「漆黒の星」編
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「……私は好きだよ……快斗…」
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「…………え?」
(今、何て言った…こいつ)
"怪盗キッド″である快斗は名前の言葉に、一気に心拍数が上がり顔に熱が集まる。
しかし突然の出来事に動揺してしまい、さすがのキッドも声が出ずに口ごもってしまう。
名前は気まずさからか、そんなキッドから目を逸らす。そして、キッドから何の言葉も返ってこない事に小さくため息をついた。
card.171
----コンコン
静まり返った室内に突然響いたノック音。名前とキッドは、ハッと扉に視線を向ける。
「すみませーん!警察ですが室内の確認をさせてください」
「……ッチ」
思いがけない来訪者に、蘭の姿をしたままキッドは小さく舌打ちする。
「……。」
名前は両頬に僅かに残る涙をグイッと拭った後に、大きく1つ深呼吸する。
「キッドは奥に隠れてて」
「…え?」
「すみませーん!扉、開けさせてもらいますよ!?」
警官の急かす声に、名前は眉を寄せながら気付いたがの背中を押す。
「良いから、早く…!ここに引き入れたのは私なんだから、責任は取るわ」
キッドは促されるままに、クローゼットの影に隠れる。名前はそれを確認すると、早足で部屋の扉に向かう。
「……はい?」
名前は小さく返事を返しながら、扉を開けて廊下の外に顔だけ出して様子を伺う。
「警察ですが…ここに不審人物は来ませんでしたか?」
「来ていませんけど?」
「念のため部屋の中を見せていただいても?」
「…勘弁してもらえませんか?私、ちょっと体調が悪くて休んでたんです。まだ気持ちが悪くて…中森警部にも許可もらってるはずなんですけど?」
「しかし、まだ船内から怪盗キッドが見付かっていない状況なので」
「……そうですか」
(まいったわね…)
名前は予想以上に食い下がる警官の態度に内心焦りを感じながら、小さくため息をつく。
「名前…どうかしたか?」
そんな時ふいに名前の名を呼ぶ声がして、名前と警官は声がした方にくるりと視線を向ける。
「三船さん?」
そこには怪訝そうに警官を睨みつけている三船の姿。
「…こいつらは?」
三船はチラリと警官に目を向けた後に、名前に尋ねる。
「怪盗キッドの事を探してるみたいで……部屋の中を見せてほしいって言うんですけど」
「……ふぅん」
三船は名前の言葉を聞いて小さく相槌を打つと、警官に視線を向ける。
「……こいつは体調が悪ぃんだけど?」
「しかし…」
「事前にあんたらの上司に許可も得てる。警察は体調を崩してる一般市民への配慮も出来ないとはな…」
そう言いながら、三船はグイッと名前の肩を抱いて引き寄せる。
「こいつ…名前は、俺…三船電子工業の三船拓也の大事な友人なんだ……それでも、まだ疑うって言うのか?もちろん俺ら二人を怪しんでるなら、この場で頬でも何でも引っ張ってもらって構わねーぜ」
その言葉と共に、20代とは思えない眼光で三船にジロリと睨まれると警官は思わず言葉につまる。
「も…もう結構です。もし不審人物を見つけたらちゃんと知らせてくださいよ」
そして警官は眉を寄せながら小さくため息をつくと、投げやりにそう呟いて立ち去っていく。
「三船さん、ありがとうございます」
警官の背中を見送って安堵の息をついた名前は、三船に向かって頭を下げる。
「…いや、構わないが。……お前は大丈夫か?」
三船はそんな名前の顔を見て、僅かに眉を潜める。
「え?」
「あー……まぁ、良い。さっきに比べて顔色も良いしもう大丈夫そうだな。そろそろ会場に戻れそうか?」
「…はい。」
「……俺はちょっと自分の部屋に寄ってから戻るから、先に戻りな」
「…分かりました」
名前はチラリと室内に目を向けるが、怪しまれないようにあえて三船の言葉に反論せずに頷く。
「…そういえば、怪盗キッドはどこに行ったんだろうな?」
そんな時、三船は僅かに声を張り上げるようにしてそう呟きながら辺りを見渡す。
「……さぁ?あの怪盗の事だから、もうとっくに船外に逃げ去ったんじゃないかしら?」
名前は一瞬室内に目を向けながらも、平然とそう返す。
そして名前はもう1度三船に礼を言ってから、踵を返して会場に向かって行った。三船はその後ろ姿を見送った後に、名前がいた部屋に足を踏み入れる。
「……。」
チラリとテーブルの上を確認し、自分が置いて行ったカードがないことに僅かに口角を上げる。そして、部屋の入り口に立ったままぐるりと一周部屋を見渡す。
「……何にもねぇはずの部屋を見せるのを、あそこまで拒むのは不自然だよな」
三船は誰かに語りかけるように呟く。
「……あんなに目を赤くした顔になるまでして、守るような相手なのかは疑問だな。…女を泣かせる野郎にろくな奴はいねぇからなぁ」
三船は誰もいない室内に向かってそう呟くと、それ以上部屋の奥へと足を踏み入れることはせずに、扉を開けて出て行った。
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三船の足音が遠ざかるのを確認してから、蘭の姿をしたキッドはスッと室内に姿を見せる。
「くそっ、あんにゃろ…」
キッドは名前に対する三船の態度に、何度も飛び出したくなる気持ちを押さえながら、クローゼットの影でやきもきしていたのだ。
今の三船の独り言も、室内の何処かに自分がいたのが分かっていてあえて言った台詞だろう。
「…くそっ」
キッドは忌々し気に小さく呟くが、何にせよ名前と三船の計らいで警官はいなくなった。
キッドは苛々した気持ちを押さえ付けながら、船からの脱出方法を考える事に頭を切り替えていったのだった。