「世紀末の魔術師」編
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ポツ…ポツと、窓に吹き付ける雨を見て、名前は小さくため息をつく。
「…月、見えなくなっちゃった」
名前の小さな呟きは、月明かりの途絶えた暗い部屋に響いた。
card.153
---ピリピリ…
その時、突然鳴り響いた着信音に名前はハッと携帯を手に取る。
「………?」
そこには、見覚えのない番号が表示されている。名前は僅かに戸惑いながらも通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
『よぉ、名前か?』
その声が耳に響いた途端、名前は世界中から空気が失われたのではないかという感覚に陥るほど息がつまり、呼吸が出来なくなる。
「か…い、と…?」
ようやく搾り出した言葉に、耳元からはふっと軽い笑いがもれる。
『何だよ?どうかしたか?』
「な…だって…」
何から聞けば良いのか分からず、次の言葉が出てこない。
『悪ぃな、携帯水没させちまってさ…修理に出したり、結局直らなくて買い替えたりしてたら時間かかっちまってさ』
何事もないように話始める快斗に、名前は呆然としてただ快斗の言葉に耳を傾ける。
『でも喜べよ?お前が新しい携帯で初めてかけた相手だぜ!』
名前の気持ちを知ってか知らずか、いつもの調子で呑気に笑いながら話す快斗。
名前はそんな快斗の声を聞いていると、今まで不安と恐怖で凍りついていた心がじわりと溶け出すように胸が暖かくなるのを感じる。
楽しそうに喋りつづける快斗の言葉を遮り、名前はゆっくりと口を開く。
「かい、と……」
『ん?』
「快斗」
『何だよ、どうした?』
「快斗」
『…名前?』
「…会いたい」
消え入りそうに、それでいてハッキリと呟かれた名前の言葉に快斗は小さく息をのむ。
『…実はさ、』
「…?」
『来てるんだ………お前のマンションまで』
「……え、」
名前はその言葉を聞いた途端に、ガタンッと立ち上がりベランダに乗り出すようにして飛び出して下を見下ろす。
「か…いと」
遥か眼下に見える傘をさした人影に名前は小さく息をのむ。
携帯から聞こえる快斗の言葉を無視して、名前は携帯をそのまま部屋に放り出して飛び出していく。
「……ハァ、ハァ」
エレベーター待つのももどかしく、名前は何階分もある階段を飛び降りるようにして駆け降りていく。
息を切らしながらマンションのエントランスを駆け抜け、勢いよく外に飛び出す。
「快斗……!!」
そこには、ずっと待ち焦がれた人物の姿があった。