「漆黒の星」編
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『こちら3番機!!船外に逃亡する不審人物は依然見当たりません』
バババ…と、音を立てて上空を旋回しているヘリから無線が入る。
「…よぉし!!そのまま監視を続けろ!」
「船内にいる警官は各階に分かれて、キッドの発見および拘束に全力を尽くせ!顔見知りだといって気を許すなよ!変装は奴の十八番だからなっ!」
茶木と中森は無線に向かって大声で怒鳴りちらし、怪盗キッド確保に尽力していた。
card.169
「そう…お前が蘭とすり替ったのは、蘭が俺を探しにパーティー会場に出た時だ…見事だぜ?全く気付かなかったよ」
「……。」
「…まんまと蘭に成り済ましたお前は、カードのメッセージで客を動揺させた上に、煙りをふいて破裂する黒真珠をバラまいてパニックに陥れた……そして、その混乱に乗じて本物の"漆黒の星″を奪い取ったんだ。奥さんの身体を支えるふりをしてな…」
「……。」
「あんな花火を用意してたって事は、お前知ってたんだろ?奥さんが模造真珠を大量に作らせていた事を…」
「や、やーねー。冗談はやめてよコナン君。そんなに疑うなら、警察の人をここに呼んで…」
蘭はそう言いながら、壁に備え付けられていた船内用の電話にスッと手を伸ばす。
---ドカッ!!
しかし蘭の真横にあった電話にサッカーボールが直撃し電話が破壊される。突然、自分のすぐ脇に飛んで来たサッカーボールと壊れた電話を見て、蘭は目を丸くし唖然とする。
「ふん…警官に紛れ込んで姿をくらませるつもりなんだろうが、そうはさせないぜ」
「………。」
「言ったよな?遠慮なく俺はオメーを捕まえてやるって」
「……。」
「そう優れた芸術家のほとんどは死んでから名を馳せる…お前を巨匠にしてやるよ。監獄という墓場に入れてな」
「…ふ、まいったよ。降参だ。この真珠は諦める」
蘭の姿のまま素に戻ったキッドは、ハンカチに包んだ真珠をポイッとコナンに投げる。
「奥さんに伝えてくれ…パーティーを台なしにして悪かったってな」
コナンはパシッと真珠を受け取りながら「何を今さら…」と、忌々しそうに呟く。
「…オメーは、名前だけじゃなくて蘭にまで手を出しやがって!」
コナンはジロリと未だに蘭の姿をしたキッドを睨む。
「…ふ。奥さんに近付くには知り合いの方が都合が良いだろ?……ま、そのお陰で面白いもんも見れたしな」
「…面白いもの?」
--あ、合言葉よね…何が良いかしらね。--
---……違う?--
--かい……危ないっ!!--
(俺の事を心配してくれる名前の姿を見てるのは…後ろめたかったが、やっぱり悪ぃ気はしねぇな)
キッドはパーティーでの出来事を思い返して、ニヤリと口元に笑みを浮かべる。
「それにしても…この俺の完璧な変装とは言え、"俺″が偽物だってのに気付くのが遅いんじゃねーか?名探偵」
「……はあ?」
「あの子はすぐに気づいてくれたぜ?」
「ー!!」
「真田が偽物のキッドだって事にな」
「てめぇ……」
(そういや、こいつ蘭の姿でずっと名前の側に…!)
「あの子と違って"愛"が…足りねぇんじゃねぇのか?名探偵」
「ふっ…ざけんな!!名前がオメー相手に愛なんて持っててたまるかよっ!!」
キッドの挑発に思いっきり怒鳴るコナンを尻目に、キッドは冷静に言葉を続ける。
「あ…そうそう。この服借りて救命ボートに眠らせてる女の子。早く行ってやらねーと風邪ひいちまうぜ?」
「え?」
「俺は"完璧主義者″なんでね!」
スルリとドレスの下から下着を引っ張りコナンに見せ付けるようにウィンクするキッド。それを見たコナンは驚きで目を見開きながらも、僅かに頬を染める。
--カッ!!
その隙にキッドは素早くゴーグルをかけて、自分とコナンの間に閃光弾を投げつける。
「くそっ!閃光弾!?」
コナンの目が一瞬眩んでいる隙に、タタタタ…と、キッドが機関室から逃げていく。
「逃がすか………っ!!」
コナンもすぐ後を追おうとするが、キッドが脱ぎ捨てていった蘭のドレスや下着をあちこちに散らばっているのを見て、コナンは足を止める。
「………。」
--風邪ひいちまうぜ?--
「くそっー!!あの野郎覚えてろよ!!」
コナンはキッドを追うのを諦め、蘭の衣類をかき集めて救命ボートに向かうのだった。