「ベイカー街の亡霊」編
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「……三船…拓也?」
快斗は、キョトンとした顔で首を傾げる。そんな快斗の髪を爽やかな風がサラサラと揺らしている。
「ええ…快斗、覚えてないかな?快斗が漆黒の星を盗りにきた時にいたじゃない」
「……………ああ、分かった。あいつね」
名前の言葉を聞いて思い当たったのか、快斗は思いっきり嫌そうな顔をしてため息をついた。
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「良いもん?」
「ええ…快斗にもそう伝えとけって言ってたわよ」
2人がいるのは、穏やかな陽差しに照らされた暖かい屋上。江古田高校の屋上は滅多に他の生徒が来ないため、安心してキッドやら事件の話が出来る。
「ふーん」
快斗は興味がないのか気怠そうに相槌をうつと、ゴロンと名前の膝を枕にして横になると名前の顔をジッと見上げる。
「……で、お前普段からあいつと連絡とかとってんの?」
「え?ううん…あの船上パーティーがあった日以来、連絡来たのは昨日が初めてだけど」
「ふぅん?ま、それなら良いけど……お前は結局あいつの事どう思ってるわけ?」
快斗は下から手を伸ばして、名前の髪にサラサラと触れながら尋ねる。
「うーん、お兄ちゃん?」
「はあ?」
快斗は思いがけない答えが返ってきて、目を丸くする。
「……三船さんの雰囲気ってそんな感じしない?快斗はあんまり三船さんと話してなかったから、私の言いたいこと分からないかなぁ。私が兄弟とか欲しかったから、余計にそう思うのかもしれないけど」
「そーいえば、俺お前の家族の話し聞いたことないな」
快斗は、"兄弟″という単語を聞いてふと思いついたように尋ねる。
「あー、そうだったかな?」
名前は、そう言いながら風に靡く髪を耳にかけて自然な流れで快斗から視線をそらす。
「お前の両親って海外にいるんだっけ?それで、この間も病院に来れなかったんだろ?」
「……まぁね」
「俺……やっぱり挨拶とかした方が良いんだよな?」
「え……そんなの良いわよ。"あの人達″は、私に興味なんかないから」
「……え?」
快斗の問いに冷たく答える名前に、快斗は目を丸くする。そしてその時、初めて名前の態度に違和感を感じる。
「……名前、お前なんかおかしくない?」
「そうかな?"そんな事″より、快斗さっきの体育で怪我したでしょ?大丈夫だった?」
名前は、サラリと話題を変える。
「……あー、この間飛行機でぶつけたとこが癖になってるみたいだな」
快斗は、名前の態度に戸惑いつつも一応質問に答える。
「そう…今度のパーティー、新一も来るけど三船さんも来るし…本当に参加して大丈夫かしら?」
「左手は、まあ…痛いけどキッドの仕事するわけじゃねーからな。三船って奴は会うと問題あるのか?」
「三船さん…あのパーティーの日に快斗が変装してた蘭との会話で、私とキッドの関係にも気付いてるし。私の彼氏がキッドだって思ってるから…"快斗″の姿で会わない方が良いんじゃない?」
快斗は先ほどの家族の話題でまだ名前に聞きたい事があったが、どんどん話題を変えていく名前の態度を見て一先ずそれを飲み込んで名前の問いに答える。
「……ま、仕方ねーんじゃないか?もうバレちまってるんだろ?蘭ちゃん達に直接誘われた以上、変装していくわけにもいかねーし」
快斗は大した事でもないと言うようにそう言った後に、声のトーンを僅かに低くして言葉を続ける。
「それに俺は嫌いだが…あの三船って野郎は何かプレゼントを用意するくらい、やけにお前を気に入ってるみてーだし?」
どこか冷たくそう答えると、快斗はふいっと視線をそらす。
「………快斗、何か怒ってるの?」
「別にー?」
快斗は、わざとらしく頬を膨らませて答える。
「……何よ?」
名前が首を傾げて尋ねると、快斗は突然ガバリと起き上がって名前に詰め寄る。
「わかんねーのっ?」
「?」
「…"妬いて″んのっ!」
「えっ…」
名前は、快斗の言葉に僅かに目を見開くと小さく吹き出す。
「ふふ…」
「何だよ?今、笑うとこじゃねーだろ!?」
眉をよせる快斗を尻目に、名前は小さく笑い続ける。
「だって、面と向かって"妬いてる″なんて、わざわざ自分で言う?ふふふ…」
そう言いながら、名前は快斗にゆっくり顔を寄せる。
「オメー!人ごとだと思って……え、」
---チュッ
声を荒げる快斗の頬に、名前が突然触れるだけの口づけをする。
「なっ…!?」
快斗は名前の唇が触れた頬に手をあてて、口をパクパクしながら目を見開く。
「ごめんなさい」
「え?」
「前に快斗が奇術の愛好家のチャットで園子とメールした時は、私がいろいろ文句言ったのに。私も軽率だった」
「い、いや…そんな改まって謝らなくても」
「でも、私は快斗以外は興味ないからね。三船さんは、本当にお兄さんみたいな感じで……快斗が嫌なら、なるべく連絡も控えるから」
困ったように眉を下げる名前に、快斗は口をつぐむ。
("家族"ことは、よくわからねーけど…お兄さんみたいって言った時に、名前嬉しそうだったしな…)
「いや、俺だってそこまで本気で嫌がってねーよ。せっかく、良い"お兄さん"みたいな相手が出来たんだからさ、遠慮すんなって」
「……ありがとう」
快斗がそう言うと、名前は嬉しそうに笑う。家族の事は気になるものの、今はこれでいいか…と、快斗は内心ため息をつきながら、名前の体を引き寄せる。
---キーンコーンカーンコーン
「か、快斗?チャイムなったけど…」
「いやいや!ほっぺにチューだけじゃ終われねーって!」
「え、ちょ…快斗…」
「俺に嫉妬させたおしおきね」
快斗は、ニヤリと笑うと戸惑う名前の唇に自分の唇をかさねる。暖かい陽差しに照らされる屋上で、チャイムが鳴り止んだあとも、快斗は角度を変えて何度も唇を重ねていった。