「銀翼の魔術師」編
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card.274
---ゴォォォ!
-----バサバサ!!
機内から空中に飛び出した2人は、身体全体に凄まじい風圧を受けながら落下していく。
---カチッ、バサッ!!
ある程度の高度まで落下した所で、キッドがハンググライダーの翼を広ると、2人の身体にかかっていた重力と風圧が少なくなり、穏やかな風に乗ってスーッと夜の闇を進んでいく。
「名前、大丈夫かー?」
ようやくバランスが安定した所で、キッドが名前に声をかける。
「…ん、平気」
名前はギュッ閉じていた目を開いて、小さく息をつきながら答える。
(さすがにジャンボジェットから飛び降りるとなると…凄いわね)
「快斗は?左腕、平気?」
名前は、自分の身体を右手で支えながら負傷している左腕でハンググライダーを操作をしている快斗に気遣って声をかける。
「平気、平気!!名前ちゃん軽いからね!それより怖くねーか?」
「……大丈夫だよ」
名前はそう答えながら、ギュッと快斗の胸に顔を埋める。
「……それにしても、あんなに熱い愛の告白は初めてでしたよ。名前嬢?」
すると、キッドがニヤリと笑いながら怪盗キッドの口調になって名前の耳元で囁く。
「…恥ずかしいから、いちいち掘り返さないでよ」
名前はつい先ほど、本人の目の前で自分が言った台詞を思い出して、照れ隠しにため息をつく。
「いやぁ…唯一の心残りと言えば、あの台詞を"俺の名前″で言ってもらえなかった事かな~」
「……新一の前で、"快斗″なんて呼べないじゃない」
「はは、そりゃそーだ」
キッドは、自分を睨み付けていた小さな探偵を思い返しながら苦笑する。
「……それにしても、俺はこーんなに名前ちゃんの事を想ってるのに!!名前ちゃんは、名探偵の言葉に惑わされたり…飛行機に残るなんて言い出したり……」
--…この話は名前にもした。オメーとの事を、もう1度考えろとも伝えた--
--快斗を危険な目になんて合わせられない…私は残るから……--
「………ごめんね」
「でも、もう答えは出たんだろ?」
「ええ…もう迷わないわ」
名前の言葉に、快斗は満足気に微笑んで名前の身体を支える右腕に力を込める。
「……名前、あれ見てみろよ!」
「え?あの光って…パトカー?」
キッドが単眼鏡ごしに示した方向に名前が視線を向けると、輝く街明かりの中に帯状になって進む赤い光が見える。
「…え?まさか快斗!"機体を導く光″って…」
「正解!!あの光を誘導出来るのは、"俺″しかいねーだろ?」
「そ、そうだけど……あんな数の警察を相手に大丈夫なの?」
「んー?平気、平気。あいつらを埠頭までおびき寄せたら、すぐあの飛行機が緊急着陸だろ?警察も俺を追いかけてる場合じゃなくなるって」
「……確かにそうね」
(あの短時間でそこまで考えてたなんて…)
名前はいつもの調子でサラリと話す快斗を見ながら、目を見開いて感心する。
「さ…オメーは、俺にしっかり掴まって顔ちゃんと隠しておけよ」
キッドはそう言うと、グッと高度を下げて数多のパトカーに向かって行った。
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「助けてぇ…私はキッドじゃありません!!人違いです!」
その頃、中森警部率いる警察車両は怪盗キッドに扮する新庄を追い詰めていた。合流した目暮達も、偽キッドが必死に弁解する様子を見つめていた。
「なら…どうして逃げたんだっ?」
「そ……それは、時計を盗んだから…です」
出来心で樹里の別荘にあった時計を盗んでしまった新庄は、素直にそれを打ち明ける。
「ほら、見ろ!!やっぱりキッドじゃないか!」
「……ん?」
キッドを追い詰める事が出来た事に満面の笑みを浮かべる中森の後ろで、目暮はチラリと上空に目を向けて眉をよせる。
「……中森警部、あれはなんだね?」
そして、上空に浮かぶ白い影を指差しながら中森に声をかける。
「ん~?見りゃ分かるだろ!!ありゃあキッドだ…」
「「「……………。」」」
「キ、キッド!?」
中森は目を見開いて、空中を優雅に飛び去るキッドを見つめる。
「…えっ!?じゃあ…お前は……?」
「だから…人違いですぅ!!」
偽キッドの新庄の悲痛な叫びが夜の闇に響き渡る。
「お…お前達っ!!本物のキッドを追うぞ!!」
「「「は…はいっ!!」」」
中森達は急いでパトカーに乗り込んで、どこかへ飛び去ろうとするキッドを追い掛けるのだった。