「銀翼の魔術師」編
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「無理だ…」
「し…新庄さん?」
名前は、心配そうに新庄の顔をしたキッドの横顔を見つめる。
card.268
「さっき管制塔にぶつかった時に、左腕を強打してな。今はほとんど右手だけで操縦してるんだ」
「え!?」
「手動で着陸させるとなると、両手で操縦桿を握らなきゃならねぇ。…ん?」
そう言いながら、新庄はふと自分の斜め後ろに立つ蘭に目を向けると、何かを思いついたように小さく笑う。
「な、何ですか?」
突然新庄から視線を向けられて、蘭は戸惑いながら首を傾げる。
「…君、視力は?」
「え…両眼とも1.5です」
「持病は?」
「特にありませんけど…」
キッドである新庄が、次々と繰り出す質問に蘭は戸惑いながら素直に答えていく。
「BWH(バスト、ウエスト、ヒップ)は?」
「えーと、バストは…って!?何を言わせるんですか!!」
「ははっ。よーし、合格だ!君が俺の変わりにここに座ってくれ!」
照れる蘭に向かって、新庄は楽しそうに笑いながらそう告げる。
「な、何で!?私、飛行機の操縦なんて…」
蘭は思いがけない言葉に、目を見開いて後ずさる。
「大丈夫!!操作は俺が後ろから教えるから、君は操縦桿を握っているだけで良いんだ」
「む…無理、絶対に無理っ!」
「ちょっと、快…新庄さん!!蘭がやるなら私がやるわ!」
戸惑う蘭を見兼ねて、名前が新庄に向かって口を開く。
「……君は駄目だ」
しかし名前の申し出は、有無を言わさぬ口調で却下される。
「なっ…どうして?」
断られた名前は、納得がいかないように眉をよせる。
「………。」
コナンは、副操縦席から名前とキッドの会話を黙ったまま見つめる。
-----ゴォォォ!
「ひ、飛行機が…飛行機が下がってます!!」
新庄が操縦桿から手を離して立ち上がったためか、3人が言い争ってる間に飛行機の高度が徐々に下がりはじめる。
「ーっ!蘭姉ちゃん、早く座って!」
「えっ…!?」
機体が乱れたために、拒否していた蘭も思わず言われた通り機長席に座ってしまう。
---グッ…
「そうそう…そのまま。そのゆっくり操縦桿を手前に引くんだ…落ち着いてな」
戸惑いながらも操縦桿を握る蘭に、新庄が後ろから操作の方法を教える。
----ゴォォォ!
「ちょっと、新一!あなた、何で嫌がってる蘭にあんな危ない事をさせるのよ?」
名前は、副操縦席の右側にまわってしゃがみ込むと、戸惑いつつも新庄に従う蘭を気にしながら、コナンをジト目で見る。
「しゃーねーだろ。あいつが操縦出来ないって言うんだからよ」
「だからって!蘭…あんなに不安そうじゃない?新一は蘭が心配じゃないの?」
名前は、元々危険な事や不利な事は周りの人間にはやらせずに、自分が請け負おうとする傾向がある。
それに加えて、機体が乱れた時にコナンが真っ先に名前ではなく"蘭″を機長席に座らせた行動が、名前には理解出来ないのだ。
「…新一、蘭が大切なんじゃないの?」
「………。」
コナンは、名前の言いたい事が分かり小さくため息をつく。
--…どんな状況でも、何よりもあいつを優先させる…例え、他の物を見捨てる事になってもな--
「…確かに、俺だって蘭を危険な目に合わせたくはねぇ。だからって、蘭が駄目で名前なら良いって事でもない」
「で、でも…」
「それに、"あいつ″は、絶対にお前がそこに座る事を良しとしねー。不本意だが、着陸には…あいつの協力が必要だからな」
「?」
名前は、コナンの言葉の意味が分からず首を傾げる。
「…ま、蘭はあー見えていざって時には度胸もあるし。俺もいるんだから心配すんな!!」
「おい…室蘭の方向は?」
名前がコナンに何か言い返そうとしたタイミングで、新庄がコナン達に向かって声をかけてくる。名前とコナンは、一旦そこで会話を切り上げて、再び地図に視線をうつしたのだった。