導入編(オリジナル)
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「……名前!」
自分以外の全てがスローモーションのように感じて、友人達の声も聞こえず無音のような世界の中に、ふいに自分の名前を呼ぶ声が1つだけ鮮明に響いて自分のもとへ届いた。
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(えっ?この声…?)
「………っ!」
聞き覚えのある声に気をとられていると、先程まで重力に従って地上に向かって落下していたはずの自分の身体が、突然ふわりと浮かんでそのまま身体が暖かい温もりに包まれる。
「…随分と無茶をするお嬢さんだ、お会いするのは2回目ですね。」
そして耳元に響く気障な台詞に、目を見開く。気付いた時には落下していたはずの自分は、白い怪盗の腕の中で悠然と空を飛んでいる。
「え、あなた…どうして?」
突然の出来事に驚いている間にも、ヒューっと風に乗った名前達は宙を舞いながら、美術館の屋上からどんどん離れていく。
怪盗キッドの腕の中にいる名前の耳には、友人達の「怪盗キッドだーっ!」という興奮したような声が僅かに届く。
「…美術館の下見に来てたのかしら?」
少しずつ冷静さを取り戻した名前は、キッドに自分から声をかける。
「命を落としかけたというのに、冷静ですね。あなたは」
「あまりに現実味の体験に感覚が鈍ってるのよ、きっと。さっき落ちてるときも、まるで映画を見てるような気分だったわ。あなたのおかげで、現実に戻れたようだけど」
「今もまだ感覚が鈍ってるのでは?」
「……そうね、でも声は聞こえるようになったから」
どこか楽しそうに笑う名前を、キッドは不思議そうに見つめるがそれ以上詳しく話すつもりはないようだ。キッドは小さく肩をすくめると、ため息混じりに話題を変える。
「しかし…美術館があの様子では、予告状は取り消さなければなりませんね」
館長が殺害され、副館長が逮捕されたとなれば当分の間は営業出来ないだろう。そもそも、今後の経営自体継続出来るのかもわからない。
「…いいの?」
「ええ…先程確認しましたが、あれは模造品。今回は目当ての品じゃなかったので」
そんな会話をしていると、ふいに名前の身体に受ける風が弱まる。名前がチラリと視線をキッドから前方に向けると、視線の先にはあるビルの屋上が見えた。
「降りますよ」
それと同時にキッドは高度を下げると、着陸体勢に入るのだった。