「漆黒の星」編
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「ハァ…ハァ…」
(名探偵は…幼なじみの彼女の方を優先するだろうから良いとして。…くそっ!!上空からはヘリが見張ってやがる。とにかく何とか船から脱出して、ジィちゃんと落ち合うしかねェな…)
機関室から出たキッドは、船内の警官に注意しながらも脱出方法を考えながら走っていた。
----グイッ、バタン!
「……えっ!?」
しかしふいに客室の扉が開いて、キッドは腕をつかまれる。突然の事に避けきれず、気付いた時には部屋の中に引き込まれていた。
card.170
「……!!名前?どうしたの?」
薄暗い室内で自分の腕を掴む手を振りほどこうとしたキッドだったが、その腕を掴む相手が名前だと分かり目を丸くする。
「馬鹿ね……今さら蘭のふりなんかしないでよ。だいたいその格好どうしたの?」
「……。」
(やはり…名前にも気付かれてたか。)
--貴方は今ここにいなきゃ駄目なんじゃない?--
体調の悪い名前に付き添おうとした時の名前の言葉を思い出し、キッドは心の中で小さくため息をつく。そもそも機関室で時間稼ぎにドレスは脱ぎ捨ててしまったため、今は蘭の顔をしているものの、服装は場違いなTシャツ姿である。
「……名前嬢、体調はもう良いのですか?」
「………。」
ひとまず"怪盗キッド″として声をかけると、名前が肩をピクリと震わせて、キッドの腕を掴む力が強める。
「名前嬢?あまり無理をしては…」
「…いつまでそうするつもり?」
キッドの言葉を遮るように、小さくポツリと下を向いたまま名前が呟く。
「……名前嬢?」
「いつまでそうやって誤魔化すの?」
バッと顔をあげてそう詰め寄る名前の瞳は、僅かに潤んでいるようにも見える。
「………。」
キッドは小さく口を開くが、何と答えれば良いか分からず言葉が続かない。
「あなたは……あなたは"黒羽快斗″なんじゃないの?」
「ーっ!」
「黒羽快斗は…私に、あんなに期待させるような態度や言葉をくれるのに…その度に私は嬉しいって…思ってるのに」
「…名前…嬢」
「1番大切な事は、いつまでたっても秘密のままで…いつまでたっても…」
「……。」
名前の瞳からはポロポロと涙が溢れ出し、キッドは小さく息をのむ。
「キッドは……ロイヤル・エクスプレスの時も…エッグの時もあんなに危険な目に合ってるのに。私は"快斗″の心配をする事が出来ない……会いたくても会えない、連絡も取れないような"怪盗キッド″の事をずーっと心配してなきゃならない」
「………。」
「今日…だって…偽物だったとしても、あんな…血を流して倒れるキッドを…私は見たくない」
名前が涙を流し息を詰まらせながら話す姿に、キッドは目を丸くする。
「……私達の関係って何?あなたに…快斗が、危険な目に合ってても…怪盗キッドは快斗じゃないって思って私はいつまで知らないふりをしなきゃならないの?」
「………。」
「学校で会ってる時だけ、楽しく過ごして…一番大事なことは知らないフリをするような、形だけの関係なんていらない」
「名前……」
「快斗が、私の事どう思ってるのか分からないけど……私は……」
「………。」
2人の間に、僅かな沈黙が流れる。
--だから…こうやって男と2人で話したりするのは、俺だけにして--
--名前からの電話には、必ず出るからよ。それで、すぐ駆け付けてやるよ!--
名前の脳裏には快斗との思い出が次々と蘇る。そして小さく息をはいた後にキッドを真っ直ぐ見つめる。
「……私は好きだよ……快斗…」
「ーっ!!」
「私は……"好きな人″の事を心配することも出来ない関係なんて嫌だから」