「世紀末の魔術師」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
名前は、平次が指をさした方向をひたすら進んでいく。
(さすがに…もうキッドも新一の姿も見えないわね)
「………ん?」
見失ってしまった2人を追う途中に、歩道橋の上に不審な人影を捉えたが、名前は小さく首を傾げただけでそのままバイクを走らせて行った。
card.117
バイクを走らせてたどり着いたのは、人気のない真っ暗な港だった。
名前はそんな港にポツンと立つコナンの後ろ姿を見つけて、バイクのスピードを緩めてコナンに近付いていく。
「…新一?」
名前が戸惑いがちに声をかけると、コナンは肩をピクリと震わせてから振り返る。
「名前か…」
「新一?なにを持って…」
名前はコナンが抱えている白い鳩やエッグを見て、思わず言葉が途切れる。
ドクン…
ドクン…
名前の頭の中でけたたましく警報音が響く。自分の鼓動がコナンに聞こえてしまうのではないのかと思うほど、ドクドクと大きく波打っているのを感じる。
「名前…俺も実際に見たわけじゃねーが…」
「…な、何の事?」
ドクン…
名前は、嫌な予感を押し殺して必死に平静を装う。そんな名前の心情を知ってか知らずか、コナンがゆっくりと口を開いていく。
「キッドが…狙撃された」
「……え?」
「ここに来る途中、歩道橋の上で銃を構えた人影を見た。それと同時にバランスを崩したキッドを追って来たら、これが落ちてた」
「…歩道橋、」
コナンの話には、名前にも思い当たる節があった。名前は不審に思いながらも素通りしてしまった歩道橋を思い返してギュッと拳を握りながら、ゆっくりと目線を下におろす。
コナンの手には、エッグと怪我をした鳩…そして、先ほど声をかけた時には気付かなかったが、そこにはキッドのトレードマークとも言える単眼鏡。
「それ…割れてるの?」
「ああ…撃たれたんじゃねェかと思う」
「そう、右目を…」
名前はそれだけ小さく呟くと、コナンの後ろに広がる暗く広い海に視線を移す。
「新一…警察は呼んだの?」
「は?」
「早く呼ばなきゃ、キッド見つからないわよ」
「…お前いいのかよ?」
「何が…?」
名前は、貼り付けたような微笑みをコナンに向ける。
「お前…」
「事情聴取は…新一に任せるわね、私…先に戻ってるから」
不自然な笑顔のまま名前はそれだけ言うと、くるりと踵を返して足早にその場を離れていく。
「おい……!」
呼び止めても振り返らない名前の姿を、コナンはジッと見つめる。
「バカヤロー……」
誰に向けられたものか分からない、コナンの小さな呟きは、風に乗って海に消えて行った。