「ベイカー街の亡霊」編
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「いーですねぇ…」
「俺も欲しいなぁ!!」
名前と快斗が三船と話している頃、光彦達は羨ましそうに園子のバッジを見つめていた。
「諦めなっ!立場が違うんだよ!」
「……!?」
そんな元太達に向かって、ふいにサッカーボールを持った少年を先頭に4人の少年達が声をかけてくる。
card.305
「そもそもお前ら、ちゃんと招待されてんのか?」
「ちょっと!失礼でしょ?この子たちは、れっきとしたうちの招待客よ!」
その言葉に、園子は顔をしかめて子供達を注意する。
「これはこれは、鈴木財閥のご令嬢…」
そんな園子にわざとらしく頭を下げるのは、狂言師の息子である"菊川清一郎″。
「いいか?人間ってのは、生まれた時から人生が決まってんのさ!」
光彦達を見下したようにニヤリと笑う色黒の少年は、警視副総監の孫である"諸星秀樹″。この少年達のリーダー的な存在である。
「そうそう!!綺麗な服も、着る人を選ぶってわけ」
自慢気に超ネクタイに触れながら笑う、ふくよかな少年は銀行頭取の孫、"江森晃″。
「"選ばれなかった″人間は、外から指をくわえて見てれば良いんだよ!」
髪を1つにまとめた少年は、政治家の息子である"滝沢進也″。
「……この連中、すんげえムカつく!」
「お父さん、ちょっと説教してやって!」
蘭は珍しく怒りを露にしながら、小五郎の肘でつついて耳打ちする。
「任せておけ……おっほん!いいかね、少年達よ。人生をなめちゃいかんぞ!順調に見える人生にも落とし穴があるもんだ!君達も、大人になればわかる時が来る…」
「女房に逃げられたり?」
「…へ?」
ふいに諸星が呟いた言葉に、小五郎は言葉をつぐんで眉をよせる。
「…知ってるぜ?おじさんの事なら…眠りの小五郎って、居眠りしてる間に女房が出て行ったから、そういうあだ名が付いたんだろ?」
「「ギャハハハ!!」」
「こ…このガキども!!」
馬鹿にしたように笑う子供達に、小五郎は顔を真っ赤にする。
「小学生に完全に言い負かされてるわね」
「…ああ」
灰原とコナンは、呆れたようにその様子を見つめる。
「おい!オメーら、ミニゲームやろうぜ!」
光彦達をからかうのに飽きたのか、諸星は持っていたサッカーボールを蹴りながら駆け出していく。
---ダダダダ!
「ああいう子供達が、親の仕事を引き継いでこれからの日本のリーダーになっていくんだと思うと…未来は絶望的だな」
「同感だわ」
パーティー会場という室内にも関わらず、サッカーボールを蹴りあう子供達。
ボールは展示された銅像や招待客にぶつかっているが、構わずにミニゲームを続けている。そんな姿を呆れたようにコナンと灰原が見つめる。
---パシッ!
しかし、ふいに江守が蹴って宙を舞っていたボールを誰かの手が掴んで止めてしまう。
「何するんだ!!」
「返せよっ!」
諸星達が不満気にその人物に駆け寄ってくる。
「オメーら、危ねーだろ。名前ちゃんにぶつかったらどーするつもりだ?遊びたいなら外に行けよな」
「……私だけじゃなくて、他のお客様にも迷惑でしょう」
そこには名前をボールから庇うように立つ快斗と、その後ろで呆れたように諸星達を見つめる名前。
快斗は名前に向かって飛んできたボールを右手で掴んで、不機嫌そうに眉をよせている。
「…何だよ、偉そうに!」
「お兄さん達、私達の事知らないんじゃない?」
「あそこにいる庶民のガキと、俺達は立場が違うんだよ」
視線で歩美達をチラリと示しながら自慢気に笑う諸星達に、名前と快斗は眉をよせる。
「オメーらなぁ!そういう言い方は…」
「そうね…あなた達が誰なのかなんて知らないわ」
「!?」
快斗の言葉を遮るように、名前が諸星を見ながらサラリと告げる。その言葉に、菊川達はジロリと名前に視線をうつす。
「……あなたのご両親や、お祖父さん方の事はもちろん知ってるけどね」
「…っ!だったら…っ」
「でも"あなた達″の事は知らないわ。親の功績や実績はあなた達自身を評価するものにはならないのよ。人の功績を自分の物のように自慢気に語ることほど恥ずかしい事はないと思わない?」
「なっ…!?」
普段、自分達より年上の人間であっても当然のように自分達を優遇してくれる環境に慣れていたため、諸星達は目を見開いて言葉を失う。
「……名前ちゃんが、子ども相手にそんなに厳しいの珍しくな」
「あら…だって、この子達歩美ちゃん達にひどい事言うんだもの」
快斗が目を丸くしながら尋ねると、名前は小さく肩をすくめる。
「このっ…!?」
「……君達は公衆道徳というものや、目上の人間への話し方を、お父さんやお母さんに教わらなかったのかな?」
まだ納得出来ないように名前達に反論しようとする諸星達に、ふいに快斗の横から1人の男性が声をかける。
「なっ…誰だよ!?おっさん!」
「コクーン開発を担当した樫村と言います」
「じいちゃんの銀行が助けてやったから、ゲームを完成出来たんじゃん!」
「俺達にたてつくと、明日にはクビになっちゃうかもよ…」
「……あいつら、」
「結構ハッキリ言ったつもりだったけど、全然懲りてないわね」
名前と快斗は、相変わらずの諸星達の態度に顔を見合わせてため息をつく。
「だったら…そうなる前に、君達をここからつまみ出す事にしよう。もちろんゲームにも参加出来なくなるが、構わないかな?」
「!?」
「い…行こうぜ」
その言葉に、さすがに怯んだのか諸星達はゾロゾロとその場から立ち去っていく。
「……お客様であるあなた方に迷惑をかけてしまって、申し訳なかったね」
「あ……いえ」
樫村は立ち去っていく諸星達を見送ると、名前達に軽く頭を下げてその場から離れていく。
「まぁ!!なんて素敵なおじさまかしら」
一部始終を見ていた園子は、そんな樫村の姿に歓喜の声をあげた後でチラリと小五郎に視線をうつす。
「…誰かさんとは大違い」
その言葉に、小五郎はガクッと肩を落とした。