「世紀末の魔術師」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
--俺は、あいつのあんな姿初めて見た。--
名探偵に言われた言葉が胸に突き刺さった。
--誤魔化すんじゃねェ!!……オメーのせいだって言ってんだ!!--
「名探偵の言う通り…俺のせいなんだろうな」
快斗は空を見上げて小さくため息をついた。
card.154
--……知り合いと、連絡がとれなくて--
東京に向かう船の上で垣間見た、名前の脆さとその不安そうな表情を思い出し、快斗はギュッと拳を握りしめる。
「全ては俺が原因か…」
あの時は不謹慎ながらも、どこか心配されて嬉しい気持ちを感じた自分だったが、今思えばそんな甘ったれた自分の考えに嫌気がさす。
--行けよ…"今日だけは″俺は止めねェ…--
あの名探偵にあそこまで言わせるほど、名前を追い詰めたのは他の誰でもない自分なのだ。
自分が何よりも大切な、いつの間にか誰よりも愛していると自信を持って言えるほどの存在になっていた相手を…誰よりも悲しませているのは自分なのだ。
「…………ふっ」
自分の不甲斐なさに、快斗は小さく息をはいて足を止める。
「……。」
頭上を見上げると、傘ごしに名前の部屋が見える。
しかし明かりがついていないように見えるその部屋の様子に、快斗は僅かに眉を潜める。
「戻るなら…今、だな」
名前を危険に巻き込みたくないなら、これ以上この馬鹿な罪人のために名前を苦しめたくないのなら、戻るべきなのかもしれない。
これ以上関わるべきではないのかもしれない。
「…戻れねーよ、」
快斗は自嘲気味に呟いて携帯を取り出す。
----プルルル…
呼び出し音に耳を傾けながら、ジッと名前の部屋を見上げる。
例え、いつか自分が自分の犯してきた罪に飲み込まれる時が来ても…例え、今のような穏やかな時間が長くは続かないとしても…。
『……もしもし?』
俺は、もうお前を諦める事は出来ない。
「よぉ、名前か?」
また1つ、運命の歯車は小さく動き出した。