「奇術愛好家連盟事件」編
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「あら…どうやら向こうは犯人にたどり着いたみたいよ?」
ベランダから園子を囲む参加者達を見ていた名前がポツリと呟く。名前の視線の先では、ちょうど犯人の名前として"田中貴久恵″の名が上げられたところだった。
card.224
「そうみたいだね」
名前の言葉に、隣に並ぶ土井塔もベランダから外の様子を伺う。
「ねぇ…いい加減にあなたもその姿やめたら?」
「…名前ちゃん?」
「……"名前ちゃん?″じゃないわよ」
小さくため息をつく名前に、土井塔は楽しそうにニコニコしながら距離を縮めてくる。
「…ちゃーんと言ってくれないと、分かんねーなあ?」
「……すっかり…"土井塔さん″の態度じゃなくなってるわよ…"黒羽快斗″君?」
名前はクスクスと笑い、わざとらしくそう言いながら首を傾げる。
---バサッ…
「残念…名前嬢。今の私は……」
「"怪盗キッド″……だったわね」
白い衣を靡かせて目の前に姿を現したキッドを見て、名前はニコリと微笑んだ。
「…さすが愛しの名前ちゃん!!俺の正体分かってたんだね」
「怪盗キッドの姿をしたままで…素のあなたと喋るの初めてだけど……凄い違和感ね」
キッドの姿のままで、いつものようなお調子ものの快斗の口調で話す姿はとても違和感がある。
「そうー?」
「…そうよ。いつも怪盗キッドの時は、嘘みたいに気障で紳士じゃない」
名前はそう言いながらキッドの隣に並んで、キッドの肩に軽くもたれかかる。
「あれ、名前ちゃんからこういう事するの珍しいな。どうした?」
「殺人事件の現場にいたから、さすがに疲れたわ。最初は動機も分からないし、無差別殺人かもって思ったから…」
「……そっか、お疲れさん。」
(そういや、ずっと名探偵の幼なじみの心配してたもんな)
キッドは自分にもたれかかる名前の肩に手をまわして、労るようにポンポンと肩を撫でる。
キッドは、土井塔として見ていた名前が、園子や蘭を気にかけて然り気無く彼女たちのそばにいたのを思い出す。
「…それより、仮名が"怪盗キッド″のアナグラムなんて…きっと新一も気付いてるわよ?」
「良いんだよ!今回は悪ぃ事してねぇし。それより、名前が俺の事に気付いたのって…その名前からだけ?」
「え?」
「俺、あーんなに一生懸命名前ちゃんを気にかけてたのになー」
怪盗キッドの姿の快斗は、その姿に似合わず分かりやすく拗ねたようにため息をつく。
「…ふふ、分かってるわよ。パーカーも貸してくれたり、私の事ずっと守ってくれてたんでしょ?ありがとう」
「可愛い名前ちゃんのためだから当然だけどな。あー、でもやっぱり変装中に名前が近くにいると…いろいろ我慢するのしんどい」
「我慢?」
「だってさー…名前ちゃんが近くにいると、今回みたいにいろいろ気にかけちゃって完全に他人のふりなんか出来ねぇよ。……ま、他人の心配ばっかりして、危なっかしいからほっとけないってのもあるけど」
「そうかしら…?」
名前の頭をポンッと叩きながらキッドは苦笑するが、名前はそんな自覚がないのか首を傾げている。
「あ、でも良い事もあったかな」
「……?」
「名前ちゃんってば…あんな風に俺の事をみんなの前で褒めてくれたり………そういや、財閥のお嬢さんにも嫉妬してたよな。俺、あの時はニヤけるの我慢するの大変だったんだぜ?」
ニヤリと笑い名前の顔を覗きこむキッドに、名前は小さく息をのむ。
--そんなんじゃ、京極さんに振られるわよ--
--私は…尊敬しているというより、期待している人ならいますけど--
--…私の知り合いに、奇術師を目指している人がいるので。…私は彼なら世界一にもなれると思っています--
名前は、土井塔の前で自分が口にした言葉を思い出して、顔にどんどん熱が集まるのを感じる。
「……へ、変装中に聞いた話をそうやって持ち出すの反則よ!」
名前は、キッドから身体を離すとふいっと逸らして恥ずかしそうに小声で呟く。
「本当にかーわいい」
キッドは恥ずかしさから視線を合わせない名前の腕を引いて、再び自分の腕の中にギュッと閉じ込めると、からかうような口調とは裏腹に、目を細めて愛おしそうに名前を見つめている。
「…もう!」
名前はそんな視線には気付かないまま、赤い顔を見られないようにとギュッ胸に顔を埋めながら小さく息をつく。
「あら…」
「んー、どうした?」
「荒さん達…みんなこっちを見てるわよ」
ベランダに背中を向けるキッドの肩越しに、僅かに見える裏庭が視界に入ると、そこにはこちらに視線を向ける荒達の姿が見える。
"怪盗キッド"と抱きあっている現在の状況を思い出し、名前は少し慌てて離れようとするが、キッドは名前を抱きしめたままチラリと裏庭の様子を確認する。
「心配しなくても、向こうからじゃ今は俺の背中しか見えねーとおもうぜ。まあ、あの感じだと名探偵が俺の事をバラしたんじゃねぇか?」
---ガチャ
そんな話をしている2人の後ろで、ふいに部屋の扉が開く。
突然の訪問者に、さすがのキッドも名前からそっと身体を離して扉の方へと視線を向けた。