「銀翼の魔術師」編
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card.279
「名前…名前!」
快斗に名前を呼ばれて、名前はゆっくりと目を開ける。
「…快斗?」
「見ろっ!!名探偵の奴やりやがった!!」
「え……?」
名前がおそるおそる辺りを見渡すと、少し傾いてはいるがほとんど大きな損傷もなく、無事に着陸した機体の姿が見える。
「ほら、見ろっ!!やっぱり"あいつ″なら出来ると思ったんだっ!!………名前?」
快斗は興奮したように機体を見て声をあげていたが、ふと隣の名前に視線をうつすと小さく息をのんで言葉を切る。
「……良かった…本当にっ…良かった」
名前は、ポロポロと涙を流しながら機体から救助される乗客達を真っ直ぐ見つめている。
「馬鹿だな…泣くなよ」
快斗はキッドの白い手袋を外して名前の涙を拭いとると、名前の頭をポンポンと撫でる。しかし、名前の瞳からは拭っても拭っても次々と涙が溢れてくる。
「だ、だって……私だけ、新一……蘭とか…哀とか…皆を置いて逃げちゃって…」
「ああ…」
「……新一の事、信じてたけど…もし駄目だったら……って…」
「うん…」
快斗は涙ながらに話す名前の言葉を黙って聞きながら、名前を優しく見つめ続ける。
「………っ、」
その後の名前の言葉は、溢れる涙と嗚咽が邪魔をして続かない。
快斗は、そんな名前を勢い良く引き寄せて正面からギュッと抱きしめる。
「…………。」
---バサバサバサ…
抱き合ったまま沈黙する2人の間には、キッドのマントが風に靡く音と、遠くから聞こえる救助された乗客達の嬉しそうな声だけが響く。
「ごめんな、俺が来いって言ったから…オメー辛かったよな」
「……!」
名前は、快斗の言葉に首を勢いよく横に振ってその言葉を否定する。
「それは違う…私は、快斗と一緒にいたかった。みんなが乗る機体から離れてでも……あの機内にみんなを置いて行ってでも、快斗と一緒にいたかったの」
「名前…」
「たくさん友人や知り合いが乗っていたのに、それでもそう思ってしまう自分が…非情な人間だと分かってるけど…それでも私は…」
快斗は戸惑ったように告げられる名前の言葉に、小さく息をのむ。
(……名前が泣いているのは、それも理由の1つ…か)
快斗は名前をジッと見つめたあと、名前の顔にかかる髪にサラリと触れて、名前の顔を覗きこむ。
「…良いじゃねぇか?」
「え、」
「正義感の強くて、他人ばかり気にかけているお前が…それでも、あの状況で俺を選んでくれた。お前のその想いの大きさは…俺にとって…正直すげぇ嬉しい」
「……快斗?」
「…犯罪者である俺を…あの状況で、"俺に着いて来いという"なんて身勝手な事を言う俺を、名前は選んでくれた」
「…………。」
「俺はお前のその想いを、他の物を捨ててまで俺を選んでくれた覚悟を、絶対に裏切らない。お前を絶対に"幸せ″にする」
「!!」
--あいつが相手じゃ、オメーは"幸せ″になれねぇんじゃねぇかと思ってよ--
「…これから先、どんな事があっても、何があってもだ」
快斗はそこで言葉を切って、涙を流しながら自分を見上げる名前の顔を覗き込む。
「だから、これからも…何度でも俺を選んでくれるか?…名前」
「……馬鹿ね。選ぶも何も、私はもう"迷わない″って言ったでしょ?」
「……名前」
快斗は名前の言葉にゆるりと頬を緩めると、涙に濡れた名前の目尻に触れながら、ゆっくりと名前の唇に自分の唇を近付けていく。
「………!」
名前は、その動きに一瞬ピクリと動じるが抵抗せずに瞳を閉じる。
----バサバサバサ!!
2人の唇がゆっくりと重なる中、キッドの白いマントが風に靡く。
「……名前ちゃんの、"初チュー″頂き!」
「………馬鹿」
ゆっくり唇が離れた後、快斗はいつもの調子でニヤリと笑う。
名前は僅かに頬を染めてそう呟きながら、もう1度白い衣に身を包む快斗の胸に顔を埋めた。