又兵衛様一筋!
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吐く息が白い。冬なのだからしようのないことなのだが、これほど動き回っていても一向に体が暖まる気配がないのは如何なるものか。
又兵衛様が最後に処刑を行って久しく、彼の苛立ちが、あなや黄泉まで届かんとした本日。ようやくお目当ての獲物が見つかったようだった。ただ、この獲物というのがそこそこ名の知れた大名であるらしく、ちょうど他の大名と戦の最中であった。
しかし、そんなことは又兵衛様に関係があるわけでもなく、乱入不意打ちなんのその。
流石に、道中の雑魚兵が多すぎて陣の奥に籠っている獲物に不意打ちをすることはかなわないが、乱入ならばお手の物である。
つまるところ、又兵衛様率いる私を含めた流浪衆は、どこぞの国の争いかも分からぬ戦に絶賛乱入中なのだ。
「はーー……寒いっ!こんなに動いてるのに全っ然あったまらない!」
私は思わずこう叫んだ。もちろん向かってくる雑魚兵を双刀で斬り伏せながら。暖かい返り血も浴びているはずなのだが、この寒さだとすぐに冷えきってしまう。逆に、血を浴びるから寒いのかもしれない。今更避けても、もう遅いのだろうが。
あまりの寒さに手がかじかむ。いくら篭手をしているからといって寒さが凌げることはなく、私の体温は一向に上がる気配を見せない。
それに、人が多すぎて又兵衛様がどこにいるのか分からない。普段はあまり、戦に乱入することは多くはない(ないことはないが)。
つまり、二軍の混雑に私たちが混ざるのではなく、ひとつの軍目掛けて特攻するため、雑魚兵が今回のような場合よりも少ないといえよう。そのため、彼に声援を送りながら兵を斬り捨てることは比較的楽なのだ。
ああ、やっと又兵衛様を見つけた。
流石に人が多く、いつものようにきゃいきゃいと騒ぐことはできないが、視線はちらりちらりと又兵衛様を追う。
はあ、又兵衛様のあの身軽でしなやかな動き……とても美しい、戦場の孤高。白いかんばせに鮮やかな赤がまた良く栄える。
少し大柄な陣隊長らしき男が太刀を振り上げたのを横目に見た私は、双刀を顔の前に構え、衝撃をそのまま横へ受け流そうとした。
だが、寒さで少し思考が鈍り注意力も散漫になっていた私は、衝撃を逃す瞬間を見誤った。常ならば、体勢をすぐに整え蹴りでも喰らわせただろう。しかし運の悪いことに、寒さで手の感覚がほぼなくなっていたため、右手の太刀を取り落としてしまった。さらに、均衡を失いよろけて体勢を整えることもできない。
戦においては、ほんの一瞬が命取りとなる。
「しまっ……!」
目を見開き、せめてと左の刀を正面に構える。相手の太刀が目前に迫ったその時。
「ぼさっとしてんじゃねぇよ阿呆奈子ぉ!!」
見慣れた武器を瞳が捕らえ、聞き慣れた声が鼓膜を震わす。奇刃は相手の体を舐め、辺りが赤く染まる。咄嗟に私は足元の太刀を足で拾い上げ、とどめを刺した。
周りの雑魚兵を斬り倒しながら、かの人を目で追う。奇妙な形をした、彼独特の刀は既に手中にあり、爬虫類を思わせるあの瞳も今や私なぞ入れていない。
あとで怒られるかもしれない、呆れられるかもしれない。しかし、それでも構わない。私はあの人にまた命を救われた。この事実があれば良い。
ぎゅっと刀を力強く握り直す。先ほどまでの低体温が嘘のように体が熱い。体の隅々まで血がゆき巡り、高揚しているのが分かる。
ああ、おそらく今の私は戦場に似つかわしくないような腑抜けた表情をしているのだろう!だが、先のような失態はもう犯さない。
「又兵衛様かっこよすぎです!!!」
「うるっっせぇんだよぉ!!!」
又兵衛様が最後に処刑を行って久しく、彼の苛立ちが、あなや黄泉まで届かんとした本日。ようやくお目当ての獲物が見つかったようだった。ただ、この獲物というのがそこそこ名の知れた大名であるらしく、ちょうど他の大名と戦の最中であった。
しかし、そんなことは又兵衛様に関係があるわけでもなく、乱入不意打ちなんのその。
流石に、道中の雑魚兵が多すぎて陣の奥に籠っている獲物に不意打ちをすることはかなわないが、乱入ならばお手の物である。
つまるところ、又兵衛様率いる私を含めた流浪衆は、どこぞの国の争いかも分からぬ戦に絶賛乱入中なのだ。
「はーー……寒いっ!こんなに動いてるのに全っ然あったまらない!」
私は思わずこう叫んだ。もちろん向かってくる雑魚兵を双刀で斬り伏せながら。暖かい返り血も浴びているはずなのだが、この寒さだとすぐに冷えきってしまう。逆に、血を浴びるから寒いのかもしれない。今更避けても、もう遅いのだろうが。
あまりの寒さに手がかじかむ。いくら篭手をしているからといって寒さが凌げることはなく、私の体温は一向に上がる気配を見せない。
それに、人が多すぎて又兵衛様がどこにいるのか分からない。普段はあまり、戦に乱入することは多くはない(ないことはないが)。
つまり、二軍の混雑に私たちが混ざるのではなく、ひとつの軍目掛けて特攻するため、雑魚兵が今回のような場合よりも少ないといえよう。そのため、彼に声援を送りながら兵を斬り捨てることは比較的楽なのだ。
ああ、やっと又兵衛様を見つけた。
流石に人が多く、いつものようにきゃいきゃいと騒ぐことはできないが、視線はちらりちらりと又兵衛様を追う。
はあ、又兵衛様のあの身軽でしなやかな動き……とても美しい、戦場の孤高。白いかんばせに鮮やかな赤がまた良く栄える。
少し大柄な陣隊長らしき男が太刀を振り上げたのを横目に見た私は、双刀を顔の前に構え、衝撃をそのまま横へ受け流そうとした。
だが、寒さで少し思考が鈍り注意力も散漫になっていた私は、衝撃を逃す瞬間を見誤った。常ならば、体勢をすぐに整え蹴りでも喰らわせただろう。しかし運の悪いことに、寒さで手の感覚がほぼなくなっていたため、右手の太刀を取り落としてしまった。さらに、均衡を失いよろけて体勢を整えることもできない。
戦においては、ほんの一瞬が命取りとなる。
「しまっ……!」
目を見開き、せめてと左の刀を正面に構える。相手の太刀が目前に迫ったその時。
「ぼさっとしてんじゃねぇよ阿呆奈子ぉ!!」
見慣れた武器を瞳が捕らえ、聞き慣れた声が鼓膜を震わす。奇刃は相手の体を舐め、辺りが赤く染まる。咄嗟に私は足元の太刀を足で拾い上げ、とどめを刺した。
周りの雑魚兵を斬り倒しながら、かの人を目で追う。奇妙な形をした、彼独特の刀は既に手中にあり、爬虫類を思わせるあの瞳も今や私なぞ入れていない。
あとで怒られるかもしれない、呆れられるかもしれない。しかし、それでも構わない。私はあの人にまた命を救われた。この事実があれば良い。
ぎゅっと刀を力強く握り直す。先ほどまでの低体温が嘘のように体が熱い。体の隅々まで血がゆき巡り、高揚しているのが分かる。
ああ、おそらく今の私は戦場に似つかわしくないような腑抜けた表情をしているのだろう!だが、先のような失態はもう犯さない。
「又兵衛様かっこよすぎです!!!」
「うるっっせぇんだよぉ!!!」
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