「銀翼の魔術師」編
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「よぉ、博士!」
"新一″は爽やかな笑顔で片手を上げながら、阿笠と灰原の元に近付いてくる。
「あ、あ…哀君、これは話を合わせた方が…?」
「………。」
動揺する阿笠の横で、灰原はジッと"新一″を見つめていた。
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「……何だよ、博士。返事くらいしろよ」
新一はそう言いながら、博士と灰原が座るテーブルの空いている席に腰をおろす。
「あ、ああ…」
「…私達が、工藤君や名前みたいに優しくあなたに話を合わせると思わないでくれる?」
「…あ、哀君!?」
戸惑う阿笠を尻目に、灰原がサラリと言い切る。
「……偽物と分かっている相手との偽りの会話なんて愚の骨頂…時間の無駄だわ」
「………。」
(おー、キッツー…何で名前はこんな子と仲良く出来るんだ…?)
"新一″は、諦めたように小さくため息をつく。
「はは…そんなに冷たくしないでもらえると嬉しいんだけどな」
「……。」
間に挟まれた阿笠は、困ったように灰原と新一を見比べる。
「博士……私、ちょっとこの人と話したいの」
「ん…?あ…ああ、分かった」
阿笠は一瞬きょとんとした後に、言葉の意味が分かったのか、ガタリと立ち上がり二人から離れていく。そんな博士の姿を見送った後、灰原が小さく息をついて口を開く。
「……あなた、」
「……"あなた″じゃなくて、"工藤新一″ね」
灰原の言葉を遮って、ニッコリと笑う新一を灰原はジロリと睨む。
「……"あなた″、今日その姿で来る事…名前に言ったの?」
「…さぁ、どうかな?」
曖昧な新一の返事に、灰原は呆れたようにため息をつく。
「……あなたが思ってる以上に、名前はあなたの事…大事に思ってるわよ」
「え…?」
「さっき…工藤君と私達の前で言った言葉、あなたに聞かせてあげたいわ」
「……は?」
新一は、灰原の言葉に思わずきょとんとする。
(え、何言ったんだ?名前…)
「……何が楽しくて、数ある男の中から犯罪者のあなたをわざわざ選ぶのか知らないけど…」
灰原は頬杖をついて、蘭達と笑い合う名前に目を向ける。
「……。」
"新一″は、そんな灰原の横顔を見つめる。
「……一時の気の迷いかとも思ったけど、工藤君相手にあそこまで言い切るんだし……あの子、どうやら本気みたいだから言うけど…」
「……?」
「あなたが怪盗をやるのにも、事情があるんだろうけど……それでも名前の事、もう少し大切にしても良いと思うわよ」
「え?」
「……自分の恋人が、幼なじみの想い人の姿になって…その幼なじみと笑顔で喋ってる姿なんて、普通は見たくないものよ」
--壊れるわよ、携帯。--
--ああ…本当だ。ちょっとぼんやりしてたわ--
「………。」
「……ま、名前はそういう不満はあなたに言わないんでしょうけど」
灰原はそこまで言って、小さく息をついた後にポツリと呟く。
「どちらにしろ私が口を出す事じゃなかったわね……ごめんなさい」
「哀ちゃんは……」
「あなたに…哀ちゃんって呼ばれる筋合いないんだけど」
灰原は新一にジト目を向けるが、新一はニッと笑って口を開く。
「……"哀ちゃん″みたいな子が、名前の友達で良かったよ。さっきの名前を見つめる横顔…名前ちゃんへの愛に溢れてたもんなぁ~!」
「…っな!?」
灰原はその言葉に、僅かに頬を赤くする。
「……あなた、"怪盗″の時とは違って、意外とふざけた人なのね」
灰原の呆れたような言葉に、"新一″は小さく苦笑する。
「新一ー!!」
「おっと、お呼びだ」
"新一″は、離れた場所で新一の名を呼ぶ蘭に目を向けて立ち上がる。
「俺も…哀ちゃんに1つ言わせてもらおうか」
「……?」
立ち上がった新一は、ふいに真剣な口調になる。
「……俺は………………」
「……………!!」
灰原は耳に響く言葉に小さく目を見開いた後に、口角を上げてニヤリと笑う。
「…言うじゃないの」
「ま…そういう事だから」
「ふふ…今度、本当の姿のあなたと話してみたいわね」
小さく微笑んでそう呟く灰原に、新一は小さく目を見開いた後に少し嬉しそうに笑う。
「……それは光栄ですよ。お嬢さん?」
「……本当、気障ね」
灰原は立ち去っていく新一の背中を見ながら小さく苦笑した。