まだ恋ではない夜
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パイが顔を上げると、月を背にした人影が空に浮かんでいた。半袖のシャツにジーンズ姿のトランクスだ。片手にはコンビニの袋を持っている。
「……トランクス君」
「オレも混ぜてよ」
そう言って、ベランダへ下りてきたトランクス。当然のようにパイの隣へ来て柵にもたれかかると、袋の中から缶ビールを二本取り出し、一本をこちらへ差し出した。
「もう飲んでる」
「知ってる。そろそろもう一本必要でしょ」
「余計なお世話」
そう言いながらも、パイは受け取った。
プルタブを開ける乾いた音が、夜の静けさに小さく響いた。しばらく二人で黙って飲んだ。
明らかに「やけ酒」といった様相のパイだが、トランクスは何も聞かなかった。それがありがたくて、同時にちょっと腹が立った。自分だけがこんなに苦しくて、泣きそうで、惨めなのに、隣にいる男はいつも通りの顔をしている。
「はあ……男はいいわよね。強いってバレたって、魅力にしかならないじゃない」
缶ビールをぐいっとあおり、パイはぐだぐだと絡んだ。トランクスが横目でこちらを見る。
「その点、女が強いって……しかも尋常じゃないレベルでなんて……引かれるに決まってる」
「誰が?」
「普通の男はよ」
「ふうん」
気のない返事が癇に障る。やるせない気持ちがこみあげてきて、こんなことトランクス君に言ったって仕方がないのに気がつけば頭の中でぐるぐる巡っていた思いを話し始めていた。
「いつも大事なことを教えてもらえない気がする……だなんて!」
抑えていたものが一気にあふれた。
「大事だから教えたくない、知られたくないだけなのに」
そこまで一気にまくし立てると、急に寂しさと悲しさが遅れてせり上がってきて声が詰まる。パイは缶を握ったまま、うつむいた。
夜風が吹く。火照った頬には気持ちいいはずなのに、今は少し寒かった。髪が頬にかかる。
トランクスは何も言わず、その向こうで缶を傾けていた。それから、ひどく軽い調子で言った。
「……じゃあさ。俺と付き合わない?」
「……トランクス君」
「オレも混ぜてよ」
そう言って、ベランダへ下りてきたトランクス。当然のようにパイの隣へ来て柵にもたれかかると、袋の中から缶ビールを二本取り出し、一本をこちらへ差し出した。
「もう飲んでる」
「知ってる。そろそろもう一本必要でしょ」
「余計なお世話」
そう言いながらも、パイは受け取った。
プルタブを開ける乾いた音が、夜の静けさに小さく響いた。しばらく二人で黙って飲んだ。
明らかに「やけ酒」といった様相のパイだが、トランクスは何も聞かなかった。それがありがたくて、同時にちょっと腹が立った。自分だけがこんなに苦しくて、泣きそうで、惨めなのに、隣にいる男はいつも通りの顔をしている。
「はあ……男はいいわよね。強いってバレたって、魅力にしかならないじゃない」
缶ビールをぐいっとあおり、パイはぐだぐだと絡んだ。トランクスが横目でこちらを見る。
「その点、女が強いって……しかも尋常じゃないレベルでなんて……引かれるに決まってる」
「誰が?」
「普通の男はよ」
「ふうん」
気のない返事が癇に障る。やるせない気持ちがこみあげてきて、こんなことトランクス君に言ったって仕方がないのに気がつけば頭の中でぐるぐる巡っていた思いを話し始めていた。
「いつも大事なことを教えてもらえない気がする……だなんて!」
抑えていたものが一気にあふれた。
「大事だから教えたくない、知られたくないだけなのに」
そこまで一気にまくし立てると、急に寂しさと悲しさが遅れてせり上がってきて声が詰まる。パイは缶を握ったまま、うつむいた。
夜風が吹く。火照った頬には気持ちいいはずなのに、今は少し寒かった。髪が頬にかかる。
トランクスは何も言わず、その向こうで缶を傾けていた。それから、ひどく軽い調子で言った。
「……じゃあさ。俺と付き合わない?」