挿話編
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「……どうしてここにいるのよ?」
園子のオンステージカラオケから解放され、名前はようやく自分の部屋にたどり着いた。
しかし、部屋についてみると何故か我が物顔でソファに座り、テレビを見ている快斗の姿があったのだった。
card.227
「だってさー、せっかくロッジで一晩一緒だったのにさ、名前とゆっくり喋ったの…名探偵が来るまでの数分だったじゃん?」
「…そうね」
「ぜんっぜん足りないから、名前に会うためにあの後すぐに名前の部屋に来たのに全然帰って来ねーし」
「……。」
(その理由の一端は快斗にもあるんだけどな…)
名前は鞄を置くと、涙ぐみながら熱唱する園子の姿を思い出し苦笑しながら快斗の隣に腰を下ろす。
「それで?そもそもどうやって部屋に入ったのよ」
名前はニッコリ笑うと、快斗の顔を覗きこみながら尋ねる。
「えー?それは…ほら…ね、」
「何よ?」
「…愛の力、とか?」
「…馬鹿」
名前は快斗の言葉に呆れたようにため息をつく。
(ま…快斗が相手だったら、どんな強固な鍵がついててもきっと無駄ね)
明らかに不当な方法で部屋に入ったのはわかっているが、文句はないのか名前はそれ以上は特に追及するつもりはないらしい。快斗は、そんな名前の態度に内心安堵しつつ、ふと思い付いた疑問を口にする。
「それで?オメーは、結局何してたんだ?」
「え?」
「あの後、警察のヘリで帰ったんだろ?事情聴取とかはあったんだろうけど、それにしたって何でこんなに帰り遅いんだ?」
「それは…キッドのせいよ」
「え?」
「ふふ、実は園子が……」
名前は、不思議そうにしている快斗に苦笑しながら園子の様子を説明する。
「まじかよ…あんな事件の後だろ?あの子……何て言うか、本当元気だな」
「新一なんて…疲れすぎちゃってキッドを呼べ!なんて私に言って来たわよ」
「あの名探偵がねぇ……そりゃ、疲れるだろうな。あいつ一応病み上がりだし」
快斗は高熱で倒れていたコナンを思い出しながら、呆れたように小さく肩をすくめる。
「それより……」
名前は飲んでいた紅茶を一度テーブルに置いて、快斗をジッと見つめる。
「…な、何だよ?やっぱり勝手に部屋に入ったのはまずかった?」
「え、それは全く。何ならキッドの時の避難先にしてくれてもいいし…合鍵渡そうか?」
「…それは、まぁありがたいけど」
急に真剣な表情になった名前にドキリとした快斗だったが、どうやら不法侵入の件ではないらしい。首を傾げる快斗をチラリと見ながら名前はどこか言いにくそうに口を開く。
「…快斗って、ああいうネットとかメールとかよくやってるの?」
「へ?」
「私には業務連絡みたいなメールしか送って来ないのに…園子とは随分仲良くメールしてたのね」
「え゙、」
快斗は元々の性格なのか、名前に送られて来るメールいえば
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・明日○○に×時集合な!
・俺、仕事あっから明日休むから!
・明日、宿題見せて
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と、用件を伝えるような短文のメールばかりなのだ。少しでも話が長引きそうな時は、すぐに電話をしてくるから、てっきりメールは好きじゃないのかと思っていた。
「付き合う前は、それでも顔文字付きのメールなんか送って来たのにね。園子、土井塔さんとのメールの事嬉しそうに話してたなぁ…」
「……いや、でも…名前だって基本短文だから…それで良いのかと…思って」
「ふーん、だからって違う人とメールするの?」
「スミマセン…」
「…キッドの仕事で、どうしともそれが必要って言うなら私だって文句言わないよ?」
「………。」
「でも…今回は、まぁ相手も園子だったから良いけど。……やっぱり、何か嫌だな…快斗が私の知らない所で、知らない子と仲良く連絡取り合ったりしてたら…」
名前が下を向いてポツリとそう呟くと、快斗は思わずギュッと名前を抱きしめる。
「ごめんな…名前。俺そういうの、あんまり気が回らなくて」
「ううん…結局は、私のただの我が儘だから…」
「いーや!!俺は名前が素直にそう言う事言ってくれるの、すげぇ嬉しいから!!これからも、我慢しないで言ってくれよ……な?」
快斗が名前の顔を覗きこんでそう言うと、名前は照れたように小さく微笑む。
「ありがとう…快斗」
「………あ、ああ」
(可愛いー!このまま食べちゃいたいくらいだぜ、ったく…。俺も頑張ってるよな…本当)
上目遣いで名前に微笑まれた快斗の体温は一気に上昇するが、それをグッと理性で押さえ込む。
(名前ちゃん…こんな見た目と雰囲気なのに、うぶだからなー。あー、まだ我慢!まだ我慢!)
嬉しそうに快斗の腕の中にいる名前の知らない所で、快斗は人知れず葛藤していたのだった。