「奇術愛好家連盟事件」編
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「浜野さん!!」
「大丈夫ですかーっ!?」
ザクザクと雪を踏み締め、浜野の元へ皆が駆け出す。
「来るなっ!!」
「「え…?」」
その中でも、一番に浜野の元にたどり着いた土井塔は浜野の首元に触れると、後ろを走る荒達を大声で制止する。
「…来ても無駄だ。もう死んでるよ…」
card.208
「そ…そんな…」
「それに、これ以上現場を荒らしたくない」
「げ…現場?」
土井塔の言葉に黒田が首を傾げるが、その黒田の言葉に荒の足元でコナンが口を開く。
「…見て分からない?死体はロッジから10m以上離れてるし…死体の周りの雪には、今駆け寄ったあの人の足跡しか残ってないよ……」
「そうね…」
小さく頷きながらコナンの横に立ち、浜野の遺体に目を向ける名前が、コナンの言葉を引き継いで口を開く。
「…これは翼を持たない私達人間には到底なし得ない犯罪…"不可能犯罪″よ…」
「ふ…不可能犯罪?」
「確かにそうね…こんな広い裏庭の真ん中に、足跡を雪に残さずに人間が移動することなんで出来ないわ…」
田中は小さく眉を寄せる。
「で…でも何で浜野さんが!?」
「理由はまだ分からないけど…今言えるのは、死因が絞殺だという事。そしてなんらかの方法で、ここに運んで来たであろうという事だけさ…」
遺体の一番側にいる土井塔が浜野の首元を確認しながら呟く。
「で…でも、ここには私達しかいないわよ?」
黒田が戸惑ったように辺りを見渡す。
「…容疑者なら他にももう1人いますよ」
「…え?」
ふいに口を開いた須鎌を皆怪訝そうに見つめる。
「その人があらかじめここに来て、どこかに潜んでいたという事も十分考えられます…」
「だ…誰よ?その人って…」
「もう忘れたんですか?おかしな人達だ…今夜このロッジに泊まりに来る予定だった"奇術愛好家連盟″のメンバーの1人……"影法師″さんですよ」
須鎌の言葉が、ヒュォォと吹きつける冷たい風に乗って響く。
「じゃあ、なーに!?今もその人がこの近くで命を狙っているかもしれないってわけ?」
「…冗談じゃないわ!」
突然声をあげた田中が、くるりと踵を返してザッザッザッと雪を踏み付けながらロッジに戻る。
「た…田中さん?」
「私は今すぐ帰るわ!」
「帰れないよ…」
スタスタと足を進める田中の背中に、コナンがポツリと呟く。
「吊橋は誰かに燃やされちゃったよ。僕がここに戻って来るときにね…」
「え…そうなの?」
名前はコナンの言葉に目を丸くする。
「おいおい…あの橋が落ちたら、麓に降りられないじゃないか!!まさか電話線を切ったのも犯人か!?」
「ま、まだ…携帯電話があるわ!それで警察に来てもらって……」
「無理だよ…」
田中の提案を土井塔が静かに否定する。
「ここは携帯電話の圏外…。」
「つまり…私達は、犯人によって完全に外界と隔離されてしまったのね」
「「そ…そんな…」」
名前が呟いた言葉に呆然として立ち尽くす参加者達。
「…名前」
そんな中、コナンがそっと名前の足元に近付いて来て小さな声で話し掛ける。
「なに?」
「後で俺がいない間と、寝ていた間にあった事を詳しく教えろ」
「…はいはい、体調は大丈夫なの?」
「ああ、寝たらだいぶ良くなった」
「それは良かった」
名前は笑顔でそう返しながら、安堵の息をつく。不測の事態とは言っても、新一がそばにいると安心感が違うな…と、改めて言われると感じるのだった。