「ベイカー街の亡霊」編
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「ほら、ここはあなた達の出番でしょ?」
ようやく見つけた宿泊所の前で、灰原にジト目を向けられた名前と快斗は、肩をすくめて入口へと足を向けた。
card.346
「失礼ですが…お客様の関係は?」
夜中に子供を引き連れて入って来た名前と快斗に、店員は隠しもせずに訝し気な視線を向ける。
「そりゃ…どう見たって夫ふ……」
「……従兄弟です。親戚の子供達を連れて観光に来ていたんですが、帰りの列車に乗り遅れてしまって」
「……そうですか。お部屋は1部屋でよろしいですか?」
「ええ…もちろん」
まだ納得のいかないような表情の店員も、ニッコリとした笑顔で淡々と事情を告げ、有無を言わさぬ雰囲気を漂わす名前の態度に、それ以上の詮索はせずに1部屋分の鍵を取り出した。
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急遽見つけた宿泊所ではあったが、建物も部屋も思ったよりしっかりしていて、部屋には小さなベランダもついていた。ベランダに出てみると、夜の目映い月明かりに照らされている。
「本当にリアルな世界……」
名前は、ベランダに置かれた備え付けの小さな椅子に座り、空に浮かぶ月を見上げてポツリと呟く。
---ガチャ
ふいに背後で扉を開く音がして、名前はくるりと振り返る。
「………みんな寝た?」
「ああ、もう熟睡してるよ。まぁ、名探偵と哀ちゃんは当然のように起きてるけどな」
快斗は中で寝ている滝沢達に気遣ってか、ゆっくり音をたてずに扉を閉めた後に名前の横に腰を降ろして答える。
「まぁ…あの2人なら、当然そうよね」
名前は、小さく苦笑して硝子ごしに室内に目を向ける。
「……名前ちゃんは?寝なくて大丈夫?」
「私は大丈夫よ。現実世界では眠ってるんだし…そう考えると何だか眠くならないわ。快斗は、大丈夫?」
「んー?俺も平気」
快斗はそう言いながら、名前の肩を抱き寄せる。
「俺…俺達の関係…"夫婦″が良かったなー」
快斗はわざとらしくため息をつきながら呟く。
「ふふ…私達が、あんな小学生を連れた夫婦って無理があると思うけど?」
「……でも、良いよなー。名前ちゃんが俺の"お嫁さん″って」
「………。」
(冗談混じりとは言え…"こういう話″を何にも考えずに言ってるのよね、快斗は)
名前は、隣でニヤニヤと何かを想像している快斗を呆れたように見つめる。
「……それにしても、快斗って子供の扱いうまいわよね」
「んー、そう?」
「ええ、あの飛行機の時…新一も言ってたわよ」
名前は、現実世界に聞こえないよう後半は小声で告げる。
「そーか?普段、四六時中あいつらの相手してる名探偵に比べたら大した事ねーだろ」
「でも、ああいう子達の相手するの好きでしょ?」
名前は、歩美や諸星達に快斗が向ける態度を思い浮かべながら尋ねる。
「んー、その台詞は名前ちゃんにそっくりお返しするよ」
「…え、私?」
「名前ちゃんったら、平気で俺を置いて副総監の息子のために飛び出すんだもんなー」
「…………。」
「まったく…本当に気が気じゃねーよ」
「ごめんなさい…?」
「本当さー、頼むから無茶ばっかりしないでくれよ」
相変わらず自ら危険に飛び込んでいく名前に、快斗は先ほどまでの冗談のような口調とは一転し、真剣な声でそう告げる。そして、大きくため息をつきながら名前の肩を抱く手に力を込める。
「うん、ごめんね。だけど……」
名前は、そんな快斗の胸に自分の身体を預けてもう1度謝りながらも、言葉を続ける。
「……ん?」
「……快斗が倒れた時、私だってすごく心配したんだから」
名前は、菊川と共に床に倒れた快斗を見た瞬間の全身の力の抜けるような感覚を思い出して、思わず手をギュッと握る。
「………大丈夫だよ。俺が名前ちゃんを1人にするわけねーじゃん」
快斗は、そんな名前の手を愛おしそうにソッと握りながら優しく微笑んだ。