ニヤニヤ笑う快斗の言葉にコナンは顔をしかめる。名前は、快斗がわざとそう言って誤魔化してくれたことが分かっているため、黙ったままコナンから視線をそらす。そんな名前の態度に、コナンは呆れたようにもう1度ため息をついてから口を開く。
「ふざけてないで、オメーらも少し知恵貸せ」
「知恵?」
コナンの言葉に、名前は首を傾げる。
「バーロー、あいつらが寝てる間に切り裂きジャックの事件を整理しておかねーと、あいつらが起きたらゆっくり考える時間ねぇだろ。外も寒いんだから、さっさと中に入れ」
コナンは、それだけ言うとくるりと踵を返して室内に戻って行く。
「名探偵には、いつも大事なところで邪魔されるよな」
快斗はコナンが去って行った後に、小さくため息をつく。
「ごめんね、快斗」
名前は、ようやく話す決意をした話題が再び頓挫してしまったことに、何となく肩を落とす。
「いや…ま、確かに今はゲームクリアが最優先事項だ。中に戻ろうぜ」
そう言いながら、快斗は名前を中に入るように促す。
「そうね…」
名前も、小さく頷くとガラリと扉を開けて中に入っていく。
--俺は…産まれて間もない時から、兄弟のように一緒に過ごしてきたが…--
「………。」
(あの台詞は…例えでも何でもなく"事実″だったってわけか)
快斗は前を歩く名前の背中を見つめながら、以前コナンが言った台詞を思い返して小さく息をつく。
--外も寒いんだ、さっさと中に入れ--
「…………ふっ、」
(…知恵貸せ、なんてただの口実で本当はそっちが本音だろーな。ったく、本当に名前に関しては過保護な"兄貴″だよなぁ、名探偵は…)
快斗は、灰原と3人で事件についてお互いの考えを交わしている名前とコナンの姿を見ながら小さく微笑んだ。