「手負いの探偵団」・対面編

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--手術から4日目


病室で名前のベッドに座りながら右手で名前の髪をくるくるといじり、もう片方の手で器用に雑誌をパラパラとめくる快斗。
すると、ふと思い出したように雑誌から名前にチラリと視線を向けて「そういえば、明日の退院の準備は大丈夫なのか?」と尋ねる。

「ええ、元々急な入院だったから大した荷物もないしね。快斗が毎日来てくれたからいろいろ助かったけど、4日も学校休んで本当に平気なの?」

「平気、平気!!俺行かなくても勉強出来るし。…それに、学校より何より名前の方が大事だろ?オメー拳銃で撃たれたんだぜ!?」

「まあ、そうだけど…」

「普通に暮らしてたら、拳銃で撃たれるなんて事ないんだからな!?こんな大事件なのに、俺がそばにいなくてどうすんだよ?本当は、夜も付き添いたいくらいだぜ」

「……ありがとう」
(大事件…まぁ、確か珍しい経験だけど)

快斗は、灰原に連絡を受けて夜中に病院に来た翌日から毎日学校を休んで、1日中名前に付き添っているのだった。


card.297


「……何も大丈夫じゃないぞ、黒羽!」

「え?」

ふいに響いた声に、二人は驚いて病室の入口へ視線をうつす。

「な…中村ちゃん!?」

「……先生、」

そこには、腕を組んで快斗に呆れたような視線を向けながら立っている二人の担任である中村の姿。

「……失礼する」

そう言うと、中村は名前のベッド脇の椅子に腰をおろして名前を真っ直ぐ見つめる。

「黒羽はともかく…名字、無事で本当に良かった」

「先生…」

「黒羽が、夢が…夢がと、大騒ぎしていた時は馬鹿にしていたが。まさか、本当にこんな事になるとはな…」

「なっ!?ひでーよ、先生!馬鹿にしてたのかよっ!?」

「…本当に、ご迷惑おかけしました」

騒ぎ立てる快斗の横で、名前はペコリと頭を下げる。

「まぁ、迷惑というか…心配はしたよ。いきなり刑事さんから連絡が来たからな。それに、今は元気そうだが…一時は本当に危なかったと聞いたぞ?」

「そうみたいですね…私も気付いたら手術が終わってた感じで…」

「まったく…お前が、今までいくつかの事件に関わったり、解決した事がある話は何度か聞いているが……あまり無茶はするな」

「はい…」

「それより先生さー、名前ちゃん明日退院だぜ?見舞いに来るの遅くねーか?」

しんみりした雰囲気の中、そう尋ねた快斗の言葉に中村は小さくため息をつく。

「本当は手術の翌日に来ようと思ったんだが…人一倍と言わず五倍くらい煩い黒羽が毎日付き添ってると聞いたからな。あまり面会者が増えるのも、名字の身体の負担になるだろうと思ったんだ」

「……中村ちゃんって、俺に異様に冷たいよな」

名前は、相変わらずの快斗と中村の会話にクスクスと笑う。

「とにかく…元気そうで何よりだ。名字は賢いからそんなに心配いらないと思うが、一応お前が休んでいる間の授業内容はプリントにまとめてあるからな」

「わざわざ…すみません」

「それから…黒羽」

中村は名前に向けていた優しい視線をガラリと変えて、快斗に厳しい視線を向ける。

「な…なんだよ?」

「お前には、"サボッてた″間の補習プリントとテストがたっぷりあるからな」

「なっ!!テスト~!?何でだよ!!俺と名前との扱いが違うじゃねーか!!」

快斗はガタリと立ち上がって声をあげる。

「当たり前だろ?お前は怪我も何にもしてないんだから」

「なっ!?愛しの名前ちゃんが入院してるんだから、仕方ねーだろ?名前の親は来られないって言うんだし」

「……ま、それぞれ事情はあるだろうが…だからと言って学校は休むな」

急に歯切れの悪くなった中村の様子に首を傾げる快斗だったが、中村はくるりと名前に視線を戻す。

「それじゃ名字、俺はそろそろ帰るからな。何かあれば学校に連絡するように」

「え、もうですか?」

「ああ…名字の友達も面会に来てたんだが、俺に気をつかって下で待ってくれてるんだ」

「あ、そうなんですか?誰かしら…」

名前が首を傾げている間に、中村は荷物を持って立ち上がる。

「…じゃあ、また学校でな」

「あ…はい。先生、わざわざ来ていただい…てありがとうございました」

名前は帰る中村を廊下まで出て見送りながら、改めて頭を下げる。中村は、そんな名前に軽く微笑んだあとに、名前の隣にいる快斗をチラリと見る。

「…黒羽」

「何だよ、まだ何かあるのかよ?」

名字が無事で良かったな」

「!…あ、ああ!」


中村の言葉に快斗は小さく目を見開くが、すぐに力強く頷く。

「………ふっ」

中村はそんな快斗に小さく微笑むと、ヒラヒラと手を振って帰って行った。



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「…先生が言ってた"友達″って園子達だったのね」

中村が帰ってしばらくすると、蘭と園子が病室に入って来る。

「コナン君から、名前が明日退院だって聞いたから、急いで来たのよ!」

「何か用事?」


「ほら!退院しても名前には割とすぐ会えるけど、黒羽君にはこういう機会がないとなかなか会えないでしょ?」

「え…俺?」

窓際で壁に寄り掛かって3人の会話をぼんやり聞いていた快斗は、蘭の口から自分の名前が出たことに僅かに目を見開く。

「快斗に何か用事なの?」

「そうそう!!」

園子は名前の言葉に笑顔で頷きながら、鞄からガサガサと何かを取り出す。

「あんたたち2人をこれに誘おうと思ってね!!」

園子からピラリと渡された紙を名前が受け取り、それを快斗が横から覗き込む。

「……バーチャル・リアリティのゲーム完成披露パーティー?」

快斗は書かれた内容を読み上げて首を傾げる。

「うん!最先端のゲームなんですって!」

「……まぁゲームの内容を説明するのは難しいけど、それは当日来ればわかると思うし。内容はゲームの覆面発表会とただの立食パーティーだから。パーティーに招待されたと思って気軽においでよ!」

「…これ、俺も行っていいの?」

名前だけでなく自分も誘われた事に、快斗は目を丸くしている。

「うん!名前の恋人だし、蘭のおじさんや博士とかがきんちょ達も来るから」

「……へぇ、何だか悪ぃな。わざわざありがとう」

(俺以外は、いつものメンバーってわけね)

「これ、ゲームの名前は何て言うの?」

名前は、園子から渡された紙から視線をあげて尋ねる。



「"コクーン″よ!!」



「「コクーン?」」


聞き覚えのない言葉に、名前と快斗は首を傾げる。
コナン達も来ることから、快斗は参加することを少し渋っていたが、結局蘭と園子から「絶対来てね!」と、強く誘われて翌週のパーティーに参加することとなった。
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