「ベイカー街の亡霊」編
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card.331
名前と快斗に呆れたような視線を向けたあと、コナンは気を取り直して口を開く。
「ホームズの事だから、切り裂きジャックに関する資料を集めているはずだよ!」
「そうね、探してみましょう」
名前と快斗も、真面目な表情に戻りコナンの意見に頷く。
「よしっ、じゃあお前達みんなで手分けして探すぞ!」
快斗は室内を見てまわっていた光彦達や、つまらなそうにソファに座っている江守達に声をかける。
「はい。じゃあ私はこの辺りを…」
「…え!?」
そんな快斗の言葉に真っ先に反応し、資料探しを始めたのは菊川。
面倒くさそうにソファに座っていた諸星や滝沢は、そんな菊川らしからぬ素直な反応に僅かに目を見開く。
「……あいつ」
パーティー会場で話した時の菊川とは違う素直な反応に、声をかけた快斗自身も拍子抜けしたように目を丸くする。
「こんな状況だけど、このゲームに参加した事で変わってきたようね…少しずつ」
そんな快斗の横で、名前は優しい微笑みを浮かべながら、真剣な表情で資料をめくる菊川の姿を見つめる。
「ほぉー、じゃ俺達も頑張らねーとな」
快斗は感心したように菊川を見つめたあと、名前に向って軽くウィンクして見せる。
「ええ。とりあえず資料を見つけないと…」
「黒羽君」
名前と快斗がそんな会話をしながら資料探しを始めようとすると、ふいに足元から声がかかる。
「哀ちゃん?」
「哀…どうしたの?」
2人の足元には立っていたのは灰原。
思わぬ相手から声をかけられた快斗は、目を瞬かせる。
「あなた達…ちょっとこっちに来なさい」
灰原は有無を言わさぬ雰囲気でそう告げると、くるりと踵を返しスタスタと歩いていく。
「えー、何だろう?」
「さあ?」
2人は首を傾げながら灰原の後に続くと、灰原は部屋の隅の大きな本棚の影に入るように2人を促す。
「腕見せて」
「……え、」
コナン達の位置から見えない位置に3人が入り込むと、灰原が突然告げる。
「左腕よ。痛むんでしょ?」
「……あ、うん」
「どこが痛むの?」
「えっと、この辺りから先が…」
快斗は戸惑いながらも、灰原に左腕を差し出す。すると、灰原はどこからか探し出して来たのか救急箱を取り出して、慣れた手付きで快斗の左腕の処置を始める。
「哀、ありがとう」
(そっか、救急箱か…気付かなかったな)
名前は、スルスルと快斗の腕に巻かれていく包帯を見つめながら、灰原に申し訳なさそうに声をかけるが、せっかく下宿先に入れたのに、救急箱のことまで頭がまわらなかった自分に不甲斐なさを感じる。
「別に大した事じゃないわ。まぁ、こんな腕の状態じゃ…この程度の処置では結局左腕は使えないと思うけど、何もしないよりマシでしょ?」
「哀ちゃんが、俺にこんなに優しくしてくれるなんて!!」
快斗はいつも冷たくあしらわれているため、感激したように笑みを浮かべる。
「馬鹿ね。この状況じゃ、事件解決のためには子供の姿の私達より…あなた達に動いてもらう必要があるでしょ。この私が、わざわざ手当てしてあげるんだからしっかり働いてもらうわよ」
「………ハイ、」
「…ほら、終わったわよ」
ガックリと肩を落とす快斗を尻目に、ポンッと包帯を巻き終えた腕を軽く叩くと、灰原は救急箱を持って立ち上がる。
「ありがとね……哀」
「その分、働いてもらうわよって言ったでしょ?お礼なんていらないわ」
そう言うと灰原はスタスタと、コナン達の元に戻っていく。
「…………。」
(…ああ言ってるけど、本当は優しいんだから)
名前は、灰原の背中を見送りながら小さく微笑む。
「おー、何となく痺れが良くなった感じがするな」
そんな名前の後ろで、快斗が包帯が巻かれた腕を見ながら呟く。
「…快斗、ごめんね」
「名前ちゃん?」
快斗は、突然謝罪する名前に首を傾げる。
「こういうの、本当は快斗の一番そばにいる私が気付いてあげたいんだけど…哀みたいに気がまわらなくて」
名前は、快斗の左腕に触れながら申し訳なさそうに呟く。
「何だ、そんな事かよ!」
快斗は呆れたように小さく息をつくと、右手で名前の頭をポンポンと撫でる。
「俺はさ、名前ちゃんが俺のそばにいてくれるだけですっげー幸せなんだよ。こんな怪我なんて吹き飛ぶくらいに……な?」
「快斗……」
「だから、頼むから俺より先にゲームオーバーとかやめてくれよ。さっさと資料探して、現実世界に戻ろうぜ!」
「………うん」
ニッコリ笑う快斗の笑顔に名前も安心したように微笑むと、快斗の手に引かれてコナン達の元に戻って行った。