「漆黒の星」編
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「…おい!女の子がボートの中で寝てるぞ!!」
キッドを捜索していた警官は、吊るされている救命ボートを覗き込みながらまわりの警官達に声をかける。
「とにかく…デッキの上に降ろそう!」
「あーっ!!ちょっと待ったぁ!」
救命ボートの中の人物を引き上げようとしている警官に、蘭の衣類を抱えながらコナンが顔を赤くして駆けて来る。
このままでは何も身に纏っていない蘭の姿を、多くの警官に見られてしまう。しかし、コナンの必死の制止も間に合わず警官達はボートの中にいる人物を引き上げてしまう。
「……え?」
しかし、ボートの中で寝ていた人物……蘭はコナンの心配とは裏腹にしっかりとドレスを身に纏っている。
「あれ?………ん?」
コナンが自分が持つドレスと同じドレスを着た蘭の姿に交互に視線を向けていると、蘭の胸元に1枚のカードが貼られているのに気付く。
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先日お預けいただいた
この真紅のドレス
とても良くお似合いですよ
ある時はクリーニング屋の
怪盗キッド
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「……あのヤロォ、」
コナンは持っていたドレスをバサリと手から落とし、脱力して小さく呟いた。
card.172
「…名前。お前キッド絡みなのに、今回は珍しく大人しくしてたじゃねーか?どこにいたんだよ?」
蘭の事情聴取の間、コナン達は片付けが始まり始めている会場の隅の椅子に腰を降ろしている。
「…何よ、その言い方」
「あん?…別に何にも間違ってねェだろ」
名前は、自分にジト目を向けてくるコナンにため息をつく。
「今日は体調が悪くて…三船さんが中森警部に頼んで休む部屋を用意してくれたから、そこで休んでたのよ」
「…お前やっぱり体調悪かったのかよ」
「……少しね」
コナンは呆れたように盛大にため息をつくが、名前はそんなコナンから視線をそらす。
「それにしても…あの三船さんが、ねぇ?」
「何よ?」
「俺はオメーには、ああいうしっかりした…大人の男が良いと思うんだがな」
「…何の話よ」
「だーかーら、あんな気障な怪盗なんか………」
「…名前!」
コナンの言葉を遮るように、噂の張本人である三船が少し離れたところから名前の名を呼ぶ。
「…ほら、呼んでるぞ」
コナンのわざとらしい台詞を無視して名前は立ち上がり、三船の元に向かう。
「三船さん、今日はありがとうございました」
「いや…あの怪盗、どうやったのか知らねーがうまく逃げたみたいだな」
「…ええ」
三船の言葉に名前は困ったように曖昧に微笑む。
「………ま、今回はそれで良しとするさ」
「?」
「そういや、机に置いてあった"あれ″お前が持ってるんだろ?」
「え…ああ、これ?」
名前は鞄の中から小さなカードを取り出す。それは、三船拓也の連絡先が記された名刺だった。
「……言ったろ?何か困ったら言えって。あれ今後も有効だから」
「……え、」
「もうオメーの番号は、あの鈴木財閥のお嬢ちゃんから聞いといたからよ」
「………。」
(園子…勝手に…)
「…三船さん、あなたモテそうですね」
「…何でだ?」
「…いや、見かけによらず優しいので」
「…お前馬鹿か?俺は、普通の女にはこんな事しねェよ」
「……そう言われても、私は応えられませんよ」
「ふっ…ストレートだな。ま、構わねぇよ。俺は見返りは求めないタイプだから」
「そう…ですか」
「お、あのお嬢ちゃん事情聴取終わったみたいだぜ」
三船が名前の後ろに視線を向けると、中森警部達と一緒に蘭が戻って来たところだった。
「じゃ…またな」
三船は小さく笑ってそう言いながら、名前の頭をポンッと叩くと、名前の返事も待たずにアッサリと会場を出ていく。
名前は、そんな三船の背中を小さく微笑みを浮かべて見送った。