｢キッド！！｣

コナンが雑居ビルにいた中森達が眠らされた部屋に駆け込むと、エッグを抱えたキッドが窓際に立っていて、まさに飛び立つところだった。
急いで駆け寄ろうとするコナンに、キッドは煙幕を浴びせると、その隙にバッとハンググライダーの羽を広げて窓から飛び立って行った。


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｢ハァ……キッド！｣

息を切らしながら名前がビルに駆け付けた時には、既にキッドは窓から飛び立っていた。
上空から名前の声に気付いたのか、ハンググライダーで飛んでいるキッドは、チラリと眼下の名前に目を向ける。

(……名前、)

名前の姿を見たキッドは、一瞬口元に小さな笑みを浮かべるが、すぐに視線を前方に向けてスーッと飛んで行ってしまう。

｢……キッド、｣

名前がそんなキッドの姿を目で追うと、通りの向こうでバイクに2人乗りした平次達が、飛び立っていったキッドを追って走り去っていくのが見えた。

(…新一達、まだ諦めてないのね。…ハァ…さすがにこれ以上は走ってたら追いつかないわ)


名前は息を整えながら、乱雑に髪をかきあげると、くるりとまわりに目を向ける。

｢……あ、｣

そして、そんな名前の目に入ったのは、雑居ビルの入口に止められていた無人のバイク。こんな日に、ここに止められているということは、おそらく中森や警察関係者のものだろう。そして、怪盗キッドが逃げ出しても中から誰も追ってこないということは、警部達は眠らされでもしたのかもしれない。

｢…悪いけど、少し借りるわよ｣

そこまで考えた後に、名前はバイクに跨がり小さく謝罪の意を唱えると、平次達が消えて行った方向に向かい走り出す。

(ハンググライダーが飛ぶには、軽い向かい風が理想的…風上に向かえばきっと…)

名前は、未だに停電のため渋滞している車道をバイクで駆け抜けていく。

｢……どうして、こんなに必死になるのかしら｣


--想い人･大事な人に災難あり注意--



(嫌な予感がする…)

名前は、溢れ出す胸騒ぎからかバイクのスピードをグンッと上げる。

(快斗ー、)

遥か遠く…上空に見える白い影を見つめながら、名前は真っすぐ進んで行った。