「漆黒の星」編
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(嘘、大勢の前でこんなに目立って大丈夫なの?)
名前は眉を潜めながら、ジッとキッドの姿を見上げる。
(…あれ?だけど…あのキッド何か…)
「……違う?」
無意識なのか、小さく呟かれた名前の言葉に、蘭はチラリと名前の横顔を見つめた。
card.163
「ふふふ…合言葉なんて無駄ですよ」
「何っ!?」
キッドの言葉に中森が大きく反応する。
「すでに…"漆黒の星″は私の手の中だ…」
その言葉と共にキッドが翳した右手には"漆黒の星″。
(ばっ馬鹿な…!?)
コナンはそれを見て驚愕の表情を浮かべる。
「わーっ!すごーい!」
園子が怪盗キッドの登場に、興奮したように頬を僅かに赤らめながら声をあげる。しかし、その横で園子の母が優雅に微笑んで口を開く。
「おやおや…困った泥棒さんだ事…ああいう悪戯っ子には…お仕置きしてあげなくちゃ」
(え…?)
園子の母が不穏な言葉と共に、ハンドバッグから取り出したのはなんと拳銃。
それを見た名前は目を見開く。そして、その銃口が真っ直ぐキッドに向けられたのを見て、名前の身体からサッと血の気が引く。
「かい……危ないっ!」
名前は思わず声をあげて一歩前に足を踏み出すが、それをグッと腕を捕まれて引き止められる。
「名前…危ないから」
「ーっ、蘭」
名前が引き留められた事に焦りながら振り返ると、そこには真剣な顔をした蘭。
---パアンッ!パアンッ!
「!?」
背後から聞こえた銃声に名前は目を見開いて振り返る。そこには白い衣を血に染めながら落下するキッドの姿。
--ドシャァン!!
「……うそ、」
撃たれたためかキッドが成す統べなく落下していく姿を、名前は呆然と見つめる。
「マ、ママ?」
園子も自分の母親の信じられない行動に目を見開くが、園子の母はわざとらしくフッと銃口から立つ煙りを吹いて見せる。
--パッ!
ふいに復旧した会場の照明。
会場の客達が視線を向ける先には、血を流して倒れる怪盗キッドの姿。それを見た客達の中からは、甲高い悲鳴が上がる。
「あ…あんた、何て事を…!」
「心配無用ですわ。警部さん…だって彼はまだ生きてますもの」
「…え?」
園子の母の言葉を合図に、倒れていたキッドがむくりと起き上がり、平然と園子の母のもとに向かう。
「そう…彼は、この余興のために私が雇った天才奇術師…"真田一三君″ですわ!!」
園子の母の横に並び、園子の母に紹介されたまじしゃんの真田は、シルクハットを取ってニコリと笑みを浮かべる。
「さぁ!皆さん…怪盗キッドの哀れな末路を演じてくれた彼に盛大な拍手を!」
「おーっ!!」
---パチパチパチ!
「……。」
響き渡る歓声と拍手がやけに遠くに感じる。
(まるで自分の足元が抜けそうな感覚…)
名前は、僅かに冷汗の浮かんだ額に手をあてて張り付いた前髪を掻き上げる。
(……私は何を恐れているのかしら)
名前はにこやかに笑い合う会場の乗客の中で、1人眉を寄せたまま赤く染まったキッドの衣装を見に纏い、乗客に笑顔を向ける真田を見つめていた。