「世紀末の魔術師」編
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「思ったより元気そうじゃない?」
ふいに足元から聞こえてきた声に、名前は視線を下に落とす。
そこには、小学生らしからぬ美しい笑みを浮かべた灰原が立っていた。
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「工藤君が、あなたが落ち込んでるって言ってたけど違ったの?」
名前は、その言葉に小さく目を見開く。
「…新一は…本当にお節介」
名前は小さく苦笑して呟きながら、髪を掻き上げる。視線の先で、当の本人は阿笠と何やらコソコソ話をしている。自分も蘭から疑われているくせに、名前に気をまわしているはずではないのだ。
「それで…大丈夫なの?」
「んー、…大丈夫じゃないわ」
名前の思いがけない返事に、灰原は目を見開く。
いつも滅多な事では弱音を吐いたりしない名前の口から出たその言葉は…初めて聞く言葉かもしれなかった。
「名前…」
「…哀にはゆっくり聞いてもらいたいけど、残念。そんな時間ないみたいね」
名前が自分たちの後ろに目を向けると、遅れてきた乾が到着したため、みんなで城に入るところだった。
「……ま、帰ったら聞いてあげるから頑張って来なさい」
名前は灰原に小さく微笑むと、城に向かって歩き出す。灰原はそんな名前の背中を見送ると、博士の側にいるコナンの元に近付いていく。
「名前の事…とりあえず私が様子を見てみるわ」
「ああ…悪ぃな」
「用心する事ね…スコーピオンは意外と身近にいるかもよ…」
「ああ、分かってる」
親密そうに話をするコナンと灰原の姿を、蘭が悲しそうに見つめていた事には誰も気付かなかった。
城に入った小五郎は、執事の沢部に子供達が入り込まないように入り口の鍵を閉めるように依頼する。
しかし、外にいる子供達はそんな事は気にせずに、他に城内へ入れる入り口があるはずだと城の庭をかけまわっている。
「あーっ!ダメです!ここも鍵がかかっていますよ」
光彦達が城の裏側にある扉を見付けて確認するが、どこもしっかりと施錠されており悔し気にため息をつく。
そんな中、灰原がふと視界に入った階段下に見える小さな塔に向かっていく。
「おーい、哀君!一体どこに行くんじゃ?」
「ちょっとあの塔を見てくるだけよ」
そんな灰原の後を、歩美達は楽しそうに走って追いかけて行く。元太が灰原を追い越して一番に塔の入口に手をかける。
「おっ!開くぞ……あれ?何だよ、この部屋何にもねーぞ!!」
元太がつまらなそうに呟きながら塔に入る。塔の中は小さな部屋があるだけで、他に繋がる扉などは見当たらない。子供達が全員塔の中に入りきったところで、やっと追い付いた阿笠が息を切らしながら階段を降りて来る。
「ハァ、ハァ…わぁっ!!」
息の乱れている阿笠が一息つこうと塔の脇の壁に寄り掛かると、1つの壁の煉瓦がボコッと外れる。
「「「うわぁぁ!!」」」
すると何かの仕掛けが作動したのか、歩美達が立っていた塔の床が突然ガコッと開く。そして灰原達は、滑り台のようになった床下にザーッと滑り落ちていく。
「た…大変じゃぁ!!」
阿笠は塔の入口から子ども達が全員滑り落ちてしまった穴を覗き込み、1人で呆然と呟いた。