「銀翼の魔術師」編
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「機長からの伝言で、他のお客様が動揺しないよう空港に着くまで事件の事は悟られないようにしてほしいとの事です」
「分かりました…」
CAの言葉に小五郎は小さく頷く。
幸いにも、舞台の打ち上げで北海道に向かう目的でこの飛行機の2階席は貸し切られていたため、2階席には舞台関係者と招待された小五郎達しか乗っていない。
「それにしても、犯人はいったいどうやって樹里さんに毒を……」
小五郎のそばで英里は小さく首を傾げた。
card.255
名前は通路に立ったまま、布をかけられ座席へと移動された樹里の遺体を見つめる。
--快斗も北海道行くの?--
--んー?まぁね--
「…………。」
(違う…樹里さんは、指輪をしてたもの。盗む指輪の持ち主に化けるなんて…そんな卑怯なやり方、快斗はしないはず…)
名前は、自分を納得させるように必死に考えを巡らしながらギュッと自分の腕を力をこめてつかむ。
(快斗なわけない……けど、"もし快斗だったら″?)
「ーっ!!」
名前は、ふいに脳裏に浮かんだ最悪の結末に小さく身震いして、ズキズキと痛む額に手をあてる。
毒殺された樹里が、怪盗キッドである快斗の変装ではない事を確かめたくても大勢の人間がいるなかでは樹里の遺体に近付く事も出来ない。
「……名前ちゃん?」
呆然と立ち尽くしている名前に、新庄が優しく声をかける。
「………はい?」
名前は掠れたような小さな声を出しながら、ゆっくりと新庄に視線をうつす。
「顔色が悪い…座った方がいいよ」
そう言いながら、名前の返事を待たずに新庄は名前の腕を引いて座席へ促す。名前は促されるままに、ストンと座席に腰をおろす。
「名前ちゃん、俺……」
「名前、」
そして新庄は座席に座った名前の耳元で何かを言おうとするが、その言葉は足元から聞こえた名前の名を呼ぶ声に遮られる。
「………。」
新庄が声がした方に視線を向けると、そこには灰原が立っている。
新庄は、ジッと灰原を見つめた後に小さく微笑むとまるで"名前を任せた"と言うように小さく頷いてその場を離れる。
「……名前」
そんな新庄の背中を見送った後に、灰原は改めて名前に声をかける。
「……何?」
「しっかりしなさい。工藤君が確認したみたいだけど、亡くなった樹里さんは"本物″よ」
「…え?」
「亡くなった彼女には悪いけど……少なくとも、あなたの彼じゃないから。安心しなさい」
「………そう」
名前は、灰原の言葉を聞いて身体全体の緊張が解けたかのように大きく息をつくと、両手で顔を覆い下を向く。
「……哀、ありがとう」
しばらくして、ゆるりと顔をあげて微笑んだ名前の笑顔は、いつもの名前のもので、それを見た灰原も安心したように小さく息をついた。