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はじめましてこんにちは
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今日はすごくいい日だと思う。なぜなら、ずっと買いたかった服だったり、アニメのグッズが手に入ったから。それもちょうどタイムセール中のときだった、とか友だちから譲ってもらった、とか自分の支出が少なく済んだから。本当にすごくいい日だと思う。だったんだと思う。
だから、ふわふわ気分で帰路についた私が、道中薄暗い見たこともないお店の中から、怪しいおばあさんに声をかけられて、これまた怪しい姿見を安いよとおすすめされて買ってしまったのも、しょうがなかったことだと思いたい。
ずっと欲しかった洋服やグッズ、姿見が手に入った、ほかにも小さなハッピーがいっぱいあった。なのに、いや、だから?こんなことになると知ってたら、洋服だっていらなかったしアニメグッズもいらなかったし、なにより、本当になにより姿見なんて買わなかった。
数々のハッピーを触媒に、姿見の購入がとどめとなったとしか思えない。
ここで問題です。今私はどこにいるでしょう。
残念時間切れです。正解、私にも分かりません。ここはどこなのだろう。いや、分かる。ある意味では分かっている。
私は今、畳の上に正座をして、知っているが知らない人と対峙している。なにを言っているか分からないと思うが、私にも分からない。というか、信じたくない。
ここでおさらいしてみよう。私は平成の世に産まれ、平成の世を過ごしている。しかし、今私がいるここは平成ではない。目の前にいる、冷淡な紳士然とした男に確認したわけではないが、確実に平成ではない。なぜならこの男が私の目の前に座っているから。QED。
私は自分の部屋で絵を描いていたはず。ああ、ゲームしたいなあ、ストーリー進めたいなあ、レベル上げたいなあなんて思いながら、手を動かしていた。すると、急に部屋が明るくなったのが背後越しにわかった。最後に時計を見た時には、短針がすっかり丑三つ時をまわっていたはず。それに、私は机の電気しか付けていないから、突然部屋が明るくなることなんてありえない。私は心臓が一瞬にして氷漬けにされた心地になりながら後ろをそっと振り向いた。光のもとは今日、怪しいおばあさんから買った姿見だった。しばらくの間目を軽く手で覆い、光を遮りながら、ボーッと見ていると光がだんだんと収まってきた。
しかし、驚くべきことはこれからだった。本来、姿見に映るべき私がいなかったのだ。私がいなかったというよりも、自室そのものが映っていなかった。まるでテレビ画面のように、まったく別の場所が姿見に映されていたのだ。
ここから今に至る記憶は正直、曖昧だ。多分、私はボーッとしたまま夢現な状態でその姿見に触れたのだろう。気づけば和服の良く似合う男の目の前に座していた。
男の髪は長く、緩く結えられている。艶やかとは言えないが、手入れが行き届いていると分かる黒髪には白髪が混じり、いくつかの束となっている。精悍な目付きの真ん中を陣取る瞳は、猛禽類のそれを彷彿とさせるまばゆい金色だ。目の前の私を無遠慮に舐め回すその玉は、いくら知ったものとは言っても、やはり直接見るのとテレビ越しに見るのとではまったく感じ方が異なる。
ここまで男の特徴を挙げれば、お気づきだろうか……そう、長々と引っ張ったが、私の、目の前にいる男とは、「ああ……自己紹介が遅れたね」
バッと顔を上げる。私がここに来て初めて(もしかしたら私がボーッとしているときに発したかもしれないが)男の声を聞いたのだから驚いた。無意識に私は顔を少し下げていたようだ。男の見た目は、私の知る最高で最悪な人物そのものだし、声もその通りだ。おそらく今の私はとてもひどい表情をしているだろう。しかし名前、名前が違えばまだ救いはある……と、
「私は松永弾正久秀……こちらの名を教えたのだ、君の名も教えてもらえないかね?」
男……松永久秀が名乗る。カチリと音がしたと紛うほど、しっかりと目が合った。ああ、私は生きて帰れないかもしれない。
だから、ふわふわ気分で帰路についた私が、道中薄暗い見たこともないお店の中から、怪しいおばあさんに声をかけられて、これまた怪しい姿見を安いよとおすすめされて買ってしまったのも、しょうがなかったことだと思いたい。
ずっと欲しかった洋服やグッズ、姿見が手に入った、ほかにも小さなハッピーがいっぱいあった。なのに、いや、だから?こんなことになると知ってたら、洋服だっていらなかったしアニメグッズもいらなかったし、なにより、本当になにより姿見なんて買わなかった。
数々のハッピーを触媒に、姿見の購入がとどめとなったとしか思えない。
ここで問題です。今私はどこにいるでしょう。
残念時間切れです。正解、私にも分かりません。ここはどこなのだろう。いや、分かる。ある意味では分かっている。
私は今、畳の上に正座をして、知っているが知らない人と対峙している。なにを言っているか分からないと思うが、私にも分からない。というか、信じたくない。
ここでおさらいしてみよう。私は平成の世に産まれ、平成の世を過ごしている。しかし、今私がいるここは平成ではない。目の前にいる、冷淡な紳士然とした男に確認したわけではないが、確実に平成ではない。なぜならこの男が私の目の前に座っているから。QED。
私は自分の部屋で絵を描いていたはず。ああ、ゲームしたいなあ、ストーリー進めたいなあ、レベル上げたいなあなんて思いながら、手を動かしていた。すると、急に部屋が明るくなったのが背後越しにわかった。最後に時計を見た時には、短針がすっかり丑三つ時をまわっていたはず。それに、私は机の電気しか付けていないから、突然部屋が明るくなることなんてありえない。私は心臓が一瞬にして氷漬けにされた心地になりながら後ろをそっと振り向いた。光のもとは今日、怪しいおばあさんから買った姿見だった。しばらくの間目を軽く手で覆い、光を遮りながら、ボーッと見ていると光がだんだんと収まってきた。
しかし、驚くべきことはこれからだった。本来、姿見に映るべき私がいなかったのだ。私がいなかったというよりも、自室そのものが映っていなかった。まるでテレビ画面のように、まったく別の場所が姿見に映されていたのだ。
ここから今に至る記憶は正直、曖昧だ。多分、私はボーッとしたまま夢現な状態でその姿見に触れたのだろう。気づけば和服の良く似合う男の目の前に座していた。
男の髪は長く、緩く結えられている。艶やかとは言えないが、手入れが行き届いていると分かる黒髪には白髪が混じり、いくつかの束となっている。精悍な目付きの真ん中を陣取る瞳は、猛禽類のそれを彷彿とさせるまばゆい金色だ。目の前の私を無遠慮に舐め回すその玉は、いくら知ったものとは言っても、やはり直接見るのとテレビ越しに見るのとではまったく感じ方が異なる。
ここまで男の特徴を挙げれば、お気づきだろうか……そう、長々と引っ張ったが、私の、目の前にいる男とは、「ああ……自己紹介が遅れたね」
バッと顔を上げる。私がここに来て初めて(もしかしたら私がボーッとしているときに発したかもしれないが)男の声を聞いたのだから驚いた。無意識に私は顔を少し下げていたようだ。男の見た目は、私の知る最高で最悪な人物そのものだし、声もその通りだ。おそらく今の私はとてもひどい表情をしているだろう。しかし名前、名前が違えばまだ救いはある……と、
「私は松永弾正久秀……こちらの名を教えたのだ、君の名も教えてもらえないかね?」
男……松永久秀が名乗る。カチリと音がしたと紛うほど、しっかりと目が合った。ああ、私は生きて帰れないかもしれない。
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