「銀翼の魔術師」編
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card.253
「…あれ?なんか耳が変!」
「ああ…俺もだ」
飛行機が離陸してしばらくすると、歩美と元太が耳に触れながら呟く。
「気圧が変わったせいですよ…唾を飲み込めば治りますよ!」
相変わらず物知りな光彦の言葉通り、2人はゴクンッと唾を飲み込む。
「まだ変だよー?」
「治んねーな」
「だったら…鼻をつまんで、息をフンッと吐くんです」
「ただし…急にやっちゃ駄目よ。フラフラする事があるから」
光彦の言葉に続いて、灰原がサラリと注意する。
元太は言われた通り耳抜きをして、耳の違和感が治ったと笑顔で声をあげる。
「私も…!」
歩美も元太に続いて鼻に手を持っていくが、ふいに動きを止める。
「………コナン君、前を向いてて!!」
しかし耳抜きをしようとしたところで、歩美達の様子を見ていたコナンの視線に気付いてそう声をかける。
「あ…ああ?」
コナンは首を傾げながらも言われた通り前を向くと、後ろから"本当だ、治った!″と、歩美の嬉しそうな声がする。
「ふふ…やっぱり女の子ね」
「え?」
不思議そうにしているコナンを横目に、灰原は微笑みながらそう呟く。
「鼻をつまんで息をつめるなんて、あまり素敵な顔じゃないでしょ?異性…特に、好きな人には見せたくないものよ…」
「へぇ…そんなもんか」
コナンは感心したように頷きながら、元太達と笑顔で話す歩美に目を向けた。
---ポーン
離陸してしばらくすると、シートベルト解除可のランプが点灯する。樹里はそれを見て、ベルトを外してから席を立とうとするが、それには気がつかずに小五郎が樹里に声をかける。
「すみません…樹里さん。記念にサインをお願いしたいんですが…」
「ええ…いいですよ」
「しまった!!サインペンを忘れてきた」
ポケットを探りながら小五郎が困ったように眉を寄せていると、後ろからヒョコッとなつきが顔を出す。
「…はい、これどうぞ」
「ありがとう。ふふ、これだからこの子は手放せないのよね…」
なつきからサインペンを受け取ると、樹里は小さく呟きながら、パチリと座席のライトをつけて色紙にサインを書き込んでいく。
「……おっと!」
そんな樹里の横の通路をトイレに向かい歩いていた伴が、機内が揺れたためか僅かにふらついて声をあげる。
「…伴さん、大丈夫?」
「ああ、すまない」
伴は、樹里の座席の肘かけに手をついて身体を支えた事で、何とか転倒するのを免れる。
「………。」
コナンは、そんな伴の身体を支える樹里の指に輝く指輪に注意を向けながら、その光景を眺めていた。
樹里はサインを小五郎に渡した後も何度かトイレに立とうとするが、成沢や新庄が入れ代わり立ち代わりトイレに入ってしまうため、なかなかトイレに入れず眉を寄せる。
---シャッ
成沢がカーテンを開けてトイレから戻ると、樹里はホッと息をついて立ち上がりトイレに入っていく。
「……ふぅ」
そんな姿を見送ったコナンは、肩の力を抜いて小さく息をつく。
「指輪はまだ無事?」
灰原は雑誌に目を向けたまま、隣のコナンに声をかける。
「ああ。だが、油断はならねぇ……ん?」
--シャッ
(やけに早いな…)
コナンが灰原と一言交わしている間にトイレから出て来た樹里の姿に、小さく首を傾げた。
「お飲みものはいかがですか?」
乗客に声をかけながら、ワゴンを押したCAが通路を進んでいく。
「あ…お茶をください」
名前は隣に座る新庄ごしにCAからお茶を受け取ると、鞄から1つ錠剤を取り出してお茶と一緒にゴクリと流し込む。
「体調が悪いのかい?」
「え…ああ、酔い止めです。飛行機が思ったよりに揺れるので、念のためですけど」
心配そうに新庄に声をかけられて、名前は苦笑しながらそう返す。
「そう…なら良かった」
「……ありがとうございます」
名前は笑顔で自分に目線を向ける新庄に、僅かに戸惑いながらも小さく微笑んで言葉を返す。
「確かに今日は結構揺れてるな。飛行機は怖くない?」
「あ、はい。飛行機は平気です」
「そうか。名前ちゃんは北海道へは行ったことあるの?」
「いいえ、初めてです」
「それじゃ…楽しみだね。せっかくの北海道だし…天気予報が外れると良いんだけど…」
「そうですね…」
("名前ちゃん″か…。新庄さんに私の名前言ってあったかしら?)
名前は、アレコレと声をかけてくる新庄に戸惑いつつも、ポツポツと会話を続けていった。