「ベイカー街の亡霊」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
名前は快斗の胸にもたれ、手を握られながらゆるりと目を閉じる。
「………。」
(快斗…暖かい。こんな所までリアルに出来てるのね)
「……ところでさ、」
名前が、ぼんやりと快斗の体温に身を委ねていると、ふいに快斗が思い出したように口を開いた。
「……名前ってさ、やけにホームズに詳しくねぇか?」
card.347
「そうかしら?」
名前は、閉じていた目を開けるときょとんと首を傾げる。
「そうだって!!あの名探偵と普通にホームズ関連の会話交わしてるし……まぁ、哀ちゃんも割と詳しいみたいだけど。なんか、この世界だと俺だけ完全に置いてけぼりじゃん」
「……快斗は、ホームズなんて読まなそうだもんね」
「まぁ…登場人物を何となく知ってる程度だな」
「ふふ……普段の快斗は、追い掛けられる側だしね」
拗ねたように呟く快斗に、名前はクスクスと笑いながら答える。
「オメーなぁ…ったく。あのお目当てらが話してたの…ライヘンバッハの話だったっけ?名探偵がやけに盛り上がってるように見えたけど…」
快斗は名前の言葉に呆れたように肩を落としながら尋ねる。
「あぁ…そうね。あの話は、新一の好きな"台詞″が絡んでるような話だからね。新一も思い入れがあるんじゃないかしら」
「好きな台詞?」
名前が小さく笑ってそう答えると、快斗は首を傾げる。
「……"君を確実に破滅させる事が出来れば、公共の利益のために僕は喜んで死を受け入れよう″」
「え?何それ?」
「ホームズの下宿で、モリアーティ教授とホームズが対峙した時に、ホームズが言った台詞よ」
「へぇ…"公共の利益のため″か…。そんな事を言えるなんて…ホームズって、出来た野郎なんだな…」
快斗は、小さく目を丸くして息をつきながら呟く。
「あら…私は意外と良い台詞だと思うけど?」
「えー?名前ちゃんも公共の利益とか…そんな事が言えちゃうタイプなわけ?」
正義感の強い名前なら、あながち無くもなさそうな内容に、快斗は心配そうに眉を寄せる。
「私は、そんなに出来た人間じゃないわよ。だけど、公共の利益とまではいかなくてと、それくらいの事を思えるくらい"大事なもの″なら、私にも…っ、」
(……っと、快斗に向かってペラペラ話しすぎちゃったわ)
名前は、楽しそうに話していた話を、突然そこで切って気まずそうに小さく口元に手をあてる。
「…………え?」
快斗は名前の急に途切れた言葉に首を傾げる
「……私にも……何?」
「……秘密」
「何だよ…教えろよ!」
「ひーみーつ」
快斗が名前を覗き込むようにして尋ねるが、名前は誤魔化すように空を見上げてそう答える。
「…何それ?ちょー気になるんだけど!」
快斗は、拗ねたように小さく頬を膨らませる。
「……ふふ、気が向いたらそのうち教えてあげる」
しかし名前は、快斗に教える気なんて全くなさそうな口調で小さく笑う。
「はぁ……で?お前のホームズ好きは、やっぱり名探偵の影響なわけ?」
快斗は、名前の態度に諦めたように息をつくと質問を変える。
「んー?影響と言うか…昔から家にたくさん小説が置かれてたから、暇さえあれば読んでたのよね」
名前は、懐かしそうに視線を空に向ける。
「へぇ……家族の誰かが好きだったのか?」
快斗は、ふいに家族の話題になり少し遠慮気味に名前に尋ねる。
「ううん……」
「え?じゃあ何で家に…」
「"優作さん″が…集めてた小説なの」
「?」
名前の言葉に、快斗は不思議そうに首を傾げる。名前は、そんな快斗に困ったように微笑むと、戸惑ったように下に視線を向ける。
「…………。」
「……名前?」
優しく名前の名を呼ぶ快斗の声に、名前はゆるりと顔をあげる。
「………私、新一の家族と一緒に住んでたのよ」
そして、しばらく快斗を見つめた後に小さな声でそう呟いた。