「手負いの探偵団」・対面編
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「…工藤君の方が少し大人みたいね」
立ち去っていくコナンの背中を見ながら、灰原がそう言って小さく笑う。
「…なっ!」
快斗は灰原の言葉に不服そうに眉を寄せるが、反論するのも情けないと思ったのか小さく息をつく。
「…この姿では初めましてだね。哀ちゃん?」
そして改めて灰原と視線を合わせると、嬉しそうに笑いながらそう声をかけた。
card.293
「こんなきっかけとは言え、名前ちゃんの友達の哀ちゃんと、こうやって会えて嬉しいよ」
灰原は、快斗が座るソファの正面の壁に寄り掛かって腕を組む。
「…そう呼ぶなって言っても、あなたはそう呼ぶんでしょうから…もう諦めるわ」
呆れたような灰原の言葉に、快斗は小さく笑う。
「…電話ありがとね、哀ちゃん」
「……名前は、あなたに連絡しないでほしかったみたいだけどね」
「………。」
「意識を失う直前の名前の伝言だったから…名前の気持ちを尊重しようとも思ったんだけど…」
灰原は、そこで言葉を切って快斗をチラリと見る。
「……どうして教えてくれたんだ?」
「それは…あの時のあなたの言葉を思い出したからよ」
「?」
「あなたが、工藤君の姿で言った気障な台詞よ」
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--哀ちゃんに、1つ言わせてもらおうか--
--何を?--
--俺が…どれだけあいつの事が好きだか分かる?--
--はあ?--
--あいつは、俺が犯罪者だって分かってて俺を受け入れてくれたんだ。俺は、名前の為に何かを失う事は何も怖くない。…名前の為だったら、例えこの世界だって差し出すよ--
--……。--
--だけど、俺は"この世界″の為には……あいつは差し出してやらないけどね--
--何が言いたいのよ?--
--あれ?分かんないかなぁ……つまり、俺はこの世界の誰よりも名前を"愛してる″って事!--
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「私は人が口にする台詞なんか、信用出来ないと思ってるけど。あの時、あの言葉が何故か頭に浮かんだの。……理由なんて、それだけよ」
「ふーん」
快斗は改めて自分の言った台詞に触れられて、照れ臭そうに灰原から視線をそらしながら頭を掻く。
「……ま、あんな台詞を"工藤君の顔″から聞くのは、違和感たっぷりだったけどね」
「ふーん?…哀ちゃんって、意外と名探偵の事好きだよね」
「はあ?馬鹿な事言わないでくれる?」
心底嫌そうな顔をして快斗を睨む灰原。そんな灰原の態度に、快斗は楽しそうに口角を上げる。
「……でも、例え名前が"あなたのために″、あなたがここに来る事を望んでいないとしても…あの連絡を受けて、ここに来ないような男だったら…」
「……男だったら?」
急に怪しげに妖艶な笑みを浮かべる灰原を見て、快斗は恐る恐る尋ねる。
「……新薬の実験台か、もしくは食事に何か盛ってやろうと思ってのに残念だったわ」
何でもない事のようにサラリと告げる灰原の言葉に、快斗はピシリと硬直する。
「…物騒な冗談やめてよ。哀ちゃん」
元々組織の科学者である灰原の素性を知らない快斗でも、その言葉は何故かただならぬ恐怖心を覚える。
「…あら、冗談じゃないわよ?自分の保身のために、姿を現さないような男なんて最低だもの」
「……哀ちゃんって、本当に名前ちゃんのこと大好きだよね」
「はあ?あなたと一緒にしないでくれる?」
灰原はそう言ってふいっと顔をそらすが、その頬は僅かに赤く染まっている。
「……ははっ」
(…典型的なツンデレだな)
---タタタ!
「あ、いたいた!」
そんな2人の元に足音が近付いて来て、廊下の曲がり角から蘭がヒョコッと顔を出す。
「?」
「黒羽君…あれ?哀ちゃんと一緒にいたの?」
「え、ああ…まあね」
「あっ!それよりも、名前が目覚ましたわよ」
「えっ!?」
蘭の知らせを聞いて、快斗は勢いよく立ち上がると、灰原と共に足早に病室へ向かって行った。