「ベイカー街の亡霊」編
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「゙黒羽快斗″という少年は、どういう人物なのか…教えてもらいたい」
優作の思わぬ申し出に、三船は僅かに動揺するが、それを表情には出さないように押さえ付ける。
「…あんたが、なぜそんな事を聞くのかは知らないが…あいつらの知人…いや、"友人″としては簡単にペラペラと話すわけにはいかないんだが?」
「………ふ、」
先程までの礼儀正しい口調とは打って変わり、自分を疑いの目で見つめる三船に優作小さく微笑みを浮かべた。
card.329
「失礼。実は、私は名前の親代わりのような存在でね」
「……名前の?」
「ええ。とある事情から、幼い頃から中学に上がるまで、名前はほとんどの時間を私達家族とともに過ごしていたんですよ」
「?」
事情を知らない三船は、優作の言葉に僅かに首を傾げるが、優作は更に言葉を続ける。
「なので、今日初めて会った"娘″のボーイフレンドに少し興味がありまして。紛らわしい言い方をしてしまいましたかね」
「…………。」
そう言いながら、ニッコリと微笑む優作を三船は黙ったまま見つめる。
(確かに、"娘″を心配する男親という雰囲気もあるが……それ以上に、こいつは"黒羽快斗″をもっと深く知ろうとしているように感じる)
「………三船さん?」
自分を見つめて何も答えない三船に、優作は首を傾げる。
「ああ…失礼。"快斗″について、と言われても…」
(もし、こいつが…快斗の秘密を知ろうとしているというなら…気付きかけているのだとしたら……)
三船は、優作に負けないくらにニッコリと微笑んで口を開く。
「あいつ、快斗は…名前と同じ学校の同級生…としか言いようがないんでね。何と言えばいいか少し考えてしまいました」
(あいつら2人の為にも……名前の為にも、あいつの秘密を知られるわけにはいかない)
「二人とも本当に仲が良さそうですし……ま、名前の交際相手としても、俺は良い相手だと思いますよ?快斗は」
三船は心の中でそう決意し、自分の発言や態度に厳重の注意を図りながらも、ごく自然にそう言葉を締めくくる。
「……そうですか。すみませんね、初対面だというのに…変な事を聞いてしまって」
優作は隙のない三船の笑顔をしばらく見つめると、小さく息をついてから笑顔でそう答える。
---ブーブーブー
「……おっと失礼、」
そして、ふいに2人の間に響いたバイブ音に気付いて、優作はポケットから携帯を取り出して画面に表示された着信相手を確認する。
「おや、事件の件かもしれません。では…三船さん、引き止めてすいませんでした」
「いえ…事件と、あいつらのゲームの両方が、無事に解決する事を祈ってますよ」
「ええ…あの子達なら大丈夫ですよ、きっと。……では、また」
優作は先程までの笑みとは違い、優しい微笑みを浮かべてそう言うと、軽く頭を下げくるりと踵を返す。
「……はい、工藤です。何かありましたか?」
そして、歩きながら電話に出ると三船から遠ざかって行く。
「…………。」
三船はしばらく優作の背中を見つめた後に、再び会場に向けて足を進めた。
「…何ですって?」
三船と別れた優作は、真剣な表情で通話相手に尋ねる。
『……我々はノアズ・アークを甘く見とったようじゃ』
電話口からは、阿笠の声が響く。
『ホームズもワトスンもベイカー街にはいなかったよ。今は、ダートムーアにいるらしい』
「やはり、先を読まれましたか…」
『入力した覚えのないアコーディオンを弾く妙なキャラまでおるし、前途多難じゃ…』
「………分かりました。もう少し調べたら、そちらに戻ります。また何か変化があったら教えてください」
優作は阿笠の言葉に眉をよせながら答える。
『ああ…分かった』
「では、また」
通話を終えた優作は、小さく息をついてスッと視線を上に向ける。
(………頑張れよ、新一)
そして、自分の息子である新一に向けて心の中で声をかけたのだった。