「ベイカー街の亡霊」編
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「それで?この俺の授業をサボって、2人してお前らは何をしてたんだ」
放課後、生徒指導室に呼び出された快斗と名前。2人の前には笑顔の中村が立っているがその目は笑っていない。
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「まぁ、ある程度の原因は分かっているが。数ある授業の中から俺の授業をサボるとは…」
中村はそう言いながら、チラリと快斗を見る。
「…何だよ?」
「黒羽…お前がサボるのは日常茶飯事だが、名字まで巻き込むなよ。どうせお前が引き止めたんだろ?」
「………。」
("ひき止めた"のは快斗だけと、私の抵抗も甘かったからな…)
快斗と中村の会話を聞きながら、名前は小さくため息をつく。
「なっ!!そもそも、今回は名前の方から俺を誘惑………痛っ!」
そんな名前の隣で、中村に向かって余計な事まで口走ろうとする快斗。名前は、慌てて快斗の足をギュッと踏む。突然の痛みに快斗も冷静になったのか、気まずそうに視線をそらしている。
「………はぁ。ま、とにかく以後気をつけろよ」
中村は小さくため息をつくと、行って良し…というようにヒラヒラと手を振る。
「すみませんでした………快斗?」
名前は中村の仕草を見て、改めて一言謝ると教室に戻ろうと立ち上がるが、一向に立ち上がる気配のない快斗に首を傾げる。
「……俺、ちょーっと中村ちゃんと話があっから。名前ちゃん教室で待っててくれねーか?」
快斗はくるりと振り返ると、名前に向かって軽く手を合わせるような仕草をしてみせる。
「…そう?じゃ、先に戻るね」
名前は不思議に思いながらも、中村に頭を下げて部屋から出ていく
----パタン…
「何だ?話って…」
わざわざ名前を出て行かせてまで部屋に残った快斗に、中村は首を傾げる。
「なぁ…中村ちゃん、俺らの担任だよな?」
「はぁ?お前今さら何を言ってるんだ…」
中村は快斗の突然の言葉にますます首を傾げながらも、呆れたように答えて手元の書類に目を向ける。
「って事は、名前の親とか家族の事とか知ってる?」
「………どういう意味だ?俺は、担任として困らない程度の最低限の事しか知らないぞ」
中村は何でもないように答えるが、快斗は自分の問いを聞いた時に書類を持つ中村の手がピクリと小さく動いたのを見逃さなかった。
「なぁ、本当は何か知ってんだろ?中村ちゃん!そういえば、この前病院に来たときも両親の話題になったら変な反応してたよな?」
快斗が引き下がらずに問いを続けるため、中村はパサリと書類を置いて小さくため息をつく。
「………黒羽。例え俺が何かを知ってても…それは、俺に聞くべき事じゃないんじゃないか?」
「そりゃ、俺だって名前に直接聞けりゃ良いんだけど…あいつ家族の話題が出た時すごい辛そうな顔してたからよ……」
快斗は頭をガシガシと掻いて、困ったように呟く。
--あの人達は、私に興味なんかないから--
そして、そう呟いた時の名前の表情を思い出して眉をよせる。
「……真実は知りたいが、名字を傷つけたくない……か」
そう呟きながら、中村はジッと快斗を見つめる。
「それは間違ってるぞ…黒羽」
「何でだよ?」
「……話をさせる事で名字を傷つけるのを恐れて、名字の知らないところで名字が隠している事を知っても、それは何の解決にもならない」
「………。」
「お前が本当に名字の助けになりたいと思ってるなら、例え名字が傷ついたとしても…その傷ごと受け止めて、そこから救い出してやらねーと」
中村はそれだけ言うと、もう話す事はないとでも言うように再び書類に視線を戻す。
「…………はぁ」
快斗は諦めたように小さくため息をつくと、ガタンと立ち上がる。
「……ま、確かにその通りか」
(中村ちゃん…普段、気怠そうにしてるのに、余計な時だけ男らしくなっちまうからなぁ…)
快斗はしばらく中村を見つめると、もう1つ小さくため息をつく。
「ほら、可愛い名字が待ってるんだろ?早く戻れ」
「はいはい…」
快斗は、書類に視線を向けたままそう告げる中村に小さく肩をすくめると、それ以上は何も言わずに部屋から出ていく。
---パタン
「…………頑張れよ、」
中村は快斗が出て行った扉を見つめて、ポツリと小さく呟いた。